第33回講談社絵本新人賞受賞 
定岡フミヤの制作日記
最終回「本に名前は載らないけれど」

こんにちは。
密かに絵本ナビの制作日記にライバル心を燃やして書いてきたこのコーナーも、今回で最終回です。

校正についてもう少し詳しく書いておこうと思います。(というか、今回ネタが無くなっただけなのですが)
初校が出る前、担当さんに「原画の色味はできるだけ出したい、という感じでしょうか? 
作家さんの中には、できるかぎり原画に忠実に……という方もいらっしゃいますが」と訊かれ、「いえいえ、色とかそんなによくわからないし、全然こだわらないですよ~」と答えていたのですが、いざ初校が出てみると、モーレツにうるさい注文を付けてしまいました。


これまでコンビニのコピー機くらいしか使ったことがなかったのですが、印刷屋さん恐るべしです。
わずかな塗りムラ・塗りミスが全部スキャナーに拾われ、しっかりと初校に出てました……。
「輪郭線をもっと鉛筆っぽい感じでお願いします」「壁のムラを消して下さい(注*私の塗り方が下手なだけ)」「このオレンジをもう少し明るい色に(注*私が印刷に出にくい蛍光色を使ってしまった為)などなど、印刷所さんへ細々と面倒くさいことをお願いしてしまいました。
その前に、自分の原画のレベルを上げねばいけませんね。
全ての校正チェックを終えたのは、実に4月の27日のこと。発売まで1か月切ってます……今年の新人賞の方はもう少し余裕をもって仕上げて下さい……。


こんなふうに校正を終えたわけですが、先日読んだ『絵本作家という仕事』という本の中で、きたやまようこ先生が次のようにおっしゃっていました。
『原画=作品と勘違いされている方がいるかもしれないけど、描いた絵そのものが作品じゃなくて、絵を印刷して綴じて本になったものが作品なの。
原画はもっといいのにって言うんじゃなくて、描いたもの、塗ったものが刷られたとき、原画より作家のイメージに近いものになるのが理想。
それが出版美術』
まさに今の自分に向けられた言葉のようで、思わず「ガッテン、ガッテン!」と言いながら机の上を叩いてしまいました。

私はまさに原画=作品と勘違いし、本になった時をうまくイメージできていなかったのです。
例えば、表紙をめくってすぐのところ。
シールの絵が入った見返しに、さらにシールの絵が入ったカバーの前袖がかかっています。
予想以上ににぎやかになってしまい、スッと本編に入って欲しいところを、ここで手を止めてしまう人もいるかも…とちょっと心配です。
確かに、原画イコール本ではありませんものね……。
しかし今回本になったことで、自分の原画がどんなふうに印刷に出るのかを知ることができましたし、絵本創りをより立体的に捉えることができるようになりました。

たくさんのプロフェッショナルの人達の手を経て、この作品は世に出ます。
スガシカオのあの曲が聴こえてきそうですね。
本の奥付には、印刷所さんや製本所さん、デザイナーさんなど、この本の制作に携わってくれた方々の名前が記載されています。
が、そこに担当さんの名前はありません。
ずっと前に、「なぜ講談社の人は、巻末に担当編集者の名前を記載しないんですか? 他社は結構出してますよね?」と訊いたことがあります。
「う~ん、“編集者はあくまで影の存在で”というのが創立者の意向のようですよ」とのお答えでした。
ストーリーのダメ出しに始まり、年賀状のダメ出し、文章のダメ出し、表紙のダメ出し、見返しのダメ出し……ああ、ダメ出しの思い出がいっぱいですが、編集作業はもちろんのこと、私の代わりに何度もデザイナーさんや書店員さんとの打ち合わせにも奔走してくれました。
本に名前は載らないけれど、本当に本当にお世話になったのです。

当初、発売日は28日だったのですが、担当さんや印刷所さんの頑張りのおかげで、ちょっと早まります。
そして、ここからは販売現場のプロフェッショナル、書店員さんの手へ。
前回に告知させていただきましたが、幸せなことに原画展をしていただけることになりました。
一生懸命描きましたので、お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄り下さい。
できれば私も期間中に駆けつけて、原画展を見に来てくれている人を書棚の影から見つめたいと思います。

以上で制作日記はおしまいです。
この制作日記を頼まれた時には、参考になるようなことなど書けないのにどうしようと困ったのですが、新人賞を獲ったら面白そうだなと思ってもらえるよう、なんだか楽しげに書いてみました。
いよいよ今年も受け付けが始まりましたね。
さて今夏、女神様から「新人賞に決まりました」コールを受け取るのは一体誰になるでしょう?
9月上旬には担当編集者も決定し、その方から直接連絡がきます。新人賞を獲ることにより、さまざまな方々との出会いが待っていますよ。
世界が広がり過ぎて、次の一歩をどの方向に踏み出せば良いのかわからないくらいです。

ではでは、今年の新人賞に輝いた人も、制作日記がんばって下さいね!
(次の人もやりますよね? あれ、まさか今回限りじゃないでしょうね?? 部長~~っ)

たしかににぎやかですが、楽しい見返しじゃないですか! (担当)

ついに出来上がった見本。
担当も感無量です。

定岡フミヤ(さだおか ふみや)

1979年生まれ。立命館大学卒業。絵本ワークショップ「あとさき塾」出身。
本作品で、第33回講談社絵本新人賞受賞。

講談社の創作絵本
『シールのかくれんぼ』 定岡フミヤ/作

おもちゃ箱の中から、使っていないシールを見つけたなおきくん。お母さんに止められていたのにも関わらず、思わず壁にシールを貼ってしまいます。楽しくなったなおきくんが、ついつい全てのシールを貼ってしまったまさにそのとき、「なおちゃーん」とお母さんがやってきます。我に返ったなおきくんは、大慌てで壁に貼りつき、必死でシールを隠そうとするのですが……!? 第33回講談社絵本新人賞受賞作品。

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クリスマスの絵本

  • ツリーさん

    ツリーさん

    新井洋行/作

    キラキラカバーのクリスマス絵本!「ツリーさん」のもとに、かわいいオーナメントたちがたくさん集まってきた! どんどんにぎやかになり、やがて……。赤ちゃんから楽しめるクリスマス絵本!

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  • どこ? クリスマスのさがしもの

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    イーノとダイジョブはふたごの兄妹。ふたりはなかよしの森の友だちにプレゼントを届けようと一生懸命になりますが……!?  クリスマスは、「大切な人の幸せを願う日」ということを、子どもたちに楽しくおもしろく伝える絵本です。

  • みまわりこびと

    みまわりこびと

    アストリッド・リンドグレーン/作
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    ふしみみさを/訳

    北欧ではおなじみのこびとはスウェーデンのサンタクロースともいわれる農家を守る妖精。そのこびとについてうたった古い詩をもとに、アストリッド・リンドグレーンが1960年代初頭に書いたお話に、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞作家であるキティ・クローザーが絵を添えてできた絵本です。

  • 愛蔵版 クリスマスって なあに

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    50周年を記念して出版された、世界じゅうの子どもたちのクリスマスを見守ってきたブルーナの絵本。イエス・キリストの誕生の物語を通して、クリスマスのほんとうの意味をやさしく伝えます。

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