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講談社の翻訳絵本
『ド・レ・ミ わたしの バイオリン』
◆スージー・モーゲンスタン/文
◆マリー・ドゥ・サール/絵
◆高田万由子/訳
◆読み聞かせ:5歳から ひとり読み:7歳から
読み聞かせに
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おばあちゃんにはじめてコンサートに連れていかれた少女は、そこでバイオリンの音色に心奪われます。「わたしも弾いてみたいな」。来る日も来る日もバイオリンのことばかり。
とうとうパパとママがバイオリンを買ってくれました。そして、レッスンにも通います。きびしい練習にも耐え、はじめは一生懸命。でも、やがて、「深い穴に落としちゃいたい」くらい、バイオリンが嫌いになってしまうのです。ところが、「あんたなんか、どこかに いっちゃって!」と、バイオリンをむんずと掴んだその瞬間、少女の心の中には、今までと違う感情が流れたのでした……。
・訳/高田万由子さんからのメッセージ
フランス語の絵本の翻訳は、5年前にシリーズ3冊を訳して以来、2度目となります。
「ド・レ・ミ」は、娘にバイオリンを習わせている私にとって、非常に身近なテーマであり、まるで、私たち母娘の日常生活の一部を切り取ったような、そんなお話でしたので、翻訳の際はすらすら筆がすすみました。しかし、その中でも音楽用語は訳しにくい専門的な言葉があり、それをどうわかりやすくするかは苦労しました。また、原文では、あまり感情的な言葉が出てこないのですが、「嫌だ!」とか、「うれしい!」というニュアンスをはっきり感情で表して意訳しました。この絵本を通じて、子供たちに音楽の素晴らしさと夢を届けられたらうれしく思います。
スージー・モーゲンスタン(Susie Morgenstern)
アメリカ・ニューアーク生まれ。子どもの頃から書くことが好きで、あだ名は“スージー・シェイクスピア”。ニュージャージー州ラトガーズ大学、イスラエルのヘブライ大学、フランスのニース大学で学ぶ。フランス人数学者と結婚。38年間ニース大学で英語を教えながら、自分の子どもたちのために絵本を描く。外国語であるフランス語での執筆活動が評価され、フランス政府から『芸術・文学勲章』を授与された。趣味はコントラバスの演奏。ふたりの娘、3人の孫がいる。
マリー・ドゥ・サール(Marie de Salle)
1976年、ベルギー・ブリュッセル生まれ。バイオリニスト、イラストレーター。音楽学校でバイオリンを学んだのち、ブリュッセル聖ルカ学院でイラストを学ぶ。現在ユルプにあるフォロン美術館に勤務。大人を対象にした絵画のワークショップを主宰し、子ども雑誌のイラストレーターとしても活躍している。そのかたわら、バイオリン教師、ユニットでの演奏活動もこなすという、スーパーアーティストぶり。1女の母でもある。
高田万由子(たかた まゆこ)
1971年東京生まれ。東京大学在学中、週刊朝日の表紙を飾り、これを機に以後テレビ、舞台、映画などで幅広く活躍。語学力(英語、フランス語)を生かした絵本の翻訳や、エッセイの執筆にも才能を発揮。『家族がもっと幸せになる24のヒント』(祥伝社)などの著書がある。1999年にバイオリニストの葉加瀬太郎氏と結婚。1男1女の母でもあり、現在はロンドンと日本を往復しながら、子育てと仕事を両立させている。
原著はフランス語です。著者は音楽に造詣が深いようだし、イラストレーターは、なんとバイオリニストと兼業! ならば、翻訳も、その道に通じた人にお願いしたい、と思ったのが、高田万由子さんに依頼したきっかけです。
お会いすると、高田さんは、お嬢さんのバイオリンのおけいこのことを話してくださり、「まさに、『穴に落としちゃいたい』って感じなんですよ」とおっしゃって、まあ、バイオリンにしろ、ピアノにしろ、子どものおけいこ事では必ず通る道ですよね、と共感し合いました。ご自身の生活体験に引き寄せて訳していただき、それがとても効果的に作用したと思います。
1冊全体の流れについても細かい配慮があり、原著ではページをめくると飛躍があるようなところも、うまくおはなしがつながるように、日本語で工夫してくださいました。 また、テレビの収録の合間に、気になるところがあるからと、お電話くださったりして、いろいろ話し合いながら、少しずついい絵本に近づいていった、というような、私にとっては、ふだん翻訳家の方々と仕事をするように、いつも通りのプロセスを経て刊行に至ったという次第です。
おけいこ事にかかわる、いろいろな思いが共有できる。そんな絵本に仕上がって、満足しています。(チ)
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