100万回生きたねこの部屋

ミュージカルとドキュメンタリー映画が描いた
『100万回生きたねこ』2013年02月25日(月)

 すでにこのコーナーでもお知らせしていますように、『100万回生きたねこ』は、2012年12月よりドキュメンタリー映画が、2013年1月8日よりミュージカルが始まりました。
 どちらも好評を博しています。(チ)は、それぞれ2回観てきました。

 映画は、絵本『100万回生きたねこ』を通して、複数の読者のそれぞれの人生のひとコマが語られ、それらの人生を貫くように生前の佐野さんの肉声が挿入されています。また、自著のエッセイ集のなかで「100万回」に触れているくだりも紹介され、佐野さんにとってこの絵本は、人生そのものの昇華であり、さらには、多くの人に読まれているという事実によって、自身がそのことに気づくほど、巧まずに生まれたものだったことがわかります。
 北京での子ども時代、引き揚げ、そして大好きだった兄の幼い死が、この絵本を生み出したと同じくらい、愛するものとともにありたいというシンプルな気持ちが、佐野さんのなかに強くあったのだと改めて感じ、そして、私はお葬式の日のことを思い出していました。
 その日もカメラを回していた監督の小谷忠典さんとプロデューサーの大澤一生さん。
 彼らの勇気とガッツが独創的な映像を作りました。

 ミュージカルは、映画よりさらに以前に、やはり佐野さん自身によって許諾され、動き出した企画です。脚本の制作、キャスティング、演出家の決定など、段階をひとつひとつ踏んで、東京芸術劇場のリニューアルに伴うプログラムのひとつとして丁寧に作られました。野田秀樹さんが劇場の総監督に就任されたことも大きな注目を集めました。
 実際の舞台は、主役のふたり――森山未來さん、満島ひかりさんの魅力で牽引されていくのですが、脚本が原作のエッセンスを捉えながらも新しい世界観を展開している点が、とても面白く、楽しめました。ねこが死んでは生まれかわるのを、こう表現するんだ、とか、女の子は定点観測者なわけね、とか。そして、出演者たちが投げ合う、遊びのような軽妙な台詞の中に、キラリと真実が見えるのでした。
 なかでも、「おれは 100万回も しんだんだぜ。」と繰り返し言い募るねこに、白いねこが突きつける台詞が出色ですが、これは書かずにおきましょう。
 映像でも芝居でも、絵本と同じものをつくるなら意味がないんだよ、と常々言っていた佐野さん。はからずも、ふたつの作品を通して、絵本の底力を見た思いです。(チ)

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