子育て相談
モンテッソーリで考えよう!

回答:田中昌子



第13回 トイレトレーニングがうまくいきません。



Q:
2歳10ヶ月の女の子です。2歳前からトイレトレーニングを始めてもう1年近いのですが、なかなかうまくいきません。下に弟が生まれたばかりということもあり、紙おむつでしかしません。私も漏らされるのが嫌ですし、紙おむつが楽なので、ついそのままになっています。

でも、幼稚園に入るまでにはなんとかしたいと焦ります。ママ友は、できたらシールやお菓子などのご褒美をあげる、漏らしたらきつく叱ればいい、と言いますが、それをしても進んでいません。モンテッソーリ教育ではどのように教えるのでしょうか?

また「おむつなし育児」というものもあるそうですが、下の子のために、それについても教えて下さい。




A:
私の勉強会にいらっしゃる方からも、同じようなご質問を多くいただきます。私も孫がいる年齢となりましたが、ご質問者の親世代はまだ布おむつが多かったことでしょう。比較的早くはずす風潮だったこともあり、親からの「まだおむつ、はずれないの?」という言葉に傷ついた、というレポートをいただいたこともあります。

3歳や入園という節目が近くなって焦るお気持ちもよくわかりますが、焦ったり叱ったりしても、おむつが取れるわけではありません。最近は大きなサイズの紙おむつが発売されるようになり、遅くなる傾向にありますが、それでもいつかは取れるものですから、まず、お母様がゆったりと構えることから始めましょう。

おむつ をはずす練習を、一般的には「トイレトレーニング」と呼びますが、モンテッソーリ教育では正式な名称を「トイレットラーニング」としています。つまり大人がする訓練ではなく、子ども自身の学びと捉えているのです。子どもが主体というモンテッソーリ教育の考え方がよく表れている名称ですね。 

基本的な考え方としては、以下の3点があります。

①排泄は自然で生理的なもの。健康的なことであって、否定的なものではない。

大人は「汚い」や「臭い」など排泄について否定的に捉えてしまいます。でも、幼児にとって、うんちやおしっこは汚いものではなく、むしろ自分の体から出たもの、一体感があるもので、愛着があるのです。食べて排泄することは生きている証です。出たことを喜び、感謝の心を持って接してあげましょう。

②子ども自身が自分のからだを意識し、排尿の感覚を学ぶもの

排泄習慣は、自然に出来上がるものではありませんから、大人が習慣づけを手伝う必要があります。ただし、あくまでも主体は子どもです。からだの発達に合わせて上手に援助することで、子ども自身が自分のからだを意識できるようになり、自然に感覚を学ぶようになります。根気よく繰り返しすることが必要です。

③自らおむつではなくトイレでの排泄を選ぶもの。

最近は、紙おむつの性能が格段に良くなり、おしっこ3回分でも大丈夫と言われています。とはいえ、おしっこをしたおむつは、表面はサラサラでも湿気を含んでいて、パンツに比べるとずっと重いのです 。大人用の紙おむつを履いて実験すると、その不快感が体験できるそうです。

生まれたときからずっと紙おむつを履いている子どもに選択肢はありませんが、パンツを体験した子どもに選ばせると、快適さからも、動きやすさからも、パンツを選びます。おむつの中にではなく、トイレですることを自分で選び取るようになるものです。気持ちがいいことを体験させてあげましょう。


▶トイレットラーニングを始める準備が整う頃


それでは、いつ頃からトイレットラーニングをスタートするのが良いのでしょうか?

