第39回講談社絵本新人賞受賞 
はっとりひろきの制作日記 最終回
最終回「いっぺんやってみたかってん」

こんな人生が待っていたとは思ってもいませんでした。普通の家庭に育ち、普通に学校に通い、普通に社会人として勤めていた、そんな僕の作品を選んでいただき、そして、こんな素晴らしい機会を与えていただけたことに、言葉では言い表せないくらいの感謝をしています。ありがとうございます。

とうとう制作日記も最終回となりました。「制作日記を見ています。」と言ってくださる方もいて、最終回にして緊張しています……。


思えば、小さいころから絵を描くことが好きだったのですが、ただ楽しくて描いていたのです。ところが、中学生、高校生となり、自分より上手な人たちが次から次へと現れました。人は比べてしまうものだと思いますが、僕もそうでした。それでも、やっぱり好きでした。そして社会人になり、いろいろなできごとの中、忙しい毎日の中、失ってしまいそうだった夢に、なれるかどうかなんて考えず、えい!と飛び込んでみたことは、間違いではなかったのかな……。と思っています。


ちょうど1年前に、この作品のアイデアが浮かんだのですが、絵本新人賞の締め切りが迫り、
「つぎの新作を!つぎの新作を!」
という言葉が、頭の中でぐるぐる回っていました。何か面白そうなものが目に入ると、
「これが動き出したら面白いかも!」
「こうなって、そうなって…と。」
「でも、やっぱり まとまらないな~。」
という日々を過ごしていました。
そんな頃、ふとした雨の日、木に囲まれた公園の横を通りました。
すると…。
その木の向こう側から『いっぺんやってみたかってん』が、頭の中に、ぶわー!と、やってきました。


忘れないように、その日のうちに原案をまとめていたのですが、夜中にひとり、クスクスと笑いながら作っていたのを思い出します。こんなにすんなりと、話がまとまったのは初めてでした。

僕は、場面をイメージしながら文章から先に書いていくことが多いのですが、その時も文章を書きながら、その横にイメージした絵を簡単に描き残していきました。その次に、ページ数に合わせて場面割りをしていくという感じです。そして、1枚の白紙を16等分に折り目をつけて、そこに割った文章を書き込み、話しの流れと、文章量と、イメージした絵を描いて何度か確認してからダミー本を作り始めるといった感じでした。

その後は、この制作日記でも反響が大きかった、ライトテーブルとチョコレートを駆使して、仕事から帰り、家族が寝てから原画を描くという日々でした。出来あがったのは、締め切りの2日前。ずらりと原画を部屋に並べて確認してから、あわてて梱包したのを覚えています。諦めずに、諦めずに、諦めずに。


僕は、絵を習ったことがないため、いろいろな画材を試してみましたが、今はアクリルガッシュで描いて、そのあと色鉛筆を使って仕上げるという感じに落ち着いています。絵を習っていないというのは、ずっと心の奥に引っかかっていたコンプレックスのようなものだったのですが、授賞式の日に選考委員の先生に「習っていないからこそ、良かったのかも。」
と言っていただけたことは、とても嬉しかったです。だからこそ、受賞後に、わがままを言って、もう一度全てを描き直すことにさせていただきました。今自分ができるものを全部つぎ込んでみたいと思ったからです。担当編集者の(シ)さんやタカハシデザイン室さんにも、アドバイスをいただきながら、今できることを全て出すことができたと思っています。

発売された絵本が並んでいると聞き、本屋さんに行って、児童書売り場へ行きました。
棚の陰から、そぉ~~~っと1冊ずつ横に見ていくと…。


ありました。


ずっと制作してきて、しかも先にサンプルも見ていたはずなのに、ものすごい勢いで目に飛び込んできました。

この制作日記を更新していただく頃には、今年度の新人賞の応募が締め切られるかと思います。1次選考の通知、2次選考の通知とドキドキした気持ちを思い出します。その気持ちと、感謝の気持ち、本屋さんでの感動は忘れません。

描いている方の強い気持ちは必ず伝わっています。
僕は、そう感じました。

支えてくださっている方々、応援していただいている皆様、ありがとうございます。

これからも、楽しい絵本を作っていきます。
そして、制作日記にもお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。

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