読み聞かせのコツ 第25回 「ブービーとすべりだい」の場合

新連載 おはなし隊の読みきかせ 読み聞かせのコツ

講談社では日本全国、津々浦々に絵本を積んだバスで訪問し、読みきかせする、「全国訪問おはなし隊」という活動をおこなっています。
この連載は、その読みきかせのもようをお知らせしつつ、読みきかせのワンポイントアドバイスをお蔵だしいたします。実物の本を見ながら読んでいただくと、よりよくわかると思います。
ぜひ、身近なところでお話し会をされる方や、保育園、幼稚園、小学校などにいって読みきかせボランティアをされるときなどの参考にしてくださいね。
第25回「ブービーとすべりだい」の場合

おはなし隊隊長 岩田恵美子


『ブービーとすべりだい』 『ブービーとすべりだい』

◆高畠じゅん子/作
◆高畠 純/絵

子どもの頃は誰にでもできないことがあって、できないことのなかには、いろんなどきどきがいっぱいつまっていて……。
すべりだいがすべれないブービーの「はじめのいっぽ」までの物語。懸命に頑張っているブービーの表情が少しずつ変化していきます。そんなちいさな変化がいとおしくなる、「できないきもち」に寄り添う絵本。「勇気を持って!」と背中を押してくれる一冊です。

ハッキリした色使いで遠目もききます。特に、すべりだいやブービーのズボン、おかあさんのエプロンなど、要所で使われている「赤」がとても素敵な絵本です。

ブービーにエプロンを“ぎゅう”とつかまれたおかあさんの気持ちになって、子どもたちに読んであげましょう。すべりだいをすべりおりる時のいろいろな擬態語もこの本の楽しさのひとつ。ちょっと意識して読むと、より楽しさが増しますよ。

最初に、「みんなの幼稚園にはすべりだいあるかな?」と子どもたちに話しかけながら始めると、子どもたちの集中力が高まります。そして、勢いよく軽快に「シュルルルーン」と、すべりだいをすべりおりる様子を伝えます。楽しそうなこどもたちの笑顔と、それをひとりうらやましそうにみつめているブービーの対照的な表情を、子どもたちにゆっくりみせてあげます。ブービーの存在は、ちょっと指さしてあげるとわかりやすいですね。


「ゆうきをだして のぼったことは なんども」の「なんども」は少し強調して読みます。「きゅうに こわくなって、」のあとは、ブービーの不安な気持ちを表すように、少し間をとってから、ページをめくります。

「きょうも やっぱり すべれませんでした。」上ったばかりの階段をおりることになったブービーの、とてもがっかりした様子をあらわすように、少しゆっくりめに、少し低い声で読みます。それを見ているこどもたちの表情も複雑です。

カラスのセリフは、少し馬鹿にしたように、そして少しあらっぽい感じで読んでみましょう。ブービーをからかっているようなカラスの表情にも注目です。

次は、ネコ。
勢いよく「ダダダダダー!!」と読んだ後は、リズミカルに「クルッとまわって」と続けます。ネコの様子にびっくりしたブービーの表情を、ゆっくり子どもたちに見せてあげます。

台所の場面。
楽しそうに夕食を作っているおかあさん。まないたの上を「ゴロゴロと」すべりおちていく野菜たち。ここまでは楽しそうに読むといいですね。
そして、それをうらやまそうに見つめているブービー。
少しだけ見えているブービーの顔を、指で差してあげるとわかりやすいですね。

そして、勇気を振り絞って、ブービーはおかあさんにすべりだいが「できない」ことを伝えます。「あのね、ぼく できないんだ、すべりだい」この4つの単語にブービーの「できないきもち」がこめられています。ひとつひとつの単語を、丁寧に、間をとりながら、読みます。せつない気持ちを伝えるように、トーンを少し落として読むと感じが出ます。

「ワン、ツー、スルリーン!!」と、おかあさんのすべりだいをすべりおりることができたブービー。元気よく楽しそうに読みましょう!
お母さんとブービーの見たこともないくらい楽しそうな笑顔に注目です。

