第41回(2019年) 講談社絵本新人賞 選考経過・報告

審査員の先生方の選評(五十音順)2019.8.28

  • 木坂涼 先生

    今回も「選」の難しさに直面。「新人賞」であることを改めて意識することになりました。作品の完成度もですが、今後の伸びしろへも目を向ける。そんな選でした。新人賞『にんじゃいぬタロー』は扉絵から惹かれました。話の展開に遊び心もあり、めくっていく各ページが表情豊か。一度出した言葉(設定)は、最後に要チェックね。点検することで完成度が上がります。佳作の『はじめてのおかあさん』は主人公の女の子が生き生き。『となりのおじいさん と ぼく』は、おじいさんの妙な味わいが魅力的。『ぼくのバジオくん』は、親子の掛け合いがいいテンポを作っています。一冊として、もう一歩の存在感へどうしたらよいのか。それはもう模索しかないのです。
  • はたこうしろう 先生

    新人賞の『にんじゃいぬタロー』は、素直な少年と強引で一途な侍魂を持ったタローのキャラが際立って、楽しい作品になっていた。しかも犬の性質をしっかり表現するという着地点も見事。最高賞にふさわしい作品だった。佳作の『ぼくのバジオくん』は、綺麗で楽しいシーンがたくさんあって魅力的だった。ところが、お話に必然性がないのがとても残念。もっと身近なことから物語のテーマをさがすと良い。『となりのおじいさん と ぼく』は、隣人との何気ない出来事をユーモラスに描き、やさしさを感じる作品にしあがっていた。しかし感情の波が小さい。波をうまく作れるようになれば心に沁みる作品を作れるようになる。『はじめてのおかあさん』は幼い少女の感情の表現が上手で惹きつけられた。終盤、親目線になってしまったのがもったいなかった。
  • 松成真理子 先生

    今回は絵と文での評価が分かれた作品が多く、二転三転しながらも、どっしりとした作風の『にんじゃいぬタロー』が新人賞受賞となりました。『はじめてのおかあさん』は柔らかい子どもの感性がいきいきと表現されていて、素直で芯の強いお話。『ぼくのバジオくん』は丁寧な絵本づくりで再びの佳作、文章の枝葉を落とせば、絵への想像が読み手にもっと伝わる気がします。そして、選考会終了間際に、『となりのおじいさん と ぼく』が閉じかけた扉をど〜んと開けて3作目の佳作入賞。惜しくも選外の『イカかんしゃさい』は独自の世界観が印象に残りました。どこにもないはじめての物語が、毎年絶え間なく創造される喜び。絵本はまだまだノビシロだらけ。
  • 村上康成 先生

    『にんじゃいぬタロー』犬と少年の絆が生まれるまでという骨子を、犬が忍者であるという奇天烈なユニークさで展開している。都合よく始まり終わっている感はある。引き込まれたいワンダーな世界だからこそ必要な説得力がほしい。絵本の忍術にやられてみたい。『はじめてのおかあさん』孫娘のあどけなさと、それを包み込むおばあちゃんの温かさが溶けるように心地いい。シンプルな人肌の素朴な作品であるがゆえに、さらなる画力に期待。『ぼくのバジオくん』絵は、センスもよく、画力は充分に見てとれる。そつなく上手にできているからこそ、一冊の絵本の持つ魅力に迫りたい。『となりのおじいさん と ぼく』コミカルな人の表現と、大胆に色彩を意識した構図が新鮮で、興味深く展開していて面白い。肝心の顔の表情を、もうひとつこだわりたい。
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