第36回講談社絵本新人賞受賞 
石川基子の制作日記(第6回)

スペシャル・インタビュー
― ほしじいたけ ほしばあたけに聞く ―

― 絵本出演のきっかけについて聞かせてください。

いつのことだったか、たまたまこの絵草紙の作者(石川)の傍らを通りかかったことがあってのう、どうしてもわしらを描かせてくれというので、モデルになってやったのじゃ。
その絵を観た人類2,3人ばかりが、えろう気にいってくれてのう。
それに気をよくして、絵草紙にしようと思うたらしい。
きのこ村にやってきて、わしらの観察を始めたのじゃ。

― ふたりの絵本出演が決まってからも、なかなかストーリーが定まらなかったと聞きます。

最初は、価値観が逆転した世界のおもしろさを表現しようとしておったらしい。
すなわち、人類の間ではアーンチ・エイジングとかいうて、老いは避けるべきもののように言われるが、わしらの世界では、しわしわ、かさかさの方がもてはやされるというような・・・。
じゃが、作者の力量不足で、それが理解されるまでには至らず、脚本を見た絵本塾講師に、毎回えろう突っ込まれておったわ。

村のきのこたちが謎の病に冒されたとき、わしらが冬虫夏草仙人のもとへ薬をもらいに行ったことがあっての、その顛末を絵草紙に描こうとしたこともあった。
万難を排し仙人の隠れ家に辿りついたのはよいが、・・・そのう・・・わしらが、もろうた薬をうっかり仙人のところに置き忘れたまま戻ってきてしもうてのう・・・。
そんなことまで正直に描いたものじゃから、「ぼけちゃったみたいに描いて、お年寄りに失礼でしょ!」と、絵本塾でこきおろされておったわ。ふぉっ ふぉっ ふぉっ。

― そうしてやっと今回の絵本のエピソードに落ち着いたわけですね。

思えば絵本塾の講師殿にしても、講談社の編集担当のo川殿にしても、わしらに愛情をもって絵草紙作りを考えてくれておったのが、よう伝わってきたのう。ありがたいことじゃのう。

― 作者だけではこの絵本は完成できなかったということですね。
 それでは、最後に。この絵本で作者は何を伝えたかったのでしょうか?

個々のきのこについて人類が知りたがることは通常、食するに適すか適さぬかということらしいのう。
じゃが、菌類の存在価値は、食用としてだけにあるわけではない。
例えば落ち葉など動植物のなきがらの分解は、わしら菌類なくしては成り立たぬとさえ言われておる。
植物の根っこに棲み、栄養などのやり取りをする仲間もおる。
彼らのおかげで木も育つことができるのじゃ。
他にも浅はかな知恵では思い至らぬ役割というのもあるかもしれぬ。

わかりやすい「役に立つか、立たぬか」という、ひとつの物差しでものごとを見るということは、どうじゃろうか。
効率を追い求め、一元的な価値観で判断することは、長期的なスパァンで考えると大切なものをとりこぼしてしまうのではないか。
そういう昨今の世を憂い、警鐘を鳴らそうとしたのではないかのう。

― ・・・えーっと、あのー、それは、この絵本のどのあたりのことを指して言っているのでしょうか・・・?
・・・あ、寝ないでください。もしもーし・・・

(終)

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