読者のみなさまへ
東日本大地震で被災されたみなさま、たいせつな方を亡くされた方々に、心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。
この本にも描かれた美しく、喜びにあふれていた多くの街が、3月11日に起こった大地震と大津波によって、筆舌に尽くせない壊滅的な打撃を受けました。
圧倒的な自然の猛威、二次的な災厄の巨大さ。無力感すら覚えます。しかしそれでも何かわたしたちにできることはないか? と考え、ささやかではありますが、 作者のコマヤスカンさんの著者印税および本書の収益の一部(売り上げの5%)を、日本赤十字社を通じて東日本大震災の義援金に寄付することにしました。
言うまでもなく日本はこれまでも、大きな自然災害、危機に直面し、そのたびに立ち上がってきました。そしていま、多くの国々から助けの手もさしのべられています。わたしたちは、けっしてひとりではありません。心をひとつにして、わたしたちが力を合わせれば、いつか、この本で描かれたはるかちゃんとお父さんのように、美しい日本の国土を旅できる日は、また来ます。
それを信じて、本書を刊行いたします。
平成23年3月16日 講談社幼児図書出版部
朝、6時15分。まだ明けきらない新青森駅のホームから新幹線『はやぶさ』にのって、はるかちゃんとお父さんの旅は始まります。これから3つの新幹線を乗りついで、鹿児島のおじいちゃんの家まで行くのです! さて、どんな風景が二人をまっているでしょう……。1日のなかで、季節が冬から春へと移ろっていく、こんな美しい国土にわたしたちは住んでいたのだと改めて気付きます。びっしり描き込まれた、建物や山。またこっそりひそんでいる変なものを探すのも楽しい本です。
↑クリックすると拡大します ▲新青森─いわて沼宮内間
↑クリックすると拡大します ▲盛岡─古川間
↑クリックすると拡大します ▲仙台─郡山間
↑クリックすると拡大します ▲新白川─大宮間
・作/コマヤスカンさんからのメッセージ
この絵本では、小学生の女の子が、春休みに新幹線に乗って青森から鹿児島まで旅するお話をパノラママップでたどっていきます。
昨年12月8日に東北新幹線が青森まで、そして今年3月12日に九州新幹線が鹿児島まで開通するのに合わせて、ずいぶん前から準備して一生懸命描きました。
しかし、九州新幹線の開通の前日に、東日本大震災が発生し、絵本を楽しんでいただける状況ではなくなってしまいました。
そこで、心ばかりですが、講談社様のご厚意をえて本の売り上げの一部を震災復興の義援金にお役立ていただくこととなりました。
いつの日か、被災された地域の皆さまがこの本を手にとって楽しんでいただける日が来ることを心より願っております。
コマヤスカン
絵本作家。三重県在住。愛知大学文学部卒業。大学では美術部に所属。このころであったガブリエル・バンサンの絵本『アン・ジュール』(ブックローン出版)に衝撃を受ける。公務員として働くかたわら、「子どもの本の専門店 メリーゴーランド」絵本塾で絵本作りを学ぶ。2008年、『あっぱれ! てるてる王子』(応募時タイトルは、「てるてる王子南へ」)で、第30回講談社絵本新人賞を受賞。妻と2人の娘と暮らしている。
本書の企画のスタートは、1年半ほどまえに遡ります。コマヤスカンさんが「こんな本をつくりました」と送ってくださったのは、熊野古道を鳥瞰図で描いた観光用の冊子でした。とてもおもしろかったので部長の(N)さんに見せびらかしながら雑談をしていて、ふと思いつきを言ったのです。「これ、新幹線でやったら絵本になるんじゃないですか。」すぐに(N)さんも乗ってくれて企画がスタート。そしてコマヤスカンさんと企画を練り上げて、下絵を作ってもらってから取材に出かけました。それがちょうど1年前です。朝、飛行機で青森にいって新幹線にのり、東京までもどってきて東京駅を取材。翌朝始発の新幹線で鹿児島にむかう強行軍。左右の席に分かれて、東京から鹿児島までひたすら写真とビデオを撮り続ける40男二人組。あきらかに不審者でした。そしてそれからは、コマヤスカンさんの孤独な作業が続きました。 仕事を終えて帰られてから、こつこつとこの緻密で美しい絵を書き上げてくださったのです。
冒頭にも書いておりますように、震災によって、現在、このような旅は不可能になってしまいました。
日本はこんな風に春になっていく、この土地にはこんなものがある、へんなものもある(?)ぜひ、ゆっくりじっくりと味わってみていただける日が、早くくることを切に祈っています。(ほろほろ鳥)
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