子育て相談
モンテッソーリで考えよう!

回答:田中昌子



第11回 食事に集中しない子どもにどう対応したらいいですか?



Q:
4歳の息子が自宅で食事をするとき、途中で席を立ったり、妹にかまい始めたりと、集中しません。そのため時間もかかります。「食べなさい」と口を酸っぱくするのですが、子供を急き立てるようで、悲しい気持ちになります。

親の工夫として、食事中はテレビをつけない、遊びたい気持ちが落ち着いてから食事にする、食材は食べやすい大きさに切る、食べやすく、かつ、食事を楽しめる食器を使う、配膳や料理を手伝ってもらう、といったことをしています。子供に食べ物の好き嫌いはありません。

こどもが食事の時間を、お腹も心も満足した状態で終えられるようにするためには、親はどのような関わり方や環境づくりをしたらよいですか。




A:
食事に関するご質問やご相談も数多くいただきます。幼児前期では、食べこぼす、自分から食べようとせず「食べさせて」と言う、スプーンがうまく使えないなど。幼児後期では今回のようなお悩みのほかに、箸の持ち方がおかしい、食が細いなど。食事のご相談だけでも1冊の本ができてしまいそうです。

食事は通常1日3回、365日毎日繰り返されることですし、生きることにも直接つながっていますから、当然と言えば当然かもしれません。また、お母様としては、せっかく手間暇かけて作ったごはんですから、なんとか楽しく満足して食事を終えてもらいたいと願うお気持ちでしょう。よくわかります。

質問者さんも、ご自分でいろいろな原因を考え、その対策も工夫していらっしゃいます。テレビをつけない、配膳や料理を手伝うなどは、モンテッソーリ教育としてもお勧めしていることです。一方、「食べなさい」と言葉で促してもまったく効果はありません。「早くしなさい」と言っても早くならないのと同じで、かえって逆効果になることもありますので、ぐっと抑えて下さい。ではどうしたらいいのか、考えてみましょう。


▶集中する時間を意識


集中せずに立ち歩くということは、その子どもは食べることに対する意欲が薄いと考えるのが自然です。お腹が空いて本当に食べたい! と思えば、子どもは脇目も振らずに食べますね。単純に言えば、食事前にお腹が空いた状態になっていないということです。その原因はいくつか考えられます。以下をチェックしてみて下さい。

・外遊びなど運動が十分にできているか?
・睡眠が十分に取れているか?
・食事の時間は規則正しく決まっているか?
・食事前におやつや甘い飲み物などを取っていないか?

いずれも基本的なことですが、当てはまるものがあれば、そこをまず改善しましょう。

質問の中に「遊びたい気持ちが落ち着いてから食事にする」とありましたが、その必要はないでしょう。食事の時間が不規則になりますし、幼児前期の妹さんがいらっしゃるなら、その食事時間までずれてしまいます。決まった時間に、お腹が空いた状態で食事をする、という自然な流れを作ることが大切です。

食事の始まりを決めたら、終わりの時間も決めておきましょう。食べないからといって1時間も2時間も食べさせていると、よけい集中しません。集中というのは、一定の時間内に全力を傾けることです。

ただ、幼児はまだ時間という目に見えないものを意識することが難しいものです。時間を目に見えるものにしてあげましょう。

数字が読める年齢ならば、終わりにしたい時間の長い針の指す数字にシールやポストイットを貼ってもらって目安にするといいでしょう。(※この方法は『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』のP12にあります)

最近では15分や30分の砂時計なども売られているようですから、そういったものを利用してもいいですね。それでも時間を意識することが難しい場合には、終わったあとのスケジュールに子どもが好きなことを組み込んでおくといいでしょう。お気に入りの本のよみ聞かせ、外遊び、おやつ作りなど、食べ終わったらこれができる、ということを決めておくと、早く食べ終えてそれをしよう、と思えるのではないでしょうか。


▶食卓と椅子の高さのバランス


次に食事をする環境ですが、食卓と椅子の高さのバランスを見直してみましょう。

まず、子どもの足がしっかりと床に届いているかどうか、確認しましょう。4歳児は中途半端で、ベビーチェアは卒業し、かといって大人の椅子では大きすぎるという状態ではないでしょうか? ご家庭ではその年齢の子どもに合ったテーブルと椅子で食事をさせるのが難しく、それが遊び食べの原因となることがあります。

年齢に合わせて高さが調整できる椅子もありますし、踏み台などを利用しても構いませんから、足がつく状態を作りましょう。足がブラブラしていると落ち着かないので集中しにくく、床に降りたくなったり遊び始めたりする原因になります。そればかりか、噛む力が弱くなりますから、顎の発達や歯並びにも影響があります。


▶本物を使うことで、真剣に集中する


次に食器をチェックしてみましょう。質問者さんの「食べやすく、かつ、食事を楽しめる食器」がどのようなものかわかりませんが、もしも軽いプラスチック製やメラミン素材でキャラクターのついているものであれば、それが集中しない原因になっている可能性もあります。

第5回で、環境に置くものについて「ガラスや陶器といった本物を使うことで、子どもは真剣に集中してそれらを扱おうとするようになります」と書きましたが、食器も同様です。ままごと道具とあまり変わらないようなものは、大切に思えませんし、何より乱雑に扱っても、音がしたり壊れたりしないので、子どもは当然そのように扱います。

本物は丁寧に真剣に扱わないと、不作法な音をたてたり、割れてしまって悲しい想いをしたりするので、子どもが集中します。キャラクターの食器は、食べるきっかけになるかもしれませんが、遊びと直結しているので、遊びたくなったり、注意が逸れたりすることもあります。シンプルで少し重みのある、魅力的な食器に変えることをお勧めします。


