子育て相談
モンテッソーリで考えよう!

日々の子育ての悩みや困りごとを、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」の田中昌子先生が、モンテッソーリの考え方で教えてくれる連載です。ちょっとした工夫で、大きな変化が子ども達に起こり、ママを驚かせてくれるかもしれません。子育てママ必見です!

回答者:田中昌子

第31回 早く寝かせたいのに寝ない子、どうすればいい?



Q:
1歳6か月の女の子です。睡眠時間は大切といいますから、夜はできるだけ早く寝かせたいと思っていますが、娘は「もっと遊びたい!」と寝るのを嫌がって、大体21時を過ぎてしまいます。「9時だからもう寝る時間だよ。」と言って無理やり暗くして寝かせますが、興奮状態なのか、なかなか寝つけず、気がついたら23時ということがあります。ついイライラとしてしまい、「子どもがこんな時間に起きてたらダメ!」と怒ってしまいます。昼寝が12時から1~2時間の時には、早めに寝てくれますが、タイミングがずれて14時から昼寝をしてしまうと、寝ません。大人の事情でずれるので、怒れる立場ではないとわかっていても、寝てほしいという思いが強くてイライラしてしまいます。子どもが遊びたいと思っているのであれば、好きなだけ遊ばせて怒らない方がまだマシなのでしょうか?


A:
睡眠は、生活の中で食事と並んで大切なものですから、寝かしつけに関するご相談もよくあります。寝かしつけも毎日のことですし、遅くなってしまうと翌日のこともあり、思わずイライラしてしまうお気持ちもわかります。お母様が寝かせたい時間に眠くなるように調整できたら一番いいのですが、子どもは自然のプログラムに従っていますので、大人の思う通りには、なかなかならないものであることも、理解してあげましょう。また、時間という目に見えないものを、幼児が意識するのはまだまだ難しいものです。数字が読めるようになったり、カレンダーや時計に興味を持ったりするようになるまでは、「9時だから」「子どもは寝る時間」という言葉がけは意味がないということも、知っておかれるといいでしょう。

睡眠についてモンテッソーリ教育としてこうしなさい、という指針が決まっているわけではありません。ただ、すべてのことに共通している考え方があります。それは、子どもが主体であり、子どもは一人一人違う、大切な存在だということです。

子どもによって必要な睡眠時間は違います。我が家でも、長女はとてもよく寝る子でしたが、次女はまったく寝ない子で、私も当時はその違いに驚き、対応に困ることもありました。また、同じ子どもであっても、その日その日で体調や活動内容が異なります。外遊びが十分にできたかどうか、暑さ寒さはどうだったか、食事や排せつはどうだったかなど、さまざまな要素が睡眠に関係しています。

もちろん一定のリズムで規則正しい生活をすることは大切ですし、睡眠不足になるほど、毎晩夜更かしするなどは当然避けるべきです。でも、育児書に「何歳なら何時までには寝かせるように」と書いてあるからといって、毎晩ぴったり同じ時刻に寝かせなければ、と必死になる必要もありません。時刻を厳守しようとするから「寝てほしい」という思いが強くなり、怒ってしまうこともあるでしょう。それよりは、だいたいこのくらい、という目安を決めて、前後1時間程度ずれても、それほど気にしない方がいいでしょう。1週間程度のスパンで考え、トータルで睡眠が足りているようでしたら、許容範囲と考えましょう。

また、子どもは日々成長する存在ですから、いったん決めた目安についても、うまくいかなければ見直しが必要です。目安の時刻から1~2時間も寝付かないことが続き、翌朝ちゃんと起きることができて機嫌も良ければ、決めた目安をずらして様子を見ましょう。

寝かしつけについて、いくつかポイントとなることをお伝えします。


1.昼寝の時間を調整する
ご自身でも書いていらっしゃる通り、昼寝と夜の就寝時間は連動しています。昼寝の時間が遅くなり、夜寝なくなることがわかっているようでしたら、思い切って早めに起こした方がうまくいくこともあります。子育て中は、子どもが寝ている間だけがホッとできる時間でもありますから、寝ている子を起こすのは勇気がいることですが、夜のイライラが軽減されるなら、一度試してみる価値はあると思います。

2.遊びよりもお仕事をする
寝ないなら好きなだけ遊ばせた方がいいのでしょうか?というご質問ですが、ご質問の中にもあるように、遊びはかえって興奮状態を引き起こすことがあります。
1歳半でもできるモンテッソーリのお仕事はたくさんあります 。夜寝る前は、目新しいものよりも、落ち着いて自信を持ってできるお仕事をするのがお勧めです。日中も、できるだけ家事を一緒にやるように心がけ、手と五感をたくさん使うお仕事に取り組んでみてください。


