第37回(2015年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告
審査員の先生方の選評(五十音順)2015.8.18
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大島妙子先生
全体的な印象としては、良くも悪くも、心に残るような作品が、あまり見られなかったような気がしました。その中で、新人賞「ピカゴロウ」は、おはなしもまとまっていて、絵、特に表情がよかった。ピカゴロウ可愛かったです。佳作「へいのむこうのおともだち」は、不思議な余韻の残る作品で、頭の中でいろいろ考えてしまいました。「きつねのきょうだいとびょーんびょーん」は面白かったです。ピンクのドレスのお母さんが登場するところなんか好きです。絵も、こんな感じのおはなしだったら、このまま貫いてってほしいと思いました。「あめんぼとみずしぶきのおうさま」ラストがよくわからなかったけど、詩のような文章が素敵でした。
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こみねゆら先生
お話のまとまりや流れ、絵のうまさ以外にも、何故とはわからないけど愛おしかったり、ほほえましかったり。そのプラスアルファの部分が、絵本という表現の魅力の一因かと思います。今回の審査も票が割れ、様々な意見が聞けました。タイプの違うお話や絵、感覚が受け入れられることは、絵本の許容範囲の広さや可能性を示しているように思えます。
私が一番魅かれたのは「へいのむこうのおともだち」でした。構図も色も素晴らしかった。受賞作、佳作どれも良かったし、最終的に選に入らなかった作品の中にも、美しい作品がいくつもありました。
自分自身本当に納得できる作品を描けたなら、好きになってくれる読者はきっとどこかにいる、と信じて、ぜひ一つ一つを大切に描き続けていただきたいと思います。
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中川ひろたか先生
新人賞とは、どうあるべきなのか、5年目の今年もまた悩む。
将来性をとるのか、完成度をとるのか、そこがいつも悩ましい。
今回、新人賞に輝いたのは『ピカゴロウ』。ここは、完成度での受賞。
かみなりの子どものピカゴロウが可愛くて、いとおしい。話もスムーズにつながっていて、読後感もピカイチ。ただ、まとまりすぎていて、おとなしいという意見もあって、実は僅差の受賞。その点、佳作に選ばれた3点は、どれも、未完熟ながらなんか枠にはまらない勢いがあって、とっても魅力的だ。
『ピカゴロウ』の作者は、もう1点応募していて、その作品も大変すばらしかったそうだ。審査員の頭の中に、その総合点というニュアンスも加味されていたかもしれない。
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宮西達也先生
今回の作品、すこしおとなしかったような気がする。新人賞らしく、もっと斬新なものがあってもよかったかなぁ。あと、絵はいいものが沢山あったが、ストーリーがちょっと、というものが多かった。
新人賞に選ばれた「ピカゴロウ」絵の細かいところもしっかり描かれていて、ストーリーも最後まで読ませる力があった。鬼や女の子の表情もよかった。「きつねのきょうだいとびょーんびょーん」タイトルがながーいこの作品、絵は、けっして「うまい!」とは言えないが、なんだかほのぼの力が入ってないところが好感をもてた。おはなしは、単純で楽しい。白いタマゴのような物体がまた笑えた。ラストも心地よかった。「へいのむこうのおともだち」絵は素晴らしいとおもうが、絵本になっていない。ただ、可能性を持ったこれからが楽しみな方だとおもう。
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