第39回(2017年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2017.8.31

  • 木坂涼 先生

    今年の応募作品には、テーマへのアプローチの仕方に、独自の視点を盛り込んだ力作が多かったように思います。文句なしに絵の上手な作品もあって、思わず「うっま~い!」と目を見張りました。新人賞に選ばれたのは『いっぺん やって みたかってん』。子どもたちのいない雨降りの公園で遊具たちが遊びだす。絵に迫力もあるし、お国ことばの文も合っている。ラストを書き変えたい思いは欲というものかな。佳作『ようこそハトまちへ』は、フンを落とすハトと、よける人間の攻防戦がたのしいですね。絵は半立体で、刺繍で描いたことも効果的でした。『ごろちゃんとでんしゃ』は、絵とお話に妙な魅力があってほのぼの。この「妙な魅力」が強みです。今後もキープしてほしいなと思います。
  • はたこうしろう 先生

    今年も新鮮な作品がそろい、選考は難しくも楽しい時間となりました。新人賞『いっぺん やって みたかってん』は、あっと驚く展開に一気に心を持って行かれました。それも、難しいシーンの絵を簡潔に描ききる力があったからです。今後を期待したいと思います。『ようこそハトまちへ』は、鳥の糞をテーマ にしながらも、布と刺繍を使ったことで、きれいで可愛らしく表現されていました。「動き」をもっと上手に表現できればさらに面白い作品になると思います。『ごろちゃんとでんしゃ』は、不思議なことが次々起こる楽しい作品です。はちゃめちゃになりがちな展開ですが、とぼけた熊のキャラクターが押さえを効かして笑いに変えてくれていました。
  • 松成真理子 先生

    『いっぺん やって みたかってん』は擬人化された3種の遊具たちの奔放な遊びっぷりが勢いに乗って新人賞へ。『ようこそハトまちへ』は3羽のハト達の悪だくみが刺繍絵の手法で軽やかに表現されて成功しています。『ごろちゃんとでんしゃ』は広々とした草原の隅っこに居るクマの親子の素朴でのんきなたたずまいのしあわせ感がいい。絵本は絵と文の両方が、ここちよく重なって展開していくことが大切です。今年は画力優先の作品が多いように思いました。『イーサンとあかいボール』の画力。ここにドキドキする転換が加わればと惜しい作品でした。今年も様々な創作絵本に出会い、まだまだ絵本の未来は果てしないのだと喜んでいます。
  • 村上康成 先生

    最終選考まで残る作品は、やはり絵の魅力を感じるものが多い。ただ、この中で、賞候補に残っていくものは、自分の信念と向かい合っているエネルギーが、湧いて出ている。そのためには、何度も何度も、紙も心もボロボロになるまで、推考することなのである。『いっぺん やって みたかってん』は、読者を素直にその気にさせ、発揚させる説得力のあるナンセンス。最後のキレが決まれば、ユーモアと緊張感のあるしゃれた作品になりそう。佳作の『ごろちゃんとでんしゃ』は、別次元のナンセンス力を持つ絵である。この力は、やはり作者の気持ちの本物さである。『ようこそハトまちへ』は、刺繍の柔らかさに、展開がラジカルという裏切りが、次をめくらせた。鳩の後ろ姿を思わず撫でてしまった。ただ、刺繍の手触りは印刷には危うい。
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