おつきさまのてっぺんから「シュルリーン」とすべりおり、よぞらを「フワリッ」ととぶゆめをみたブービー。ここでも擬態語が2つ出てきます。臨場感を出して読んでみましょう。「すべりだいも こんなふうに すべれれば いいのになあ」は、少しだけ自信のついたブービーの期待する気持ちを込めて読みます。

次の日……。
すべりだいのうえにいるブービーの顔、意を決し自信と勇気をもってチャレンジする気持ちのあらわれたブービーの表情に注目です!!
「え、どうなったかって?」は、子どもたちに問いかける感じで……。そして、「カラスさんとネコさんにおうえんしてもらって……」は、子どもたちに答えるように、教えてあげるように読みます。

そして、最後の裏表紙では、ついに滑り台から両手をはなして勢いよくすべりおりてきたブービーに会えます。
子どもたちからも『あーっ、すべった?!』の元気な嬉しそうな声が……。
ブービー、やったね!

「できないきもち」を克服できたブービーを、ゆっくり子どもたちにみせてあげて、おしまい。
バックナンバー
第25回 『ブービーとすべりだい』の場合
第24回 『イカになあれ』の場合
第23回 『つかまえた!』の場合
第22回 『おにぎりにんじゃ』の場合
第21回 『ぼくだって ウルトラマン』の場合
第20回 『ん』の場合
第19回 『ぴたっ!』の場合
第18回 『ぼくたちの ピーナッツ』の場合
第17回 『ハッピー ハロウィン!』の場合
第16回 『ねこときどきらいおん』の場合
第15回 『よわむしモンスターズ』の場合
第14回 『どろんこ! どろんこ!』の場合
第13回 『もぐもぐもぐ』の場合
第12回 『アントンせんせい』の場合
第11回 『ごとんごとん ごー!』の場合
第10回 『りんごはいくつ?』の場合
第9回 『よみきかせ日本昔話 かもとりごんべえ』の場合
第8回 『よみきかせ日本昔話 つるのおんがえし』の場合
第7回 『まゆげちゃん』と『よみきかせ日本昔話 かさじぞう』の場合
第6回 『よみきかせ日本昔話 さんまいのおふだ』の場合
第5回 『よみきかせ日本昔話 へっこきよめさま』の場合
第4回 『よみきかせ日本昔話 さるかにがっせん』の場合
第3回 『よみきかせ日本昔話 うらしまたろう』の場合
第2回 『よみきかせ日本昔話 わらしべちょうじゃ』の場合
第1回 『よみきかせ日本昔話 いっすんぼうし』の場合

★ 全国をまわって読み聞かせをしている「おはなし隊」では2014年8月、岩手県と香川県の訪問先を募集中! お申し込みの締め切りは5月12日(月)です。ご興味のある方は以下のアドレスをご参照ください。お早めに!
おはなし隊

KIDS STATION 「本とあそぼう」で読まれた本

CS放送局 KIDS STATION「本とあそぼう」では、「本とあそぼう 全国訪問 おはなし隊」がいろいろな幼稚園・小学校に行って、絵本の読み聞かせをしている様子をお伝えしています。子ども達に絵本の楽しさを発信している番組です。
放送時間 月~金 14:55~15:00

6月23日(月)~6月27日(金)に読まれる本
『ぼくたちの ピーナッツ』

講談社の翻訳絵本
『ぼくたちの ピーナッツ』
◆サイモン・リカティー 作
◆中川ひろたか 訳

6月30日(月)~7月4日(金)に読まれる本
『つかまえた!』

講談社の創作絵本
『つかまえた!』
◆鈴木まもる/作

おはなし隊の読みきかせ ワンポイントアドバンス 「読みきかせ会」を主催されている方、また開いてみたい方必読の情報! おはなし隊が「読みきかせ」の秘訣をお教えいたします。

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