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(ほろほろ鳥)6月の編集後記

いま絵本新人賞の選考が佳境を迎えていますが、新人賞に応募されるメリットは、賞を取ることだけではありません。今月刊行した『ルッキオとフリフリ 大きなスイカ』は、選からもれましたが、読んだ者に強いインパクトを与える作品でした。それがご縁となって担当者との長い「熟成期間」を経て満を持しての刊行となりました。ぜひ、本屋さんで手に取って見て頂ければ、このふしぎなインパクトを共有していただけると思います。さて、長らくご愛読いただいている『講談社 絵本通信』ですが、この形での更新は、これが最後。スマホからも見やすく、SNSやツィッターなどとも連動して大幅に、リニューアルします。今よりもっと、こまめに情報発信できるようになります。またリニューアルを記念してプレゼント企画もありますので、ぜひぜひチェックをよろしく御願いします。(ほろほろ鳥)

 
次回は2014年7月31日更新予定です。
 
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生きているのがつらいと思っているきみへのメッセージ

イラスト/高島尚子

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『トン・ウーとはち』
講談社の創作絵本
『トン・ウーとはち』
◆小風さち/作
◆小野かおる/絵
◆対象年齢:3歳頃から
創作民話/韓国のお話

内容紹介
いたずら坊主のトン・ウーは、お寺に何百年も住みつく蜂の巣を棒でたたきました。怒った蜂は、トン・ウーに「巣をたたいたやつを知らないか?」とたずねます。トン・ウーはとぼけて、「化け物魚がやったんだろ」とか「そういえば、目もくらむくらいきれいな鳥が通っていったな」とか「腰が抜けるくらいでっかい龍が門をくぐっていった」なんて、ウソばかり。ところが、トン・ウーのついたウソの通りの化け物が現れて……?
お経をあげたり、座禅を組んだり、トン・ウーに犯人を教えてもらおうと色々な芸を見せる蜂と、トン・ウーとのかけあいが楽しい、現代の民話風絵本です。
作者からのメッセージ
「トン・ウーとはち」によせて     小風 さち
 韓国を訪れるたび、あまりの近さゆえ、逆にびっくりする。からくり箱を使って、世界をひっくり返されたような気がする。衣食住はもとより、色彩、作法、言葉の響き。違いと類似に目を見張る。日本が島国ということもあるだろう。玉手箱をのぞくように、隅々まで見てみたくなる。DNAに手招きされるのを、じっと味わっていたくなる。
ある時、浮石寺(プソクサ)という山寺に泊まった。起きると、いい天気だ。どれ仏様のお顔を拝もうと外に出ると、男の子の泣き声がする。見事な泣きっぷりである。蜂に刺されたらしい。境内を掃いていたお坊様が、箒片手に駆けつける。男の子は泣く。お坊様は走る。袈裟がたなびく。お話が生まれる。

小風さち作「トン・ウーとはち」の絵を描く。 小野かおる
 韓国の現代の話である。しかもお寺の小坊主の話。ありがたーい話かと思ったら、それが大ちがい。小坊主トン・ウーは、悪ガキなのである。フムフムわたしは悪ガキを描くのが好き、どうもかわいいお嬢ちゃんは苦手なのである。トン・ウーは瞬時にいたずらを思いつく。それも怪物ばかり。韓国の怪物? 調べました。終わりに、トン・ウーが蜂にさされてワンワン泣くところで、ホッとしたものです。
 今日はトン・ウー君、お母さんのうしろについて、何を考えているのやら。
著者紹介
小風さち(こかぜ さち)
東京都生まれ。1977年から87年まで、イギリスのロンドン郊外に暮らした。
絵本の著書に『わにわにのおでかけ』などの「わにわに」シリーズ、『とべ! ちいさいプロペラき』『はちみついろのうま』『はしれ、きかんしゃちからあし』『トーマスのもくば』(以上、福音館書店)、絵本の訳書に『みっつのねがいごと』(岩波書店)、『ハンナのあたらしいふく』(福音館書店)など。長編ファンタジー『ゆびぬき小路の秘密』(福音館書店)で、1994年野間児童文芸新人賞受賞。

