子育て相談
モンテッソーリで考えよう!

回答:田中昌子



第2回 魔の2歳児の対処法は?


Q:
2歳3か月の女の子です。理由もなく不機嫌になったり、大泣きしたりします。また、「自分でする」と言いながら上手にできず、大人が手出しをすると嫌がり、どうにもなりません。これが「魔の2歳児」なのでしょうか? 対応方法を教えてください。


A:
いとおしい赤ちゃんの時代や、かわいらしいトコトコ歩きの時代を過ぎると、急に「イヤイヤの時代」が始まります。親御さんとしては戸惑ってしまうでしょう。世間一般では、「魔の2歳児」だから、反抗期だから、しかたがないとされています。


でも、こうした認識は、子どもにとって失礼なことです。次の2つのことを知っていれば、全く違う姿が見えてくることでしょう。



▶「秩序感」を理解する


1つめは「秩序感」を理解してあげることです。「秩序感」とは、生後数か月からみられ、2歳前後(個人差あり)をピークとして、4歳には、ほぼ消えてしまう感受性のことです。


この時期は「秩序の敏感期」ともいわれ、大人がどうでもいいと感じることに対し、子どもは強いこだわりを持ちます。「場所、順序、時間、所有」などが一定でないと、心が穏やかでなくなるのです。


これは、子どもの発達と深く関係しています。秩序の敏感期の子どもは、初めて出会う身の回りの環境を、ひとつひとつ確かめながら自分のものにしていきます。自分の脳の中に、「羅針盤」のようなものを作り上げようとしている時期なのです。


脳の中に「羅針盤」ができてしまえば、子どもたちはそれを基準として、物事を「違っている」「合っている」などと判断できるようになります。




▶「一定」が大切


しかし、生まれて数年もたたない幼児前期の子どもは、私たちの世界をまだよく知りません。砂漠のど真ん中に放り出されたようなもので、道しるべは何もなく、右往左往しています。


子どもは道しるべを作るために、砂漠に指で線を引きます。それはすぐに風に吹かれて消えてしまうかもしれませんが、繰り返し、何度も同じところに線を引けば、次第にくっきりと刻みつけられ、やがては決して消えることがない道しるべとなります。


道しるべを作るために大切なことは、「場所、順序、時間、所有」などが一定であることです。一定の揺るぎない道しるべができて、初めて脳の羅針盤は機能しはじめます。


つまり、あるものがいつも同じ場所にある、毎日決まった順序でものごとが進んでいく、同じ人が決まったものを使うことは、子どもが一生懸命、小さな指先で砂に線を引く、それも同じところに引くために、どうしても必要なことなのです。


でも多くの親御さんは、「こんなわがままを許していたら、将来、我慢ができない子になる」とか、「そんなこと、どうでもいいじゃないの」と考えてしまい、せっかくできかかっていた線の上を、平気で歩いてしまったり、手で書き消してしまったりします。すると、子どもは不機嫌になり、大泣きしたりするのです。


大人だって、一生懸命描いていた大切な絵を途中で汚されたり、少しずつ編んでいたセーターを引きちぎられたりしたら、荒れ狂いませんか? 子どもにとって、秩序が狂うことによる苦しみは、大人が想像する以上です。それが感情となって現れるので、「魔の2歳児」などと呼ばれるのです。




▶物の置き場所を決める


秩序感は、生きていくために必要不可欠なもの、なくてはならないものです。モンテッソーリは「魚にとっての水、家にとっての土」にたとえているほどです。


その後、幼児後期に顕著になる、比べる、分ける、段階づける、などの知性の働きというのは、基本となるこの羅針盤がしっかりできているからこそ、活発になりうるのです。ぜひ秩序感を理解してあげましょう。


具体的には、物の置き場所をきちんと決めて、乱れたらすぐに戻すことが大切です。部屋の模様替えも、この時期だけはなるべく避けましょう。


戻す目印がある棚 2歳7か月

規則正しい生活も重要です。どの家庭でも、朝起きてから出かけるまで、最初に何をやり、次に何をする、ということが決まっていると思います。大人の都合でなるべくそれを狂わせないことです。


もしも、ぎゃ~っとなったら、気付かないうちに、何かを狂わせていないか、ちょっと考えてみて下さい。戻せば嘘のようにおさまることもよくあります。たとえば、ママがパパのカップやお箸を使った、枕の向きが逆だった、というようなことが原因だったりします。


▶片付けが身につく時期


秩序感は、厄介なことばかりではありません。きちんとする、ぴったり合わせる、ということにこだわるわけですから、上手に利用すれば、片付けや丁寧さが身に付く時期でもあります。

2歳児 靴置き場に靴を置く

私が監修した『こどもせいかつ百科』(講談社刊)には、秩序感を利用して、ぴったり靴を揃えたり、布巾をきちんと畳んだりするなどの工夫がたくさん載っていますので、ぜひご覧ください。


『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』

こうした工夫をすれば、子どもの秩序感を満足させてくれますし、あとになってから、「丁寧にしなさい!」「片付けなさい!」と叫ばなくてすみますから、ひと手間でずっと子育てが楽になります。



▶「黄金の2歳児へ」


2つめは「自分でする」と訴える子どもたちへ、具体的な方法を示して援助してあげることです。モンテッソーリは、「ひとりでするのを手伝ってね」という言葉で子どもたちの心の声を表現しています。


2歳児はやりたいのにできないことが多くあります。たとえば牛乳をパックから注ごうとしても、重くて持てませんし、こぼしてしまうでしょう。でも、子どもの手に合う小さなピッチャーを準備し、そこから注ぐようにすれば、失敗することなく注げます。


小さいボタンが留めにくいなら、マジックテープやスナップに付け替えてあげれば、ひとりでできるかもしれません。また、大きめのボタンとボタンホールで練習させてあげれば、すぐにコツをつかんで留められるようになるでしょう。最初は、やり方をゆっくり見せてあげると理解しやすくなるでしょう。

2歳5か月 ボタンつなぎ

ボタン留めの練習(お魚)

2歳3か月 ボタンの練習

大切なのは大人が直接、手出し口出しをしたり、代わってやってあげたりせずに、子どもがひとりでできるためにどうすれば良いのかを考えることです。「やった!」「できた!」を積み重ねていけるように援助してあげましょう。


そんなこと、手間暇かかってしょうがない、大人がやった方が早い、と思われるでしょうか?


でも、この時期に大人が何でもかんでもやってあげると、自立への道が閉ざされてしまい、幼児後期の本来ならばひとりでできる年齢になっても、「できない」「やって」ばかりで、もっと大変になってしまいます。


秩序感を理解してあげること、ひとりでするのを手伝うことで、「魔の2歳児」ではなく、「輝く2歳児」「黄金の2歳児」の姿が見えてくるでしょう。かけがえのないこの時期を大切に過ごしましょう。






田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師要請通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年より、日本全国及び海外から参加可能なIT勉強会「てんしのおうち」主宰。モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所(AHL)所長。著書に、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫 モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)がある。 






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