歩けるようになると、おむつ替えを嫌がりませんか? 自分でしっかり歩けるようになるということは、自分の意思で歩いて排泄する場所まで行くことが可能になったということです。また1歳を過ぎると、おしっこを1時間くらいは溜められるくらいに膀胱も成長してきます。さらに、言葉が出ていなくても、大人の言うことは理解できるようになっている時期でもあります。完全にはできなくても、パンツを下げたり、足を入れたりできるようになり、自立へと向かっています。

つまり1歳過ぎから1歳半までの間、だいたい1歳3ヶ月前後にはさまざまな意味からトイレットラーニングを始める準備が整っていると言ってよいでしょう。個人差もありますから、上記のような様子をよく観察して、準備が整っているかどうか、チェックしてみてください。

この頃になったら、できればおむつはやめて、トレーニングパンツなどの布パンツに移行するといいでしょう。移行したら紙おむつとは併用しないことがポイントです。紙だと濡れたことがわかりにくく、気持ちいいか悪いかがはっきり感じられないからです。1歳代で始めると、おむつ以外に排泄することを嫌がることは少なく、パンツが汚れたら替えることが当たり前になります。

2歳を過ぎてから始めようとすると、第2回でお伝えした秩序感、一般的には魔の2歳児と言われる時期と重なり、こだわりが強くなってきます。紙おむつにこだわって布パンツをはきたがらなかったり、漏らしているのに「していない!」と言い張って替えさせてくれなかったりして、余計に難しくなることがあります。


▶「排尿することは良いこと」「漏らすことは当たり前」だと考える


次に大人の対応ですが、モンテッソーリ教育では、賞罰で子どもを動かすことについて、トイレに限らず、良いことではないと考えています。

ポイントは失敗しても叱らない、できたときも大げさに喜ばないことです。一般的な考え方とは正反対ですね。

大人が「失敗してはいけない」「トイレに行かせなければ」と思うことがもっとも良くありません。「排尿することは良いこと」「漏らすことは当たり前」だと考えましょう。場所はどこであれ、おしっこが出たこと自体が素晴らしいのです。漏らしてしまったときは、「濡れて気持ちが悪いね」「替えたら気持ちいいね」と言ってあげましょう。 

できたときは、「おまる(トイレ)に座れたね」「おしっこがでたね」という言葉をかけてあげるといいでしょう。大人が大げさに喜んでしまうと、子どもは次にまた喜ばそうとして逆に緊張し、失敗することが多くなってしまいます。第9回の「ほめてはいけないのでしょうか?」もぜひ参考になさって下さい。


▶トイレットラーニング環境の整え方


次に環境の整え方についてお伝えします。

最初はぜひおまるを使って下さい。モンテッソーリ園では必ずおまるを使います。その理由は2つあります。ひとつは足が床につくことが重要であること、もうひとつは、子どもが自分のしたいときにひとりでできるようにするためです。
 
後始末が楽という大人にとっての利便性を優先する補助便座では、ひとりで上るのが大変だったり、間に合わなかったりして、うまくいかない原因になることが多いのです。

また、大人のトイレでは踏ん張り切れないことが多く、おしっこはともかく、うんちがしにくいのです。特に男の子の場合は、おしっこができるようになっても、うんちだけがなかなかできないことがよくあります。補助便座を使う場合には、踏み台なども併用するといいでしょう。

補助便座でも踏ん張れる専用の踏み台

おまるはトイレの中ではなく、生活している場所に置きましょう。「したくなったら、ここでしていいよ。」と気軽な場所として準備できるからよいのです。

トイレは、幼い子どもにとっては、大きく重いドアで隔たっていますし、大人のようにすっと歩いていける場所ではないということを理解してあげて下さい。できるようになれば、トイレで補助便座を使う方法に移行しても構いません。

おまるのほかにも準備しておいた方がいいものが3つあります。

トイレットラーニングに必要な環境

①汚れたパンツを入れる容器
バケツでもポットタイプでも構いませんが、蓋つきで子どもが自分で開閉できるものであることが大切です。

②腰かけられる椅子やベンチ
座面が床から15cmから17cmくらいが、一番子どもが座りやすい高さです。写真は立派なベンチですが、ご家庭でしたら、牛乳パックなどで作っても構いません。中に新聞紙詰め込むとかなりの強度になります。それをいくつも作りテープで貼り合わせて上に座布団などを固定してあげれば、適当なサイズのものが簡単にできます。

③きれいなパンツが入っている籠
蓋付きや引き出しではなく、子どもにも見えるように自分で取れるようにしておくことが大切です。足りなくならないよう、多めに入れておきましょう。また前後を間違えないよう、子どもにわかるような印を付けておくといいですね。

