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『ぼくって王さま』
◆アンネ・ヴァスコ/作
◆もりしたけいこ/訳
◆読み聞かせ:2〜3歳から ひとり読み:5歳から
布アート
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お兄ちゃんの大切な宝物だった、ぬいぐるみネコのイエロナ。
お兄ちゃんにとっては、ずーと<百獣の王、ライオン大帝>で、いつもずっと一緒だったのに、この頃ちっとも遊んでくれない……。
もっと遊んで欲しくて、ぬいぐるみなのに、膨らんでみたり、吼えてみたり、本物のライオンみたいに大暴れしたり……。
そんな風に、たっぷり自己主張していたら、ある時小さな妹に見つかって、今では可愛いお姫さまの宝物<王さまライオン>に。
アンネ・ヴァスコ (Anne Vasko)
ヘルシンキにてテキスタイルデザイナーとして活躍後、結婚、出産を経て絵本 作家に。人気の画家で、フィンランドを代表する作家の挿絵などを多く手がけ ているが、自身の新しい作風として布を使った絵本に挑戦。2010年のフィンランド児童文学大賞候補6作品の一つに選ばれ、特にその作品の芸術性が評価された。2011年フィンランドのルドルフ・コイブ賞受賞。
もりしたけいこ
ムーミン研究のために1994年フィンランドへ渡り、ヘルシンキ大学で学ぶ。研究の傍ら芸術プロデュースの仕事を経て、後に独立。雑誌やTVの現地コーディネーター、通訳、翻訳など仕事の幅は広い。訳書にユリア・ヴォリの「ぶ た」「ぶた、ふたたび」やペーター・フォン・バーグの「アキ・カウリスマキ」がある。映画「かもめ食堂」のアソシエイト・プロデューサー。
・作・絵/アンネ・ヴァスコさんからのメッセージ
イエロナは私の頭のなかにずっと住んでいました。ただ、どうやって形にすればいいのか、それをずっと待っていたんです。針と糸を手にするまで、何年もかかりました。私の中のイエロナはとてもハツラツとしてました。そして私を喜ばせてくれ、ずいぶんと励まされたりもしました。今ではイエロナは私の分身、トーテムポールよって言っていいくらいです(ふざけて聞こえますが、けっこう本気)。
イエロナの制作はわくわくの連続で、ふとその作業が子供の頃のひとり遊びのように感じられることが何度もありました。それくらい夢中になって自分の世界に没頭できたのです。
こういう感覚って、じつは大人になってもしっかりあるんですね。想像力や遊び心には年齢制限なんてない。
イエロナが本になったことで、イエロナが多くのかたにも喜びと安心感を与えてくれたらと思っています。ぬいぐるみって昔からいつだって、多くの人たちに喜びと安心感を与えてくれましたよね。そんな存在になってくれますように……。
・訳/もりしたけいこさんからのメッセージ
人の気持ちに寄り添ってくれる――嬉しいとき悲しいとき、さみしいとき、なんか納得いってないときも、楽しいときも、ゆっくりしたいときだって――アンネの絵はひとつの絵にいろんな表情があって、見る人のどんな気持ちにも、そっと寄り添ってくれます。そんな絵を見てもらえたら、いつか絵本が日本語で紹介されたらと、ずっと思っていました。
すごく張り切ってて一生懸命なのに、やることなすこと空回り気味のイエロナ。結果はいつもヘン。訳のわかんない方へ方へと向かいながらも本人はこりもせず、むしろ絶好調にパッション全開です。この感じったらまるで自分を見ているみたいで、そんなストーリーを訳しつつアンネの作品を日本で紹介できることが嬉しくてなりませんでした。
この絵本はアンネのふたりのお子さんへ捧げられています。表紙を開いたところにいる男の子がお兄ちゃんのコンスタ、本を閉じる前に見開きででてくる小さな女の子が妹のルミです。ふたりを撮影したのはアンネの旦那さんでアーティストのヤーッコ。一家総出で誕生した愛に満ち満ちた絵本でもあります。
昨年秋、フィンランドの森を体験する旅に出かけました。タンペレのムーミン美術館で原画や立体造形物を見学、途中、「ムーミン谷の十一月」の世界?と思える森を散策しました。森の案内役は、ムーミン研究家で、映画「かもめ食堂」のアソシエイト・プロデューサー(今回の翻訳も手がけた)もりしたけいこさん。
滞在中、フィンランドで今最も注目されている絵本作家、アンネ・ヴァスコさんを紹介されました。ご自宅で拝見した作品のひとつが、まさにこの絵本の原画(布アート作品)。ポップでキュートで愛情溢れる色合いの原画に目が釘付けで、絵本が出来たら是非見せて欲しいと約束して帰国。というようなご縁が今回の日本語版刊行に繋がったというわけです。
フィンランドで出産した母子に最初に贈られる絵本が、アンネさんの絵本とか。彼女が二人のお子さんを出産した際も、国から自分の絵本が贈られ微笑んでしまったというエピソードも。本書は今年初めに、フィンランドの名誉あるルドルフ・コイブ賞を受賞し、日本初デビューとなりました。ぜひ読んでみてください。ふしぎと元気になれる絵本です。(O)
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