フックかけ 1歳半 しっかりした指先に注目

カード落とし 1歳半 パパの手作り 落としやすい高さにある

また、新しいお仕事は、夜寝る前ではなく、日中に紹介しましょう。子どもは、自分自身の成長につながることですから、他愛ない遊びよりも、真剣に集中して取り組みます。特にその子の敏感期に合ったお仕事でしたら、一心不乱にしますから、心も満足し、寝つきもよくなります。

ストロー落とし 1歳半 穴あきボトルにぎりぎり入る太さだから真剣

3.寝る環境を整える
モンテッソーリ教育では、環境をとても重要視しています。騒がしかったり明るかったりすると、大人でもなかなか眠れません。なるべく照明を落とした静かな状態を用意しましょう。お子さん3人の寝つきが早いという、私の勉強会の卒業生の方からいただいたアドバイスもあわせて紹介します。


・照明を見直してみてください。蛍光灯しかないお部屋でしたら、電気スタンドの間接照明を利用するのもいいと思います。蛍光灯の明かりは気持ちが高ぶってしまい、昼間のような気持ちになってしまう傾向があるからです。照明が調整できるタイプのものであれば、寝る1時間前からは、ゆっくり絵本が読めるくらいの柔らかな暖色照明にして、眠くなってくるような雰囲気作りを心がけるといいでしょう。子どもは部屋が暗くなってくると「そろそろ寝る時間だ」という気持ちになってくるようです。テレビの画面も光の刺激が強いものですから、少なくとも寝る1時間前には消すと部屋の中に静けさができ、寝る時間だと分かるようで、効果的です。


急にお部屋を暗くして、さあ時間だから寝なさい、といわれても、子どもも準備ができないのですね。


4.決まったルーティンを作る
モンテッソーリ教育では、子どもを一人の人間として尊重します。大人でも、半身浴をする、ヨガをする、温かいミルクを飲む、好きな音楽を聴くなど、心地良い眠りにつける、決まった流れを何かしら持っていらっしゃる方が多いと思います。子どもも、安心して眠るまでの決まったルーティンを作ることが大切です。
お風呂に入る、パジャマに着替える、本を読み聞かせる、布団に入る、目をつぶって音を聞く、子守唄などを歌うなど、各家庭にあったルーティンを考えてみてください。眠る前に目をつぶって周りの音を聞くやり方は、『こどもせいかつ百科』のP109で紹介しています。

1歳半でしたら、まだ自分で話すことは難しいと思いますから、お母様が「風の音がするね。」「あ、鈴虫が鳴いているよ。」などと聞こえた音を表現してあげると、語彙も豊富になります。年齢が上がったら「どんな音が聞こえる?」と問いかけ、自分の言葉で表現させてあげるといいでしょう。

絵本の読み聞かせも、多くの方が取り入れています。ただ、限度がなくなってしまうこともありますから、2冊とか3冊とか、最初に決めて伝えておき、「もっと。」とせがまれても、決して変えないことです。また子どもに本を選ばせるのも大切ですが、夜は穏やかでほっこりするような内容の絵本から選べるようにしましょう。

『ねんねん どっち?』 作:宮野 聡子
「講談社絵本通信 おすすめ絵本」

『くまさん どこ?』 作:ジョナサン・ベントレー 訳:林 木林
「講談社絵本通信 おすすめ絵本」

ぴったり同じ時刻に寝かせようと一生懸命になるよりも、こうしたルーティンを一定にしてあげることで、子どもは落ち着きます。特に1歳半は第2回でお伝えした「秩序の敏感期」でもありますので、一度決めたルーティンは、崩さないように気をつけてください。

早く子どもを寝かせて家事を済ませ、自分だけの時間を持ちたいというお気持ちもよくわかりますが、怒ってしまうくらいなら、一緒に寝てしまうという方法もあります。私の勉強会の卒業生で、フルタイムで仕事をしていた方は、早く寝る分早起きをして、家事の大半を早朝にやるようにしていたところ、子どもを早く寝かせるのにとても効果があったとのことです。大人も早寝早起きで健康的な生活が送れますから、一石二鳥かもしれません。良い睡眠は大人にとっても子どもにとっても明日への活力ですから、これらを参考に、幸せな気持ちで親子が眠りにつけることを願っています。

『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』
毎日のくらしの中で、楽しんでできることの具体例がいっぱい!

【お知らせ】
質問募集は、連載30回をもって終了とさせていただきました。
たくさんのご質問ありがとうございました。いただいたご質問には、できるかぎり誠意をもってお答えしておりますが、すべてを採用できるわけではありません。また、当欄以外で、今後、回答者から直接回答が送られることはありません。なにとぞご了承ください。




田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師要請通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年より、日本全国及び海外から参加可能なIT勉強会「てんしのおうち」主宰。モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所(AHL)所長。著書に、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)、『マンガでやさしくわかるモンテッソーリ教育』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。





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