▶自分で食べられる量


食事そのものについては、まず分量が重要になります。親は子どもにたくさん食べてほしいという願望があるため、ついつい適量よりも多めに盛りがちです。ところが、それがかえって食欲を減退させてしまうことも多いのです。

4歳のお子さんであれば、お勧めなのが「自分でよそっておかわり自由」という方法です。多くのご家庭で、ごはんは電気釜からお母様が子どもの茶碗によそったものを出していることでしょう。電気釜の縁で火傷をしてはいけませんから、子どもの手の届かない場所に置くのは当然です。

でも、モンテッソーリ教育では、「一人でするのを手伝う」ことを考えます。大きめの器、どんぶりや木製のボウルなどにいったんご飯を盛り、しゃもじを添えて食卓に出してみましょう(※この図は『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』のP26にあります)。食卓には空の茶碗を並べておき、自分が食べられる量だけ、そこからよそって「お先に(失礼します)」とか、「どうぞ」と次の人へと回すのです。

最初に大人がやってみせれば、それが「提示」になりますし、自分で食べられる量に責任を持つことも伝えられます。また、しゃもじですくい、茶碗に入れるときには、しっかりと手首を返さないといけませんから、とても良い手首の運動になり、鉛筆を持つ練習にもつながります。(※手首を返す工夫は、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』のP27にあります)

おかずは、各自のお皿につけておいても構いませんが、ごく少量にしておき、余ったものは種類ごとに別のお皿に盛り、おかわり自由にしておくといいでしょう。

おかずが固形のものであれば、トングなどを添えておくと、お箸の練習にもなります。しつけ箸と普通のお箸は、動かし方が全く違うので移行するときに苦労しますが、トングの動かし方は、お箸につながるものです。モンテッソーリ教育の空け移しの練習用具にも、トングはよく使われています。



▶食事は命をいただくこと


質問者さんのお子さんは好き嫌いがないとのことでした。それは素晴らしいことだと思いますが、好き嫌いに悩んでいるという方も多いでしょう。以下は私の勉強会に参加されていた会員の方からいただいたレポートです。

息子が2歳頃に、嫌いなニンジンを残そうとするので「このニンジンは、嫌いだからと残してしまったらゴミになるだけ。私たちが食べて、私たちの体を作る助けになることで生かされるんだよ」というような難しい話をした覚えがあります。

2歳の息子が理解できたのかは分かりませんが、息子は「ゴミになったらかわいそうだね」と言って、それ以降は好き嫌いで食べ残すようなことはほとんどしなくなりました。

飽食の時代となり、現在子育て中の世代は贅沢をして育った人が多いです。おいしくないから、もう食べられないからと言って食べ物を残す人が私たち子育て世代にも本当に多いのです。

親が平気で食べ物を粗末に扱っていたら、当然子どもも同じことをしますので、我が家ではそれだけは特に気を付けています。息子にも「人間は他の生き物の命をいただいて生きている」ということは伝えています。


このように食事は命をいただくこと、ということがお子さんに伝われば、一生懸命食べようとするのではないでしょうか。


▶食に関わる方法


もうひとつお勧めしたいのは、食に関わらせることです。これは質問者さんも実践されているようですが、子どもが自分で作ったり、切ったりしたものは、食べるようになることが、よく報告されています。

玉ねぎの皮を剥く、レタスをちぎる、ゆでたまごの殻を剥く、といったことは1歳児からできることです。早い時期から食に関わらせてあげて、できる作業をだんだん増やしておくことが大切です。


なぜなら4歳くらいになると、配膳や簡単なお手伝いでは、心が満足しないからです。勉強会の会員の方の中には、休みの日にはまずメニューを子どもに決めさせるという方、買い物から任せるという方、一食まるごと任せるという方もいらっしゃるほどです。

食材になる植物を育てることも有効です。家庭菜園はもちろん、庭がなくともプランターでミニトマト、バケツで稲を育てることができます。田植え、稲刈り、地引網を引く、自分で釣った魚を食べる、こういった経験はお金を払ってでもさせてあげたいものです。なぜなら口で「命をいただくこと」と言うよりも、ずっと子どもに伝わりやすいからです。


▶子どもの敏感期に合ったお仕事


最後に、もっと子どもの心の根っことなる部分についてお話しましょう。これまでの連載でも繰り返し述べてきたように、遊びではなく仕事をさせることで、子どもの内面が育ちます。

食事時にどう対応するのか、どのような言葉がけをしたらいいのか、を考えるだけではなく、子どもの敏感期に合ったお仕事を心ゆくまで毎日させてあげましょう。モンテッソーリは、子どもは精神的に飢えていると述べています。

特に難しいことをさせる必要はなく、ごはんをよそうところでもお伝えしたように、知らず知らずのうちに大人がしてしまっているような、手と五感を十分に使う日々の生活を、子ども自身ができるようにしてあげることです。そうすれば、子ども自身が食事のときにはどうふるまえば良いのか、自ら考えて行動できるようになります。お母様が食事のときにあれこれ言わなくても済むようになり、お腹も心も満足した状態で、親子が笑顔で食事を終えることができるでしょう。

1日3回、365日繰り返される食事の時間を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

モンテッソーリで子育て支援
エンジェルズハウス研究所 田中 昌子





田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年より、日本全国及び海外から参加可能なIT勉強会「てんしのおうち」主宰。モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所(AHL)所長。著書に、『親子で楽しんで、驚くほど身につく! こどもせいかつ百科』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫 モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)がある。 






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