写真にはありませんが、床の状況によっては、ビニールシートを敷いておいた方が安心できます。


▶子どもが自分で感覚を学ぶ余裕


環境を整えたら、子どもの様子を見ながら誘いましょう。よく観察していると、もじもじしたり、顔が赤くなってきたりして、排泄のタイミングがわかるようになります。出た記録を取っておくと、だんだん良いタイミングがわかってきます。

大人はどうしても漏らされるのが嫌で、過剰にトイレに誘ってしまう傾向があります。もちろん最初は声かけして連れて行きますが、いつも声かけしていると、子どもは不安になってしまいます。また、漏らした時にも「してない」と言い張るようになりますから、子どもが自分で感覚を学ぶ余裕を与えてあげて下さい。

誘っても「いかない」「ない」という子どもは無理強いしないでください。「今度行きたくなったら教えてね。」と言っておきましょう。その結果、間に合わなくなって漏らしたときも、大人は往々にして「ほら、だから言ったでしょう」とか「今度は早めにいくのよ」などと言ってしまいがちです。でも、それを本人が自覚することが学びですので、余計なことは言わずに「出たね」「替えようね」と淡々と対応することが重要です。

昼のトイレと夜のおねしょはまったく別のものです。昼は意識の問題ですが、夜は体の問題です。もちろん昼間に溜める習慣がついていれば、夜も比較的スムーズですが、おねしょが毎晩のように続くならば、おむつでも構いません。

体の成長とともに膀胱が大きくなり、溜める力ができます。そうしたら自然に濡らさなくなり、パンツで寝られるようになります。


▶「いつかきっとできる」と信じて見守ってあげること


「おむつなし育児」については、実践した卒業生のレポートを紹介します。

(卒業生のレポートより 抜粋)

長女は自宅出産で、生後0日目からチャンバーポットといわれる陶器製のおまるを使い始めました。おむつなし、というと全くおむつを準備しない、というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。必要な時は使い、おむつなしの時間を作る、排泄したそうな時や、タイミングを見計らって、おまるやトイレで出来るだけさせてあげる方法です。 
 
最初のキャッチ(排泄をおまるですること)は胎便で、黒いうんちをキャッチしたときは感動しました。新生児は、泣いたら授乳と排泄なので、とても分かりやすく、おまるの上におしりを載せると何回もキャッチできました。




生後10日 チャンバーポットで排泄する

チャンバーポット

4、5ヶ月頃までは、とてもやりやすく、おむつを数枚しか濡らさない日もありました。おまるでさせるため、上体を起こすことが多かったせいか、首のすわりや腰がしっかりするのも早かったと思います(トイレですることもできました)。


生後1ヶ月 初めてトイレで排泄する

寝返り、はいはい、つかまり立ちをするようになると、周りのことに気をとられるせいか、おむつにすることも増え、おまるに座らせても嫌がることもありました。そんな時は、トイレで補助便座を使ったりもしました。

本人がしたそうな時やタイミングをみてトイレに連れていき、1歳半頃からはトレーニングパンツやパンツをはく時間を増やしていきました。本人もおむつよりパンツを選びました。

1歳8ヶ月には、自分でパンツとズボンを脱いで、補助便座を取ってのせ、座ってしていてびっくりしました。

遊びなどに夢中になっているとおもらしをすることもありましたが、「ちっち」と教えたり、自分でトイレに行くことが増えていきました。こんな感じで自然に移行していき、2歳になる頃には昼間も完全にパンツになっていました。



2歳2ヶ月 自分で脱いでおまるに座る

小さな頃からおまるやトイレで排泄していたので、おむつでしたがることはなく、外出先の子ども用トイレにも喜んで行きました。



大切なのは、無理強いせず、排尿の感覚を子どもは学んでいくものだということを理解し、ひとりでしやすい環境を整えてあげること、「いつかきっとできる」と信じて見守ってあげることです。大人の対応や環境が変われば、すんなり進むものですから、あきらめずに良き援助をしていきましょう。





田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年より、日本全国及び海外から参加可能なIT勉強会「てんしのおうち」主宰。モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所(AHL)所長。著書に、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫 モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)がある。 






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