第38回(2016年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2016.8.23

  • 木坂涼 先生

    応募作品の出来栄えの高さに、嬉しい驚きをもって選にあたらせてもらいました。新人賞『ピアノ』は、静かな導入ながら、何が始まるのだろうという期待感が膨らみます。音楽と主人公の内面世界。ページも変化に富んで魅力的です。文にはちょっと気がかりがありましたが、見直し作業は誰にとっても必須。期待大です。佳作の『みずうり』は、水の世界へ入っていく仕掛けが楽しく、水面へあがっていく子どもの描写がいいですね。『さむっこ』は、目に見えない「さむさ」という相手をうまく描いています。課題は、表情豊かな「さむっこ」以外をどう描くかでしょうか。そのほか、愉快な発想や設定の作品があり、だからこその難しさも垣間見られました。
  • はたこうしろう 先生

    この選考会で、フレッシュな感性を持った新人たちの作品に触れることができて、楽しい時間をすごせました。選にもれた作品の中にも、ハッとさせられる切り口のものがありました。そのせいで選考は難航。しかし今回、新人賞に選ばれた作品は、そんな中でも特に瑞々しいセンスを感じさせてくれました。淡い色調に、独特のデフォルメで表現された物語は、ノスタルジーと若い躍動感が混在して、爽やかな読後感を作り出していました。モノローグの視点がはっきりしない所など荒削りな部分もあります。でも、若者らしい元気良さを残しつつも、怖がらずに修正を加えていくことで、読者の心を引き込む作品にしあがるでしょう。期待しています。
  • 松成真理子 先生

    最終選考に残った、どの作品にも様々な形の絵本の種が内包されていて、楽しい驚きで読みました。新人賞の『ピアノ』は絵の構図、色彩、影の表現などが秀逸でした。ここに文章、編集の作業を加えて3つのバランスが整い出版される日を楽しみにしています。『みずうり』は繰り返し読むうちに、このお話の水紋の様に、愛らしさがひたひたと、しみてくる作品でした。冷たい空気の"さむっこ"達が冬の町から移動する様子が流れるように美しく表現された『さむっこ』には、春の気配など、細かな工夫が、あと何層か加わると、さらに魅力的な作品に仕上がると思いました。今年の応募によせて生まれてきた、それぞれの物語の種がすくすく育ちますように。
  • 村上康成 先生

    『ピアノ』は、パステルの重厚な塗り重ねが、おじいさんのピアノの歴史の重さとマッチした。構図も静と動を組みこみ、色使いもしっとりと雰囲気がある。ただ、文と展開の甘さが惜しい。佳作に入った『みずうり』は、丁寧なてらいのない筆致から伝わる愛らしさが、微笑ましい。『さむっこ』は、絵の表現力に独自の世界観があり、大いに楽しみ。選外となったが、『まるぼうずの街』はブラッキーな世界がユニークではあったが、そこまで。何度も何度も読み返したくなる作品を目指してほしい。『いろはにこんぺいとう』『おじぞうさんとかみのけ』など、絵のセンス、画力はあるものの、やはり、絵本としての構成、展開の弱さが惜しい作品だった。ただ、どの作品もこの辺は、編集力が加われば、大いに期待が持てる。
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