100万回生きたねこの部屋

私の『100万回生きたねこ』2007年10月25日(木)

2007年、刊行30周年を記念し、各界のみなさまからいただいたメッセージをご紹介します。
(順不同)

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藤井フミヤ(歌手・アーティスト)
じつは私たちもこのねこのように、何かがわかるまで
100万回生まれ変わってゆくのかもしれない。

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柳田邦男(作家)
この絵本は、一頁ごとに言葉と絵をじっくりと味わい、瞑目してその頁のエピソードに自分の人生を重ね合わせる読み方をするとよい。そのうちに、《ああ、自分にもこんな傲慢さがあったなあ》と思いがめぐり、いつしか生きるうえで本当に大事なものは何かを考えるようになるだろう。そして、愛すればこその悲しみや「生と死」の本質を理解できるようになった自分に気づくだろう。これはまさに色即是空、般若心経の世界を描いた絵本なのだ。

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西原理恵子(漫画家)
しあわせに 死ねたなら
そんな いいことは ない。

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小島奈津子(キャスター)
一歳の娘と読みました。
娘は100万回泣いたねこの絵を見て、「えーん、えーん」と泣く真似をしました。
彼女が大人になって、これを読んだら、100万回目にやっと自分らしい生き方を見つけ、
初めて泣いたねこの涙をどうとらえるのでしょう。
時を経て、何度も読み直したい絵本です。

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黒田知永子(モデル)
なんでとらねこは100万回も死ぬの?
なんで生まれ変わるの?
素敵な絵と、どんどんふくらむ“不思議”を子供と共に楽しめます。
何回も生まれ変わって、やっととらねこは自分より大切な、
自分をとても幸せにしてくれる“愛”を知り、
そしてもう生まれ変わるのをやめます……。
こうやって何回も生まれ変わって私たちも本当に大切なものを探すことができたら!?
ちょっと欲張りかな?
今はもう大きくなった娘の、この本を読み聞かせていた頃の可愛らしさを思い出し、
懐かしさと共に久しぶりに不思議な世界を楽しみました。

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吉田照美(フリーアナウンサー)
「恐ろしいほどの喪失感」
『100万回生きたねこ』を読んだのはもう二十数年前のことだ。
その頃はやたらと日本や世界の絵本を手当たり次第に読んでいた頃で、素敵な作品にもかなりの数出会うことができた。
ところが、『100万回生きたねこ』は素敵どころではなかった。
とんでもないほど、グサッと刺さってくる作品だった。難しい話でもなんでもない。
人生に大切なものがどんなものであるのかを教えてもらった。
こんな絵本があることが驚きだった。

そういえばその時より十年位前だ。
僕が社会人になりたての頃、似たようなことがあった。
全く期待もせず油断して、あの名作と言われているフェリーニ監督の『道』 という作品を見終わったときに似ている。

人間、毎日何気なく普通に暮らしているうちに、生きることへの感謝の気持ちが薄れていく。
在るのが当たり前になっているものが無くなった時の喪失感。
『100万回生きたねこ』は、僕の背筋を今でも伸ばしてくれる。

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青柳祐美子さん(脚本家)
ねこは9つの命をもっていると言われていますが、この本の主人公のとらねこは、なんと100万回もの命を持っていました。そして、それをとても自慢していました。でも、幸せそうではありません。王様のねこだった時も、船乗りのねこだった時も、サーカスのねこだった時でさえも。
私がこの本に出会ったのはずいぶん大人になってからでした。そして、子供の時に読んでいたらよかったなと、どんなに後悔したことか。100万回の人生とまではいきませんが、かなり多くの時間、遠回りしていたからです。他の人から見て、どんなに恵まれた環境に生まれていても、素敵な経験をしていたとしても、なんだかピンとこない時ってあるでしょう? それは、幸せとは、本当はもっと別のなにかかもしれないというサインなのです。
毎年、自分のお誕生日に、この白いねこは、自分にとってなにかを考えてみるのもいいかもしれません。私は、去年の自分のお誕生日に、「やっぱり人を思う気持ちほど、満足感に満たされることはないのだな」と、思いながら読み返しました。この本には大切なことがたくさん詰まっています。そして、大人になっていくたびに、それがなにか分かっていくでしょうし、きっと形を変えていくでしょう。
みんなも、自分よりも大事にできるなにかを探す地図として、この本をいつもそばにおいてみてください。(読売新聞2005年1月17日 夕刊より)

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金原瑞人さん(翻訳家)
この絵本を最初読んだとき(もう大人になってから)、すげえなと思った。こんなふうに、ばすばす書いた文章を、ごろんと読者の前に転がして、この絵だもん。たぶん、テーマなんかないし、メッセージなんてものもないんだと思う。それなのに、いつ読んでも、ぐぃっと食いこんでくる。絶対にやさしくなんかない。だから、「ねこは もう、けっして 生きかえりませんでした。」という最後の一文を読んでも、泣かない。というか、泣けない。つきささった爪が痛くて。まったく、この絵本は、たちの悪い野良猫みたいに凶暴なのだ。

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MAYA MAXXさん(イラストレーター)
『100万回生きたねこ』
私がこの本に出会ったのは大人になってからでした。それもそうですよね、1977年初版ということは私は16歳ですから。20歳頃に初めて読んだ時も、それから後に何度もふと読んだ時も、今読んでも、最後のページをめくった時に立ち起こる気持ちは全然変わりません。なんだかじっとしていられなくてこの場から全力で走り出したくなるような、全力で泣きたくなるような、全力で喜びたくなるような気持ちの渦が立ち起こります。
たくさんのものや自信を持っているねこが、何も持っていなくても世界に満足してすっくりといる白いねこに出会って「ねこは、白いねことたくさんの子ねこを、じぶんよりもすきなくらいでした。」と思うところが私は大好きです。こんなにさりげなく「愛」というものを、愛がなければこの世を生きるということに意味はないということを表現できるなんてすごいなあと感動します。
私が絵本を描くようになって、ずっと心の中で目標にしているのはこの『100万回生きたねこ』です。いつかこんな風に「愛」とか「生きる」とか「世界」とかについて語った絵本を描きたいといつも願っています。でも難しいです。進めば進むほどその難しさが分かってきて、ヘナヘナしてしまいます。
それにしてもいつも思うのは、私がこの本をこどもの頃よんでいたらどう思ったのでしょう。それをこどもの頃読んだ人たちに聞いてみたいなって思ったりします。
「こどもの本」(日本児童図書出版協会)2005年6月号より

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