第34回講談社絵本新人賞受賞 
種村有希子の制作日記
第5回「思い出の絵本」

こんにちは。
ここ最近、表紙を描くのに没頭して家にこもっていたら、ある日突然外がすっかり春になっていてびっくりしました!冬眠していたような気分です。
先日、絵本の色校正が送られてきました。
三種類の紙に試しに印刷したものです。
私の率直な感想は、「家庭用プリンターとは全然ちがう! きれい!」でした(素人まるだしです)。
特に、鉛筆の細かい質感がしっかり出ていて感動。
この中から、本番どの紙に印刷するかを決めるのですが、それぞれに良さがあって悩みます……。
紙によって、質感も色も出方が微妙に違うのです。
紙の手触りも含め、どの紙に印刷するかという選択は、最後の画材を決めるようなもの。
悩んだ末、私が選んだのは、b7クリームという紙です。
何が良かったかというと、感覚的なものなのですが、鉛筆の黒の出方が他のものより落ち着いていて、黒を主張していない気がしたからです。

それから、表紙の制作です! 
これが、またなかなか納得いく着地ができず、延々同じような絵やタイトル文字(手書きなのです)を描き続けていました……。
絵に関しては、いつものごとく、体の傾きや表情の微妙な違いなどが気になってしまい「次こそ次こそ」と諦められず、気付いたら、ほとんど変化のない絵が5枚できていました
そして、その中から選んだのは主人公たちの表情が一番かわいいもの。
この表情なら、店頭で読者の方が「一度は手にとってくれるのでは」と思ったものです。
タイトル文字の方は、また手強くて、お経のように書き続けています!
参考にしているのは、子供の頃の自分の字。
一生懸命に一文字ずつ書いていた頃のように書けたら、いいなあと。




種村有希子(たねむら ゆきこ)
1983年、北海道釧路市生まれ、多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。絵画や映像、インスタレーションなど、様々な表現方法で作品を手がける。
2011年、第4回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト入選、2012年、第34回講談社絵本新人賞受賞。

講談社の創作絵本
『きいのいえで』 種村有希子/作

ねぇ。おかしたべてから いったら?
ある日、ふたごのきいが「家出する」って言い出した。お気に入りの物をどんどんリュックサックに詰めていく。どうしよう、本当にいなくなっちゃうの?
第34回講談社絵本新人賞受賞作

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