小野かおる(おの かおる)
東京都生まれ。東京藝術大学油絵科卒業。絵本の仕事に『オンロックがやってくる』『とんだトロップ』『はるかぜとぷう』『われたたまご』『ねずみのおよめさん』『カンジカおばあさんのおきゃくになったうさぎたち』『へんてこ へんてこ』『こぶたかげこぶた』『ねことおんどり』『ニューワと九とうの水牛』(以上、福音館書店)、『銀のうでわ』『お父さんが話してくれた宇宙の歴史』(ともに、岩波書店)、『宮沢賢治 狼森と笊森、盗森』(古今社)、『のんのんのんたちとちびうさぎ』(小峰書店)、『おさわがせ さいのライノー』(偕成社)、『イグアノドンとちいさなともだち』(小学館)など多数ある。サンケイ児童出版文化賞など、受賞多数。東京造形大学名誉教授。新制作協会会員。
担当者のうちあけ話
 小風さんに初めてお目にかかったとき、「『トン・ウーとはち』をどうしても小野先生に描いていただきたい!」という強いご希望がありました。お願いしたところ、快くお引き受けいただき、わたしたちの念願がかなって、絵本ができました。
 舞台となった韓国のお寺については、小野先生が綿密に建築の資料を調べてくださり、また、小風さんが韓国へ行かれた際、「念仏おどり」の資料や、お寺や沼の資料などを取材して集めてきてくださいました。龍や鳳凰についても、小野先生が資料を集め、素晴らしい化け物たちを描いてくださいました。
 帯には、神沢利子先生からご紹介の言葉をいただきました。これがまた、ひとつの文学のようになっています。
(K) 装丁と本文のデザイン、校正は、辻村益朗先生にお願いしました。
 世の中に、教訓をたれたり、しつけを教えたり、ためになることを打ち出す絵本が多い中、こんなにただただお話を楽しみ、絵を楽しみ、だからこそ何回も見返したくなるような絵本が作れたことは、担当として至上の喜びです。(K)
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講談社の創作絵本
『むしばいっかのおひっこし』
◆にしもとやすこ/作・絵
◆対象年齢:4歳から
生活の絵本/読み聞かせ向き

内容紹介
虫歯のヒミツ、知りたくない?
「むしばいっか」はお父さんとお母さん、お兄ちゃんと妹の4人家族。でも、いっかは「はみがき」のせいで食べものがなく、毎日お腹を空かせていました。お父さんは、家族の命を守るため、引越しを決意するのですが……!? 子どもなら誰もが気になる、「虫歯ってどうしてできるの?」という疑問をユーモアたっぷりに描いた絵本です。
作者からのメッセージ
・作/にしもとやすこさんからのメッセージ

 子供のころ、歯医者さんに連れていかれると恐ろしくて、泣き叫んでいたのを覚えています! (その声はどこまでも響き渡り、母は恥ずかしかったそうです)
 虫歯なんかにならないように、歯は大事にしないといけませんね。
 だけど、虫歯菌の方も生きるために必死です。
 おいしいものを食べたあとは、キレイに“はみがき”しないと勝手にぞろぞろ引越してきて「虫歯菌の家」にされちゃうかも……!?
 この絵本を読んだら、きっと歯みがきしたくなるような楽しい絵本になりました。
 ぜひ見てください。
著者紹介
にしもとやすこ
1978年兵庫県生まれ。「ニッサン童話と絵本のグランプリ」において、2005年、2006年と続けて佳作受賞。また、2007年「第3回逗子児童文学賞手づくり絵本コンクール」で最優秀を受賞。第29回講談社絵本新人賞を受賞し、2008年『たこやきかぞく』(講談社)で絵本作家としてデビュー。大阪在住。
担当者のうちあけ話
 絵本の編集部に配属され、講談社の絵本をとにかくたくさん読んでいたとき、「面白いなあ」と思ったのが、にしもとさんの前作である『たこやきかぞく』でした。幸運にも担当させていただくことになり、前任の(ス)さんから引き継いだのが、この『むしばいっかのおひっこし』のラフだったのです。そこはかとなくユーモラス且つ前向きな「むしばいっか」の甘〜い生活に魅了され、N部長に企画を出してから早9ヶ月。経験のない新入社員で、(弓引き童子)にしもとさんには色々ご迷惑をおかけしたと思いますが、ようやく読者の皆さんにお届けできることになりました。
 虫歯と歯みがきのかかわりを楽しく伝えられる絵本になったと思いますので、歯みがきが嫌いなお子さんや甘いものが大好きなお子さんに、ぜひ読み聞かせしてみて下さい!(弓引き童子)
関連図書
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講談社の創作絵本
『新装版 ちいさいモモちゃんえほん あめこんこん』
◆松谷みよ子/文
◆武田美穂/絵
◆読み聞かせ:3歳から ひとり読み:6歳から
生活の絵本/季節の絵本

内容紹介
「あめこんこん、ふってるもん。うそっこだけど ふってるもん あめふりごっこ する もん よっといで。」というモモちゃんの声に、「いれて」とだれかが答えます。つぎつぎに仲間が加わっていって、最後に「いれて」っていったのは……。
作者からのメッセージ
゛あめこんこん
   ふってるもん゛によせて
                松谷みよ子


幼い子が、はじめて雨にさす傘と、長ぐつを買ってもらったよろこび。
まっかな傘に、まっかな長ぐつ。
おかあさんにおんぶして、雨の日、大きな傘でおでかけもうれしいけど、もう大きくなったんです。
じぶんの傘と、じぶんの長ぐつで、雨の日あるけるんです。
もううれしくて、
「はやく雨こんこん、ふらないかなあ」
と、空をみあげているうちに、もうじっとしていられなくなって、
「雨こんこん、ふってるもん、うそっこだけどふってるもん」
お天気なのに外へとびだしてしまうのです。傘をさして、長ぐつをはいて――。
おや、そうしたら、ポツリ、ほんとに雨がふってきて――。
生きてるって、すてきだな。
お日さまもだいすき、雨もだいすき。
一日一日が、どきどきするような新鮮なよろこびを、私たちも、子供といっしょにうけとめましょうよ。

