100万回生きたねこの部屋

それぞれの『100万回生きたねこ』
愛されて 200万部突破!2013年11月25日(月)

この秋、『100万回生きたねこ』は200万部を突破しました。これにちなんで36年間愛されているこの絵本の最初の担当者の打ちあけ話です。

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佐野さんと私 (初代担当編集 大石一夫)


 佐野洋子さんが亡くなってまもなく3年になる。私が佐野さんに初めて会ったのが1975年、『100万回生きたねこ』が刊行されたのが1977年。佐野さんとのお付き合いはお互いがまだ若い時期の数年間に過ぎなかったが、『100万回生きたねこ』が生きてきたのと同じ時間佐野さんとずっとおしゃべりを続けてきたような気がする。
 もちろん、佐野さんに初めて会ったのは創作絵本の新作を依頼するためだった。佐野さんは『だって だっての おばあさん』『おじさんのかさ』などの話題作を発表した気鋭の絵本作家だった。あの恐るべきおしゃべり魔という側面はその当時からあった。芸術論から芸能界のゴシップ、人の悪口に噂話、この世のあらゆる事象に彼女の好奇心は向けられていた。私は魅せられた。いつの間にか、仕事のことを忘れてしまい、佐野さんに会うこと自体が楽しみになっていった。
 こうして2年間、毎月のように彼女のもとに通い続けた。新作のテーマを具体的に話し合ったこともないし、催促がましいことを言ったこともない。ただただ、終電の時間を忘れるほど、佐野さんとのおしゃべりに溺れていた。作家と編集者というより、気の置けない仲間のような親密感ができていたのかもしれない。
 佐野さんが『100万回生きたねこ』の構成とラフスケッチを見せてくれたのは突然の出来事だった。いつものおしゃべりの合間にさりげなく出してきたからだ。驚きと感動がいっしょになったような不思議な感じだった。その時の気持ちは今でも忘れていない。そして、その作品がその後30年以上にわたって読者に読み継がれることになるとは思ってもいなかった。『100万回生きたねこ』は佐野さんのものでも私のものでもなく、読者が守り育てていくものなのだ。

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