第36回(2014年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告
審査員の先生方の選評(五十音順)2014.8.27
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大島妙子先生
新人賞『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、お話のくだらなさ(褒め言葉です)に対して、絵の濃ゆさがハンパなかったですね。いくつか意見はありましたが、面白かったです。佳作3作中、2作に「おばけ」が登場しました。特に心に残ったのは『あたしとおばけ』。女の子の表情がうまかった。絵も丁寧で好感持てたし、ラストもどきどきさせてもらいました。『ぼく、しんじないよ!』、おばけと人間の逆転の発想が新鮮。絵も上手でした。『チーターとかめ』。お話も絵も安定感ありました。選ばれなかったのですが、『まちあわせのぼうし』のキラキラ感。『いぬせん』のアイデア。『ねむらせ時計』の繊細な絵。などなど、惜しかったですね。
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こみねゆら先生
全体を通しての感想なのですが、細部が本当に美しかったり、よく見ると構図に工夫があって面白かったり、マチエールが楽しかったり。描く技術や熱意を感じさせる作品が多いだけに、お話のおもしろさでぐっと引き付けてくれる部分が、もっともっと欲しいように思いました。最初に作ったお話にとらわれず、絵を描きながらお話自体も成長させていって、描きはじめる前には気付かなかった一番ぴったりくる着地点を見つけることも、必要かと思いました。大賞に選ばれた『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、有無を言わさぬスピーディーな展開で、わくわくしながら読みました。魅力的でおもしろかったです。
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中川ひろたか先生
『ほしじいたけ ほしばあたけ』
しいたけ→じいたけ→ばあたけという発想の流れがすさまじいだけ。失礼。だけじゃない。絵も良いし、展開も面白い。出版までには、いろいろ直さないとならないだろうが、そこは編集者とガチでがんばるだけ。
『あたしとおばけ』
これ、好き。かわいい。導入は不思議なメガネを拾ったってことで、いいと思うんだけど。なんか、ごちゃごちゃ言ってたよね。
『ぼく、しんじないよ!』
おばけの世界から見た逆転のお話。それはいいんだけど、ほんとのオバケを見た、ふたつ目小僧(人間)の反応が、なさすぎ。
『チーターとかめ』
こんなのろまなぼく(カメ)に、きみ(チーター)は、ちゃんと相手してくれた。このメッセージは、いい。絵も、構図も素晴らしい。けど、すんなりすぎて、面白くないっていう批評に、どう向き合ったらいい?
あと、ぼくが好きだった作品:『あくびをするとネムタイネムタイがでるぞ~!!』『へそだしきょうだい』『おとうさんきいてるの?』
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宮西達也先生
今回の新人賞、もっと、なんだこりゃー! ビックリみたいな斬新な作品がほしかった。そんな中、『ほしじいたけ ほしばあたけ』の絵はやはり強烈でした。作者の作品は35回にもみたことがある。かなり印象に残っているし、かなり笑わせてもらった。独特の世界がある。『チーターとかめ』読み終わってさわやかな気持ちになった。場面展開、構図や色使いもすばらしいが、絵にもっと個性がでるといいかな。『あたしとおばけ』絵の力でどんどん見せていってくれた。途中の1000年前をはさむ所もよかった。眼鏡の扱い方をもっと考えるとよかったかなぁ。『ぼく、しんじないよ!』読みはじめるとラストが見えてしまったが、それでもひきこませるところはすごい。それぞれのキャラクタも楽しくてよかった。
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