子育て相談
モンテッソーリで考えよう!

日々の子育ての悩みや困りごとを、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」の田中昌子先生が、モンテッソーリの考え方で教えてくれる連載です。ちょっとした工夫で、大きな変化が子ども達に起こり、ママを驚かせてくれるかもしれません。子育てママ必見です!

回答者:田中昌子

第28回 ルールや我慢を覚えさせるには、どうしたらいいの?



Q:
2歳2ヶ月の男の子です。プレ幼稚園に通うようになりましたが、同じ年齢の子たちは、みんなママの隣に座って、先生の真似をして手足を動かし授業に参加しています。うちの子だけが、私のそばを離れて教室を走り回っています。「ちゃんと座って先生のお話を聞こうね。」と何度伝えても聞く耳を持たず、あちこち触ったり、壁を叩いたり、悪さばかりしています。
穏やかに伝えてみたり、表情で伝えたりしても、何も変わりません。最後は、うろうろしないように体を抑えることになってしまうのですが、癇癪を起こし、海老反りして床でギャーギャー泣き、私の顔を叩きます。育て方を間違えたのかなと、自信を失い、辛く悲しい気持ちになります。
この場合、うろうろさせたままでもいいのでしょうか。幼稚園に入ったらルールを守らないといけないし、我慢を覚えさせなければと思っていますが、その方法がわかりません。



A:
みんなが参加している中、1人だけ走り回ったり、泣きわめいていたりすると、こっちが泣きたくなりますね。でも、育て方を間違えたということはありませんし、2歳児であれば、静かに座って親の言うとおりにする、という方が、かえって気になります。
というのも、モンテッソーリは、

「世の中に最も困難なことの一つは小さい子を黙っていさせることです。そして子どもが歩くのや話すのを妨げられていれば、正常に発育することはできないでしょう。発育の阻止は苦痛です。」
(『子どもの心~吸収する心』マリア・モンテッソーリ著 鼓常良訳 国土社)

と述べているほど、子どもが自由に動いたり話したりすることを重視していたからです。
けれども、プレ幼稚園の場でうろうろさせることは、自由とは全く違う放任であり、そのことで得るものは何もありません。

一般的には、自由と規律は、全く相反するもののように考えられています。子どもを自由気ままにさせていたら、質問者さんのお子さんと同じように、やりたい放題、みんなと一緒に規律正しく動くことなどできませんね。

でも、モンテッソーリは、自由と規律はコインの裏表のように、切り離すことのできない2つの面であると考えていました。これを理解するためには、自由とは何か、規律とは何かということを、しっかりと確認しておかなければなりません。


▶モンテッソーリにおける自由と規律


モンテッソーリの自由には2つの要素があります。 
 ①制限ある自由 
 ②適切な環境の中での自由

①制限ある自由の枠組みは、第14回で「自分も大切、相手も大切」というのがモンテッソーリの基本的な考えと書きましたが、それを判断基準にするとわかりやすくなります。

たとえば、園でもご家庭でも同じだと思いますが、使ったものを出しっぱなしにしておくと、次に使う人や自分が困るということがあります。ですから、出したものは必ず元に戻す、というのが基本的なルールとしてあり、それが自分も相手も大切にすることです。もちろん物を投げる、尖ったものを持って走るといった行為は危険なことですから、自分も相手も大切にできません。さらに、乱暴で不作法な行為についても、モンテッソーリは禁止するようにと述べています。

ご質問にあったような壁を叩いたり、走り回ったりという行為は、危険でもありますし、他の人にとっては乱暴で不作法な行為に当たりますので、自由として認められるものではない、ということです。そうしたことが起きないようにするために大切なのが2つめの要素です。

②の適切な環境の中での自由というのは、心身の発達に必要な活動ができる環境が前提条件としてあるということです。それが第5回でも紹介したようなモンテッソーリ教育の整えられた環境です。モンテッソーリ園でなくとも、ご家庭でも可能であることは、これまでも繰り返しお伝えしてきました。逆に言いますと、そうした活動ができる環境の中で保障される自由を得て、初めて子どもは規律へと向かうことができるのです。


子どもの家の整えられた環境 感覚・言語・数・文化など子どもの興味関心に応える豊かな環境

モンテッソーリ園でなくとも子どもがやりたくなる環境は工夫次第で整えられる

それでは、一般的な規律と、モンテッソーリの考える規律の違いはなんでしょうか。

一般的な規律とは、大人が教え込み、強制し、制限することで一時的に保たれるものです。恐らく質問者さんがイメージされている規律、子どもにルールを教え込む、我慢を覚えさせるというのは、こうした規律のことではないかと思います。

