第37回講談社絵本新人賞受賞 
ひろた だいさく・ひろた みどりの制作日記
第5回「えのぐのはなし」

はじめまして。
絵を担当しているひろたみどりです。
作画が忙しくて、なかなかご挨拶もできなかったのですが、ようやく落ち着いてきたので制作日記を書かせてもらうことになりました。
いろいろな方にお世話になって、やっと絵本を作ることができているので、そういうこともご報告したいと思っています。

今は「色校」という印刷の色を決める作業をしています。
原画と印刷の色を見比べていくのですが、初めて見た時は、印刷物になったということだけで、もう満足してしまっていました。
けれど長い時間向き合っていると、微かな色味の違いが気になってきます。
基本的には原画より色味が強く出ているようなので、それをすこし弱めてもらうことにしました。
印刷では出しづらい色というのもあって、例えば、ピカゴロウの太鼓のひもが朱色なのですが、蛍光色に近い朱色は出にくいそうです。
朱色のひもには、カミナリ様の和のイメージがあるので、できるだけ近づけられるよう印刷所の方にがんばってもらっています。
他にも糸くずや汚れなど、たくさん取り除いてもらっています。
手間のかかる作業なので本当にありがたいです。

絵は、形を描くことも楽しいですが、色を塗ることも楽しいです。
私は透明水彩絵具を使っているのですが、「肌の透明感」や「髪のつや」などを表現するにはこの絵具がいいと思っています。
この絵具は“用紙の白地を透かして、きれいに発色する”という特徴があるので、紙の白さを残して塗ることになります。
不透明の絵具なら色を重ねて塗ることができるのですが、透明水彩は下の色を透かしてしまうので、濃い色の上に薄い色を重ねることができません。
塗り直しができないので、どのように白地を残すかイメージしていないと綺麗に仕上げることが難しいです。
塗る面積に比べて絵具が多い場合も、溜まりができてムラになりやすいので、筆に含ませる絵具の量にも気を使います。
扱いにくい所もありますが、丁寧に扱えばそれに応えてくれる、やりがいのある絵具だと思います。

透明水彩絵具は、淡く塗って上品に使うこともできますが、私の場合は濃度を強めにして色をはっきりさせて使っています。
単純に色味が好きというのもありますが、濃い絵具を含んだときの筆の運びが気持ちいいというのもあります。
そして使った色は必ずメモをとるようにしています。
色を混ぜる時も二色までと決めていて、そうしないと次に塗るときに再現するのが難しかったり、色が濁ってしまったりするからです。

筆は日本画の面相筆や彩色筆、隈取筆を使っています。
面相筆は穂の長いものを好んで使っているのですが、すぐダメになってしまうので、常に予備を用意しています。
水彩紙は安い特厚口のものを使っていますが、筆は多少良いものを使うようにしています。
そのほうが絵具の含みが良く、筆先が自然にまとまるので使い心地がいいです。

装丁は、ブックデザイナーの城所潤さんが担当して下さいました。
タイトルの入れ方が、かわいらしいです!
本文で使われている字体も、品があってとても気に入っています。
そんな中、タイトルの字体だけは私が書かせてもらったのですが、実は表紙をデザインして頂いたあとに、再度書き直しをさせてもらいました。
デザイナーさんには度々お手間をおかけしてしまったのですが、最後までつきあって下さいました。本当に感謝しています。

帯は水色で、表紙の黄色と合わせると初々しさを感じて「ピカゴロウ」の門出にピッタリです。
中の絵はいろいろ良くないところが見えてしまって、目を伏せたくなることもありますが、表紙はいつ見ても気持ちがいいです。

(この季節にぴったりの、とっても清々しいデザインですね! 担当より)

他にも、ソデや見返しなど、様々なところをデザインして下さいました。

表紙の絵は、ムラが出ないように緊張して塗ったので、描き終えた後はひどい筋肉痛になりました。
絵を描いていて筋肉が痛くなるなんて、初めての経験でした。
そんな初めてづくしの絵本制作でしたが、「ピカゴロウ」では自分にできることを精いっぱいやりました。
いよいよ絵本も完成間近です。
楽しみにしていてくださいね!

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