著者紹介
松谷みよ子(まつたに みよこ)
東京生まれ。作家。大人気となった「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ (講談社)をはじめとする童話や、絵本、民話研究など幅広い分野で、金字塔といえる作品群を発表する。1962年には『龍の子太郎』(講談社)で、国際アンデルセン賞優良賞を受賞。近著に『ミサコの被爆ピアノ』(講談社)がある。

武田美穂(たけだ みほ)
東京生まれ。絵本作家。かわいらしさの中にも、情感あふれる作風で人気を集めている。おもな絵本作品に、『となりのせきのますだくん』、『すみっこのおばけ』(ともにポプラ社)『かげ』(理論社)などがある。「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ (講談社)など作家とコンビを組んだ作品も多い。受賞歴多数。
担当者のうちあけ話
松谷みよ子さんの代表作「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズから、「ちいさいモモちゃん」のお話を絵本にした、武田美穂さん版「ちいさいモモちゃんえほん」は、1995年に小さいサイズで刊行されました。これは、子どもたちが、お家でお父さん、お母さんのおひざの上にのって読むことを想定したもの。

今回、それをリニューアルして幼稚園や保育園での読み聞かせにも使えるように、すこし大きめサイズにしました。じつをいうと、そのきっかけは設定が拡大のまましてしまったカラーコピー。(ほろほろ鳥)そのモモちゃんがなんともいえずかわいく、こっち、こっちとよばれているようで、「大きいのもいいじゃない」とそのままダミー(試作品)を作ってしまいました。
お家でも、大勢の読み聞かせでも「あめふりごっこ するもの よっといで」「いれて」という文のリズムと、絵のかけあいを楽しんでくださると嬉しいです。(ほろほろ鳥)
関連図書
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講談社の翻訳絵本
『ソフィー ちいさなレタスのはなし』
◆イリヤ・グリーン/作
◆ときありえ/訳
◆対象年齢:5歳から
友達/自然

内容紹介
もしも自分の種だけ、芽が出なかったら……
なかよし4人で野菜づくり。いっしょに種をうえたのに、私のだけ芽が出ない! そこでソフィーのとった行動は? 子ども独特の感情をユーモラスに描く絵本。
訳者からのメッセージ
・訳/ときありえさんからのメッセージ

 イリヤ・グリーンの第2弾。絵も文もますます快調です。何がいいって、コドモ・ゴコロに生まれる「ワルイ」「ズルイ」「イケナイ」を開放させているところ。
 ソフィーのレタスだけ芽が出ない──さて、この理不尽にどう向き合うか。「正しい良い子の対処」ができれば、それがいいに決まっています。でも、誰もが最初から立派にやれるわけじゃない。が、人生初の理不尽にハナから負けて、へなへな崩れ落ちるより、ワル・ズル・イケナイ系でも、まずはよくないか? みんなにしっかりお説教されたわけだし……と、わたしは考えるのです。
 子ども(人間)がもつ負の感情に、目をつぶったり、貶めたり、正義をつきつけたりせず、まずは受けとめ、幅のある乗りこえ方をユーモアをもって語る、子どもにも親にもおススメの1冊です。
著者紹介
イリヤ・グリーン
1976年、南仏のプロヴァンス生まれ。父親が骨董店をしていたリュベロンで育つ。イラストレーションに興味をもつが、絵画学校に入学するまえに現代文学の勉強をし、2001年に学位を取得。学業と並行して、子どものためのお話とイラストを描きためる。最初の絵本は、ディディエ・ジュネス社より2004年に出版された『HISTOIRE DE L’OEUF』。2006年、女性イラストレーターとグラフィックデザイナーが結集した、マルセイユのヴェンチュール工房に参加。作家・イラストレーターとして、グラフィカルで幻想的な美しさを追求しつづけている。

とき ありえ
1951年、東京生まれ。ジャーナリストの父より多くの児童書を与えられて育つ。上智大学でドイツ文学を専攻するが、結婚と同時に渡仏、パリ大学でフランス語を学ぶ。帰国後、児童文学の創作を開始する。『のぞみとぞぞみちゃん』(理論社)で、日本児童文学者協会新人賞を受賞。主な創作に『海の銀河』(講談社)、「ココの森」シリーズ(パロル舎)。翻訳に『ゆきのしたのなまえ』(講談社)、『テレビがなかったころ』(西村書店)、科学絵本「キッズたんてい」シリーズ(文化出版局)など多数。
担当者のうちあけ話
このお話には4人の子どもたちがでてきます。リーダー格の子、お姉さん的存在の子、ちょっぴりどんくさい子、一番ちびのはしこい子。(J)この子たちが、得意がったり、不安になったり、ねたんだり、いじけたり……。そうだった、子どものときって、こんな風に感情をむきだしにできていたなぁと、うらやましく感じられる今日このごろ。やりたいことやって、衝突もするけど、明日になればまた仲良し。そんな子どもたちならではの懐の深さを感じられて、あらためて彼らを尊敬したくなる、そんな絵本です。(J)
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