でも強制したところでできなかったということは、すでに体験されました。幼稚園でも小学校でも、あるいは中高になっても、そうした意味での規律を保とうとすれば、先生方が「静かにしなさい!」「私語は禁止」「ちゃんと座りなさい」と言い続けなければなりません。そして、大人の監視や強制がなくなれば、とたんに規律を保てなくなります。モンテッソーリはこれを、外的動機付けによる受動的規律であり、意味がないと考えていました。

これに対してモンテッソーリの考える規律というのは、真の自由を保障されることで、正常化した子どもの内面から生まれる規律です。正常化については、第5回第7回でお伝えしましたが、今の年齢の自然のプログラムに従って、随意筋肉運動を心ゆくまで行い、達成感を持って次の段階へ行くということを思う存分できれば、子どもの心は満足します。日々の生活の中でそれを繰り返すことで、子どもは驚くほど従順で素直になります。おまわりさんに怒られるから、といった外的な抑圧によるのではなく、自分自身で自己抑制ができるようになるということです。モンテッソーリはこれを、内的動機付けによる積極的規律と位置づけていて、それこそが生涯にわたって機能する本当の規律であると考えていました。

この本当の規律は、大人になれば誰でも自然と身についているものではありません。ポイ捨てや車内での通話など、自分さえ良ければ構わないというさまざまな迷惑行為は、目にしない日の方が少ないと思います。一方でモンテッソーリの言う積極的規律を身につけた子どもは、幼い時から喜んでルールに従い、必要ならば我慢を厭わない忍耐強さを持ち合わせます。そんなことが本当にあるのかと思われるかもしれませんが、100年以上にわたって世界中でそうした姿が実際にあるからこそ、モンテッソーリ教育が行われているのです。私の勉強会に参加されていらっしゃる方からも続々とそうしたレポートをいただいています。

*2歳半を過ぎたころから出来ることが一気に増えました。言葉の表現力がつき、常に何か話しています。手を使う活動が好きなようで、はさみや穴開けパンチを使うお仕事を積極的にしています。シール貼りも好きです。電話中に静かに待ってくれたり、大人同士の会話を邪魔せず待っていたりと、落ち着きのある面を見せ、驚いています。(2歳7ヶ月 男の子の母)

シール貼り 2歳5ヶ月 意識してぴったり貼ることで心も育つ

観葉植物に水をやる 2歳 自然を大切にする心が他者への思いやりを育てる


▶集団行動よりもまず個の確立を


プレ幼稚園に通うメリットとしては、幼稚園によっては優先的に入園できる、ママ友探しができる、幼稚園選びに役立つといったことが挙げられると思います。一方で、どうしても通わなければならないものでもありません。

質問者さんのお子さんに、そちらのプレ幼稚園が本当に必要な環境なのかどうかを今一度考えてみられてはいかがでしょうか。子どもというのは不思議とそこをきちんと見極めます。園選びについてもよくご質問をいただきますが、「お子さんを連れていくつか体験に行き、お子さんが気に入ったところが一番良い園です。」とお答えしているほどです。

いずれ幼稚園に入るから、今から集団に慣れさせておかないと大変だとお考えのようですが、モンテッソーリの考えでは、個の確立を重要視しています。 集団行動がちゃんとできるようになるためには、順序としてまず個をしっかりと確立することが必要です。

時間に縛られなくてすむのも今のうちです。ご家庭では手と五感と十分に使えるお仕事を準備して、「やった!」「できた!」という体験をさせてあげましょう。そうした経験を通して、自分というものに自信を持ち、自己肯定感が高まれば、今度はようやく他に目が向き、相手の立場に立って考えたり、みんなと一緒の行動に合わせようとしたりということが、できるようになるのです。

今は無理して集団に加わる必要はありません。これからの時代は多くのことがAIやロボットに取って代わられると言われています。大切なのは、みんなと同じようにできることではなく、自分の頭で考え、自分で判断し、自分で行動ができ、さらに自己抑制ができるようになることです。

お子さんを押さえつけなければならないような場所に無理に通わせるよりも、ご家庭に魅力的なお仕事を複数準備して、選ばせてあげるところから始めてみてはいかがでしょうか。好奇心が旺盛で、やりたいという気持ちがあり、他に流されないお子さんだと思いますので、きっと繰り返し取り組み、集中することでしょう。そうすれば、幼稚園に入る頃には、ルールを守り、我慢する姿も見られ、お母様も自信を持って笑顔で見守れるようになると思います。

ピンセットでビーズを吸盤にのせる 3歳1ヶ月 難しいから達成感がある

<こどもせいかつ百科書影>
『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』
毎日のくらしの中で、楽しんでできることの具体例がいっぱい!




田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師要請通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年より、日本全国及び海外から参加可能なIT勉強会「てんしのおうち」主宰。モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所(AHL)所長。著書に、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)、『マンガでやさしくわかるモンテッソーリ教育』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。  






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