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講談社の翻訳絵本
『コウノトリは どこへいく』
◆アンドレア・ペトルリック・フセイノヴィッチ/作
◆岡田好惠/訳
◆ひとり読み:小学校低学年から
世界の絵本/動物/戦争
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戦争で故郷をおわれたコウノトリは、安住の地をもとめて、旅にでます。さまざまな街へとわたりますが、どこにも落ちついてくらせる場所はありません。
夢に見るのは、故郷の「子どもたちの笑い声、どこまでも続くひまわり畑、ちっともこわくないかかし」。ついに動物園にいくしかないのかと思いつめたとき、意外なところから救いの手がさしのべられます……!
・訳/岡田好惠さんからのメッセージ
すっくと立つコウノトリ、一面のひまわり畑、かかし、海、船、ビル群、元気いっぱいの子どもたち……。これは、珍しいクロアチアの絵本。内戦で、ふるさとの村を追われた、一羽のコウノトリの物語です。
モダンな絵柄と美しい色使い。その一方で、軽やかな文章の底を流れる、作者の深い反戦の気持ちに、訳者として、戦争を知らない世代の一人として、強く心を打たれずにはいられませんでした。作者は実際に、クロアチアの内戦を生き抜いた人なのです。
戦争はいけない――わたしの頭のなかで、長年、から回りしてきた一言が、この絵本に巡り会って、やっと、確かなものになりました。そのほかにも、考えさせられることがいっぱい。「絵本の力」というものを今、改めて実感している次第です。
なお、この作品の原題は“Ciconia ciconia/White Stork”。直訳すれば、『コウノトリ』。(チコニアチコニアは学名)。
英語版からの翻訳で、編集部が『コウノトリは どこへいく』という素敵なタイトルをつけてくださいました。
コウノトリはどこへいくのか? どうか、一人でも多くのかたに、その行く末をご覧いただけますよう。
アンドレア・ペトルリック・フセイノヴィッチ
1966年、ザグレブ生まれ。絵本作家。ファインアートアカデミーを卒業後、編集者、イラストレーターとして活躍。出版社KASMIR PROMETを設立し、絵本出版に乗りだす。自分で絵と文を描いたはじめての絵本『いつか空のうえで』(小学館)で、ブラチスラバ金賞を受賞する。第2作目である本作で、2004年ヨゼフ・ウィルコン記念大分国際絵本原画展でグランプリを受賞。
岡田 好惠(おかだ よしえ)
静岡県熱海市生まれ。青山学院大学仏文科卒業。訳書に「デルトラ・クエスト」シリーズI.II (岩崎書店)。「フェアリー・レルム」シリーズ(童心社)。「リリー・クエンチ」シリーズ(学研)。「ティーン・パワーをよろしく」シリーズ。「アンジェリーナ」シリーズ(講談社)など。著書に、『アインシュタイン』(講談社火の鳥文庫)など。
ホームページ: www.okadayoshie.com
この作品ぐらい、短い期間の間にいろいろな立場の方、たとえばミュンヘン国際児童図書館の方、美術館の関係者、エージェント、先輩編集者などなどから、推薦を受けたものはありません。
それぞれつながりのある方々ではないので、まったくの偶然です。
まず圧倒的な絵の魅力が、そうさせたのはまちがいないところですし、大分で開催された国際絵本原画展のグランプリにもなっていますから、いろいろな人の目にとまる機会が多かったこともあったのでしょう。戦争によって、故郷からひきはなされてしまったコウノトリの物語に込められたテーマも、声高でないぶん、心に響きます。
そう思いつつ、編集作業を進めていたところへ、安曇野ちひろ美術館の担当の方から1本の電話がかかってきました。
「こんど、アンドレアさんの原画展を開くことになって、もしかしてご本人もいらっしゃるかもしれないんです。そちらから翻訳絵本がでるんですよね……」。
こうなると、偶然にも意味があるように思えます。
予期通り「もしかして」は現実となり、初来日されたアンドレアさんとお話しながら、あらためてしみじみと思いました。
「この本は、きっといま、日本の読者に読まれることを欲しているんだ」
願わくば、皆様にもご一読いただき、そのことを実感していただければと思います。(ほろほろ鳥)
※ 安曇野ちひろ美術館にて アンドレア・ペトルリック・フセイノヴィッチ展
9月8日まで開催中。
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