背筋がぞわっ……『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』の読み聞かせのコツ

「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」隊長がお教えします

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

読み手 ーーおはなし隊隊長 猪口まり子
※この記事は、講談社絵本通信に掲載の記事を再構成したものです。
 
キャラバンカーに本をたくさん積んで、全国47都道府県におはなしを届ける「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。
幼稚園や保育所、小学校や図書館、書店など様々な訪問先で、おはなし会を重ねてきたおはなし隊の隊長さんが、子どもたちに人気の絵本の読み聞かせのコツをお教えします!
夏にうってつけの怖いおはなしです。夢枕獏さんの『陰陽師』を大島妙子さんの絵で絵本化。ぜひ、小学生の読み聞かせに使ってみてください。
『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』
作:夢枕獏 絵:大島妙子 講談社
子どもたちは怖いおはなしが大好き。
「夏真っ盛り、暑い日が続きますのでこのおはなしで少し涼しくなるといいですね……」とふりながら、タイトル「おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー」は重々しく。表紙はゆっくり見せてあげてください。

最初の2場面は説明するように淡々と読み進めていきます。

「ごとり ごっとん」「ごとり ごっとん」
「ちかづいて くる」「ちかづいて くる」は、
2つのことばの「間(ま)」を大切に。
暗〜いおそろしい様子
『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』より
次のページでは、鬼の群れがあらわれ、不思議なことばの羅列がはじまります。
「おっぺけぽー」「のっぺけぽー」、そして「とっぺけぽー」「たっぺけぽー」、あせらず、ひとことひとこと丁寧にことばの音を楽しむように読みましょう。でも、私はこれらのことばはどれも同じ調子で読みます。読むリズムを大事にします。

さらに鬼の説明が続きますが、ちょっと絵が細かいので遠目にはわかりにくいかもしれません。ただ、どの鬼かは指で指したりせず、子どもたちの想像にまかせます。
突然あらわれた鬼の群れ
『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』より
その後、晴明の顔が大うつしになりストーリーが進みます。今までは淡々と読んできましたが、ここから少し調子をかえていきます。晴明の逼迫感、決心など、感情をあらわしていきます。

「ぼくが なんとか しなくっちゃ」
絵としてかかれている呪文の「むん」「むん」……も読みましょう。

「しっ!」
清明が術をかけるシーン。絵のインパクトも強いですが、ひとさし指を唇にあてながら子どもたちを見回すと、さらに緊張感が高まります。結界をはって鬼からかくれますが、声を出した牛は鬼に見つかり、食べられてしまいます。

そして、人間をさがす鬼たち、ピンチのクライマックスの場面です。「さあ、たいへん」「どうしよう」と盛り上げるように読んでいきます。

ここでお師匠の賀茂忠行がやっと鬼に気がつき、人間のかたちをした紙で鬼をだまし、やりすごします。帰っていく鬼たちのまた奇妙な言葉。「おっぺけぽー」「かっぺけぽー」「とっぺけぽー」。これらのことばは、おはなし全体を通じて終始同じ調子で読むようにします。
お師匠の賀茂忠行が鬼に気づく
『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』より
鬼の騒動が終わった後の忠行と晴明の会話は、がらりと雰囲気を変えて読みます。晴明をほめる忠行のことばはうれしそうに。
「いやいや、すごいぞ 清明。」
ほめられたのはうれしいけど、ちょっぴりくやしそうに晴明。

「かみの 人形を にんげんに かえる あの じゅつを おしえて くださいね」
怖い思いをあまり残さないよう、締めくくってください。低学年の子どもたちの中には、陰陽師ということばがわからない子もいるかもしれませんが、最初に説明してしまうのではなく、おはなしの中で理解してもらい、読み終わったあとで簡単に教えてあげると、興味も深まるかもしれないですね。

●今回読んだ本

『おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー』
作:夢枕獏 絵:大島妙子 講談社

●プラス1冊

おふだでピンチを切り抜けるシーンは爽快で、おしょうさんとやまんばが対峙する結末も鮮やかな、楽しい昔話。

『よみきかせ日本昔話 さんまいのおふだ』
文:石崎洋司 絵:大島妙子 講談社

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai