第59回(2018年) 講談社児童文学新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2018.9.28

  • 小林深雪先生

    『14歳日和』は、中学生のクラスでの違和感、敵意や嫉妬、それが友情にかわる瞬間などの繊細な感情が無理なく描けていて、好感度の高い作品。派手ではないけれど、同世代が共感するような、ささやかなエピソードを小さく重ねて物語が進んでいくので、説得力がありました。高い筆力に、今後への期待もこめて新人賞に推しました。
    『お絵かき禁止の国』は、LGBTのLがテーマ。ただ中学生くらいだと女子の友情は疑似恋愛的になる子もいますし、かっこいい同性へのあこがれもあります。なので、「もっと深く友達になりたいと思う気持ち」と「恋愛として同性を好きになる気持ち」が、どう違うのか、そこをもう一歩踏みこむと、読者の理解を得られる作品になると思います。
    『ヌック・マッティの銀の夢』は、クリスマスのサンタクロースを描いた作品。子どもたちにとっては、それぞれの夢やあこがれ、思い入れが強いデリケートなテーマだけに細部に気をつかって欲しかった。イブの日に宅配便をボイコットする無神経な大人たちや双子は助かったのに少女は亡くなってしまうなど、いくつか気になるエピソードがありました。
    『たたきつぶす国語』は、読んですぐに清水義範さんの小説「国語入試問題必勝法」を思い出しました。読書感想文への苦手意識は、小中学生にとって身近なテーマなので期待して読んだのですが、過激な国語教師の毒舌などが笑えませんでした。もちろんブラックでもいいのですが、清水作品のようなとぼけたユーモアがあるとさらによかったと思います。
    『青の楽園』は、周囲になじめない気の弱いゴリラが主人公。ゴリラは屈強な見た目と違い、知能が高くて、とてもナイーブな生き物ということがわかりますし、文章も堅実で読みやすかったです。ただ内容が、小学中級向きなので、エピソードを整理して、もっと短くコンパクトにまとめたら、さらに読みやすくいい作品になると思いました。
  • 那須田淳先生

    なぜこれを今書くのか? というテーマ設定や感性も加味しながら、今回も選考に当たらせてもらった。
    『14歳日和』14歳の日々を掬い取った連作型の作品。貧困問題も扱っているのは「今風」だが、捉え方が少し浅い。構成のバランスも悪く欠点もあるが、主人公たちの心に寄り添いながら紡いでいく文体が心地良く、もっと読みたいと思わせる魅力がこの書き手にはある。
    『お絵かき禁止の国』女の子なのに女の子が好き。これって変なこと? LGBTの問題をラノベ風の軽いタッチで描いた作品。うまい!! ただ肝心の主人公の葛藤が弱く、家族や周囲の反応が“いかにも”なのが気になった。
    『ヌック・マッティの銀の夢』「眠りの精」を題材にしたクリスマス物語。なぜ自分たち家族がサンタの手伝いに選ばれたのか、命が助かったのか、といった点の掘り下げがゆるく、未消化だった。
    『たたきつぶす国語』国語教育が想像力を奪うという設定が画一的で、展開も教育批判に終始してしまったのが残念。いっそホラーにしてしまうほうが、子どもの読者に寄り添えるし、問題提起にも繋がるのでは? ジョーカー的なゴン狐が面白いし、構成力もあるので惜しい。 
    『青の楽園』冒頭が饒舌で主人公のキャラも共感しづらい。ただゴリラを選んだ着眼点や、泣いた赤鬼を彷彿させるストーリーも良いので、余分なモノをそぎ落とし、鳥瞰図的なアートの視点を加えてみたら化けたかもしれない。
  • 茂市久美子先生

    『ヌック・マッティの銀の夢』は、クリスマスの夜、ある特別な使命を持ってやってくる白いサンタクロースの発想が、とてもよいと思いました。ただ、物語に、登場人物がやたらと多く、たくさんの話がつめこまれすぎていて、聖夜らしからぬ騒々しい作品になってしまったのが残念でした。
    『たたきつぶす国語』は、巧みなストーリー展開で、よくまとまっていると思いました。日本の国語教育に一石を投じようとする作者の思いも強く感じられましたが、果たしてこの作品は児童文学だろうかと考えたとき、YAにするにしても、やはり無理があるように思えてなりませんでした。
    『青の楽園』は、物語の導入部にあたる、主人公のオッジが家族のもとを去るまでが長く、妹がヒョウにおそわれそうになったときの場面など、オッジの描き方に、もうひと工夫ほしいと思いました。その後の展開でも、気になるところはありましたが、オッジというゴリラの成長譚としては完成度が高かったように思います。しかし全体的に冗漫で、ファンタジーの書き手が少ないことを考えると、ぜひまた挑戦してほしいと思いました。
    『お絵かき禁止の国』は、登場人物の心理描写がうまく、家族やクラスメイトなど、それぞれの個性もうまく書き分けられていました。主人公ハルの告白に対する、母親の反応が都合よすぎるきらいはありましたが、深刻になりそうなテーマが、ときおりユーモアもまじえ、あたたかい雰囲気のある作品になっていて、最後まで安心して読むことができました。最終選考に残った作品の中で一番よくまとまっていると思いましたが、本賞に推すには、残念ながら、作品としての深みが足りませんでした。
    『14歳日和』は、中二の女子一名と男子二名を主人公にした三話からなるオムニバスストーリー。三話とも、主人公の性格が健全でさわやかなのに好感をいだきました。物語の面白さと他をよせつけぬ筆の力があり、今回一番に推しました。ただ、この作品を本にすることを考えると、女子の物語が一話だけで、しかも短いのが気になりました。女子の物語がもう一話あり、それぞれの物語の長さも同じくらいだったら申し分なかったと思います。
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