第40回(2018年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2018.8.30

  • 木坂涼 先生

    眠れない女の子が夜空を泳ぐ。新人賞『まよなかのせおよぎ』は、柔らかな浮遊感を湛えています。言葉以上に絵に語らせる。力のいることです。ラストを違う着地にするとどうなるか、期待感が生まれました。絵に託すという点では、『おはなにちょうちょがとまっているよ』もとても魅力的でした。シンプルなおとぼけと緊張感。前半のそれを後半にもぜひ生かして! 殿様と殿様の頭にのっている見事なちょんまげの物語、奇想天外な『ゆるしてちょんまげ』は、文の刈り込みで、さらに一冊の存在感がアップしそうです。今年の全体的な印象は「発想はいいのに……」というものでした。小さくまとまらず、独自の世界を広げていってほしいなと思います。
  • はたこうしろう 先生

    最後に残った3作品は本当に微妙な差だった。それだけに選考は難航したが、そのレベルの高さに嬉しく思った。新人賞の『まよなかのせおよぎ』は、洗練されたデフォルメと柔らかな色鉛筆と夜の街の美しいシーンに引き込まれた。安心できる着地点を作れば子どもたちがぐっすり眠れる絵本になる。『ゆるしてちょんまげ』は、ゲラゲラという子どもたちの笑い声が聞こえるよな、奇想天外なドラマで楽しませてくれた。洗練されない稚拙なパワーがある作品。『おはなにちょうちょがとまっているよ』は、リスの微妙な心理を白い空間を上手く使って表現していて、省略することで強調する俳句のような作品といえる。終盤に読者を惹きつけるドラマがほしかった。
  • 松成真理子 先生

    今年は絵本の形に起承転結が整った静かな作品が多い中、元気良くひと暴れしていた『ゆるしてちょんまげ』と大胆すぎる白場の構成に戸惑いつつも、余白の抜け感が絶妙な『おはなにちょうちょがとまっているよ』の2作が佳作となりました。新人賞『まよなかのせおよぎ』の浮遊感、空気感が気持ち良く、風景、人物の柔らかさは揺るぎない持ち味。夜空を泳ぐ素敵な一冊になるでしょう。選外となりましたが、『なないろの そらがとどける たからもの』の繊細な美しい絵、『もぐらのおじさん』の土の匂い。『あめふりおむかえ』の絵本的な感覚。物語の深いところまで潜るのは、しんどい作業ですが、それぞれの宝を見つけて喜び合いたいものです。
  • 村上康成 先生

    『まよなかのせおよぎ』=夢の中へ誘うという常套的な作品であるが、この方の描く柔らかな絵の安定感が、説得力に至っている。文の脈絡、ラストの行方など、ここからの作業がこの作品の絵本力となるだろう。『おはなにちょうちょがとまっているよ』=間の効いた力の抜けたタッチが生み出すさりげない緊張感が、ページをめくらせた。後半、着地点に向かった展開に、何かの期待感が消えてしまった。『ゆるしてちょんまげ』=他の2冊とは好対照の荒々しいタッチ。ストーリー展開する作品として、稀な応募作。激しい絵のわりに、物わかりのいいオチだった。詰めるべき点は多々あったが、筋の通った楽しさを感じた。最終選考に残った3冊は、絵本のそれぞれの個性でもあった。受賞作、佳作の分かれ目はさほどなく、ここからの目指す絵本への幾度もの反芻(はんすう)が、基礎体力となる。
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