第57回(2016年) 講談社児童文学新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2016.10.14

  • 小林深雪先生

     最終選考に残った作品はいずれも力作ぞろい。楽しませてもらいました。
    『ラブリィ!』は「人は結局見た目なのか?」と疑問を抱く中学生男子が主人公。テンポのいい文章で、多彩な登場人物が登場し、コミカルに時にシリアスに、「容姿」のことを多方面から考えさせてくれる良作。希望を感じさせるラストもよかった。
    『放置自転車、15歳(、ぬけがら)』は、子どもの貧困をドキュメンタリータッチでリアルに描いた作品。子ども達のSOSを届けたいという作者の熱い思いが伝わってきました。
    『マイナス・ヒーロー』は、バドミントンの描写が魅力的。主人公男子のネガティヴな感情をとことん描き、その切実さは十分に伝わってきましたが、主人公がきらりと魅力的に輝く見せ場を、もう少し作ってあげるとさらによかったと思います。
    『幸ふる街の魔法書使い』主人公が書いていた物語が、途中から勝手に暴走して進んでいくところがスリリング。期待して読んでいただけに、あっさりしたラストが惜しかった。
    『六郎のあと』は、不思議な力のある少年をめぐる物語で引き込まれました。少年の力の秘密や自己犠牲について、もう一歩踏み込んで書けば、さらに良い作品になるはずです。
    『ちゅうたろうと、10ぴきのいもうと』は、ネズミが主人公の可愛らしくて楽しい幼年童話。好感度は高いのですが、もう少しオリジナルな新しさを感じさせてくれるとよかった。
    受賞者のみなさま、おめでとうございます。今後の活躍を期待しています!
  • 那須田淳先生

    『ラブリィ!』——思春期はもちろんのこと、もってうまれた容貌は誰もが気になるところ。そこに直球で焦点を当ててテーマとして取り組んだ点にまず「おっ」となり、主人公の拓郎が不器用ながらの「いいやつ」なのも好感を抱いた。読後感は今回の候補作の中で文句なく一番良かった。
    『放置自転車、15歳(、ぬけがら)』——現実社会でも見落とされがちな「放置自転車」のような少女たちを等身大に描いた、今の若い読者たちに届けたい作品テーマである。主人公の心に影響を与える人物像をもう少し掘り込んで欲しかった。
    『マイナス・ヒーロー』——「Unsung hero(アンサン・ヒーロー)=縁の下の力持ち」の存在にスポットをあてながら、成長していく少年たちの姿を描いた。ただ少女・海の気持ちの変化など、細かなディテールが雑になってしまったのがもったいない。
    『六郎のあと』——アイデアは斬新だが、人物の掘り込みが浅いため、読んでいて平板に思えてしまう。また設定年齢に比べて、総じて幼いのも気になった。
    『幸ふる街の魔法書使い』——仕かけは良かったが、現実世界と物語世界の交差が少なく、また謎の書き手の正体が「母親」だったことにもがっかりした。親にのぞかれて、喜ぶ子どもがいるだろうか?
    『ちゅうたろうと、10ぴきのいもうと』——お兄ちゃんのちゅうたろうに焦点をあてすぎたのがもったいない。せめて、十匹目の妹だけでも、もっと個性的に描いて欲しかった。
  • 茂市久美子先生

    『ラブリィ!』は、人は見た目にあらず、というわかりやすいテーマが、ユーモアたっぷりに描かれ、最後までたのしく読めました。登場人物も魅力的で、それぞれがしっかり書き分けられているのにも感心しました。結末もよく、今回一番に推しました。
    『放置自転車、15歳(、ぬけがら)』は、きびしい境遇の中で生きる子どもたちの姿が、ノンフィクションのように描かれ、リアリティーにおいては申し分ありませんでしたが、子どもたちの未来に希望や光が見える展開が、もう少しほしかったと思います。
    『マイナス・ヒーロー』は、バドミントンのことがわかりやすく描かれていて、スポーツ音痴のわたしにも最後までたのしく読めました。ただし、ストーリーのすすめかたに都合のよすぎるところが幾つかあり、構成を少し見直す必要があると思いました。
    『幸ふる街の魔法書使い』は、魔法の本に、主人公が書いたはずのない文章があらわれるあたりから面白くなりますが、結末に意外性がなく、物語が、まだ練りきれていないように思いました。
    『六郎のあと』は、いつの時代の物語なのか、時代背景をしっかりさせる書き方をしたら、もっとよくなったと思います。
    『ちゅうたろうと、10ぴきのいもうと』は、物語の初めのほうに、くりかえしのたのしさがありましたが、ちゅうたろうが、どんなねずみなのか、ちゃんと描かれていないのが残念でした。
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