第33回講談社絵本新人賞受賞 
定岡フミヤの制作日記
第4回「旅行じゃなくて仕事ですから」

こんにちは。
本編の原画は無事に入稿することができました。
(仕上がったのが発送期限3時間前というアクロバット)
送った原画は印刷屋さんに渡され、出来上がった荒データに担当さんが文字を入れて、PDFファイルにして送ってくれます。
なんだかそれらしくなってきました……。
3月の中旬以降は担当さんがボローニャへ旅行に行ってしまう為(仕事ですって!【担当】)、14日にデザイナーさんを含めて打ち合せをすることになりました。
第4回の日記は、その打ち合わせについて書こう、と思っていたら……
担当氏「あ、今月の制作日記、13日が〆切なんです」
私「ブッ! こ、今回はこれといって書くことがないのですが……」
担当氏「な、なんとか頑張るのです! 元部長の(N)さんをはじめ、編集部は……制作日記を楽しみにしてますよ!」
私「えええっ!! …このコーナー……社内報だったんですか!?」

というわけで、現在打ち合せに向けて準備していることを書きます。
それまでに用意するのは、「完成したテキスト」と「表紙の案」。
特に大変なのが表紙です。

定岡さんが心血注いで描いた原画の出力紙。
この出力紙に、デザイナーさんが写植を貼っていくのです。

話が少し逸れますが、私がこの数ヶ月で一番キツイと感じるのは、ラフの再考でも原画の修正でもなく、編集者とのやり取りです。
何かを創ったことのある方なら想像できるかもしれませんが……自分が心血を注ぎ完成させた作品にダメ出しされる時の気持ちは、なかなか言葉では表せません。
とはいえ私も新人ですので、初回の打ち合せには「編集者の意見は聞こう!」と臨んだのですが、実際に意見されると、その場で反論したい気持ちを抑えるのが精いっぱいでした。

そうですね……編集者とのやり取りは、カレー作りと似ているかもしれません。
投稿した時は、自分一人の考えで頭がカチカチに固まっているわけですね。
ですから、まずは人の意見を聞くべく、いったん外の風に当ててやるのです、……ジャガイモを水にさらすように。
そこへ容赦なくダメ出しを喰らい溢れる涙……刻んでいる玉ネギのせいかも。
弾け飛ぶプランと牛肉の脂。崩れ落ちる自信とニンジンの角。
「自分のアイデアの一体どこがダメなんだろう…?」……ふつふつ湧き上がる疑問と鍋。
一旦頭を冷やさなくちゃ、とガスの火を止めてしばらく待ってみる……。
すると、「あっ、編集者に指摘されたのって、こういうことだったんだ」
と心にスッと入ってくるわけです、……辛口のルーが溶けるように。(そろそろこの例えに飽きてきました?)
指摘されたその場では、なかなか「そうですね」とは言えないので、編集者の意見は一晩寝かせた方がいいかもしれません……カレーのように。

授賞式でお会いした先生方には「このままで出せるよ」と言っていただき、僕自身も「これで完璧」と自負した受賞作。しかし担当編集者とやりとりを重ねて一部修正した現在のものと、どちらが面白いかと訊かれれば、それは後者です。
作品がより面白くなる力を引き出す、それが編集者なんだなぁ……。
こうして、作家と編集者は幸せに絵本を作っていきました、めでたしめでたし。
……とはいかないのです!

本題に戻りますが、現在準備中の「表紙」は9月頃から意見がまとまらず、未だに決まっておりません……。
さて、一体表紙はどうなるのか。見返しは? 背表紙は?
果たして担当さんは安心してイタリアを観光できるのか? (だから、仕事ですってば! ここでダメ出しの恨みをはらさないでください! 【担当】)
その結果は、次回の制作日記最終回にて!

担当「あ、全5回の予定でしたけど、制作日記あと1ヶ月分追加できます? せっかくですし、5月まで宣伝しましょう! あと2回よろしく~。」
定岡「え?…えええ?……えーーーーーーっ!」

(続く)

定岡フミヤ(さだおか ふみや)

1979年生まれ。立命館大学卒業。絵本ワークショップ「あとさき塾」出身。
本作品で、第33回講談社絵本新人賞受賞。

講談社の創作絵本
『シールのかくれんぼ』 定岡フミヤ/作

おもちゃ箱の中から、使っていないシールを見つけたなおきくん。お母さんに止められていたのにも関わらず、思わず壁にシールを貼ってしまいます。楽しくなったなおきくんが、ついつい全てのシールを貼ってしまったまさにそのとき、「なおちゃーん」とお母さんがやってきます。我に返ったなおきくんは、大慌てで壁に貼りつき、必死でシールを隠そうとするのですが……!? 第33回講談社絵本新人賞受賞作品。

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