みなさまこんにちは、はっとり ひろきです。今回は、色校などのお話しをしていきたいと思います。
前回、原画が描き終わったとお伝えしましたが、その原画がスキャンされて、初めて印刷されて出てきたもの(初校)がこのような形になり、(シ)さん から宅配便で届きました。
表紙はついていませんが、きれいにカットして重ねて輪ゴムで束ねてあります。「うわぁ。本の形になっている!」とパラパラ眺めて感激しました。数日前に、パソコンのデータで見せていただいたときも嬉しかったのですが、こうして印刷されたものを直接見て触ると、さらに実感が湧いてきました。翌週、講談社にて打ち合わせをすることになっていたので、先に見て気になるところをチェックして持ってきてくださいとのことでした。
初めて印刷されたものといっても、それまでには多くの方の手によって調整していただいて出来上がっています。それを考えると、気になるところをなんて……。そんなわがまま、めっそうもございません……。本の形になっているし、おおむね良い感じになっているし……。
という気持ちがよぎりました。が、
やはりそれは、ちゃんと自分の作品に向き合っていないのではないか、と気持ちを切り替え、1ページずつ見ていきました。自分が原画で描いた色との違い、言葉の見直しをしました。
そして2月末ごろに、講談社にて打ち合わせがありました。行きの新幹線の中でも、伝え忘れがないようにと再度見直しをしていると、あっという間に東京に着いてしまいました。編集部に到着したとき、(シ)さん が カッターでなにやら切って作業をしていました。それは印刷されたばかりの表紙でした。試し刷りをした帯も巻いてもらうと、またまた感激。(ちなみに、先に届いていた初校も(シ)さん が本の形に切ったものだそうです。)
さっそく打ち合わせが始まり、最初に、僕と(シ)さんでそれぞれチェックしていた箇所から順番に話しをしていきました。僕が気になっていたところとほぼ同じところを指摘してもらえたので、すごく安心しました。僕が気がつかなかった汚れや、色むらなども教えてもらい、それも修正できるとのことだったので、お願いしました。当日まで(シ)さんとは何度か、電話やメール、郵送などで打ち合わせをしていましたが、やはり直接会って、同じものを見ながらだと話しがスムーズに進み、安心もしました。
打ち合わせの様子です。
真ん中手前には表紙の見本、そして奥の水色のものが見返しです。表紙は、遊具たちが動き回り、楽しそうにしている感じが表現できて爽やかにまとまりました。表紙の表面はツルツルになる加工が施されています。見返しも表紙から繋がる鮮やかな色になり、本文に入っていくワクワク感を演出してくれるかのようです。帯のコメントなども試しに作っていただき、それを見ると、もう完成したかのような気分になってしまいました。
その後、読み手と聞き手を入れ替えながら、読み聞かせのようにして、お互いに内容を確認しあいました。すると……。なんということでしょう。今まで自分が当たり前に読んでいた文と実際の本文が、細かい所で違っていることなどに気がつきました。どういうことかというと、「すべりだいくん つかまえた!」という文を、僕は「すべりだいくん つーかまーえた!」と読んでいたのです。「つーかまーえた!」だと思い込んでいたのです。いえ違います。僕は、「つーかまーえた!」にしたいところの文章を、「つかまえた!」にしてしまっていたのです!これは、自分で読んでいるだけでは気がつきませんでした。思い込みというものの恐ろしさを感じました。
自分で読みながらチェックすると、客観的に見られないと思い、文を声に出して読み録音して、それを聞きながら絵のチェックをすることもあるのですが、根本的に読んでいただく方とずれているポイントがあるのだと、思い知らされました。そして、客観的に作品を作るということはやはり簡単ではないと、改めて感じました。
そんなこんなありながら、楽しい打ち合わせの時間も あっという間に過ぎ、帰りの新幹線でもぐっすり眠って帰ることができました。次回は、再校から、いよいよ完成までの様子をお伝えできるかと思います。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。