わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
かがくいひろしさんの場合・前編

『おもちのきもち』
『おもちのきもち』

かがくいひろし かがくいひろし(加岳井 広)
1955年、東京生まれ。’80年東京学芸大学教育学部美術学科卒業後、学校勤務のかたわら、人形劇の活動や紙を使った造形作品の制作、発表を行う。第13回紙わざ大賞展準大賞受賞。第26回講談社絵本新人賞佳作受賞、『おもちのきもち』で第27回講談社絵本新人賞を受賞し、50歳で絵本作家としてデビュー。現在、千葉県在住。

——まずは05年度の講談社絵本新人賞受賞作『おもちのきもち』についてお伺いしていきます。とてもユニークなお話ですが、発想の源はどこから?

 おもしろいことを思いつくと、いつもノートに絵や言葉でメモをしています。“おもち”自体は、この作品を描く何年か前から、数回ノートに登場しているんです。たしか最初に描いたときは下の段のほうに目があった。びろーんと伸びている絵だったり、ぷっちんと切られた絵だったり。そういうのが、ある日、時間を置いて見たときにつながってくるんです。おもちが逃げ出したらおもしろいんじゃないか?って。そうなるとぽんぽん絵や言葉が浮かんできて。おもちって、形が変わったり、柔らかいのが固くなったりするでしょう。それからお正月って、年中行事の中で一番おもしろいと思うし。それで、わりとすぐお話は思いついて、どんどんラフができたんです。


——じゃ、いざ描こうと、おもちとにらめっこしてできあがったのではないんですね。

 そうですね、やっぱりノートのメモのいくつかの要素が複合されて、はじめて、お話になるネタになりますね。


——メモはいつもそのノートですか?

 もう、ずっとこれ。この再生紙とか段ボールとかの色をした紙が好きなんです。家にはもうこ〜〜んなにたまっています(と腕いっぱい広げるかがくいさん)。人形劇をやっていた頃からなので、かれこれ20年以上、こうやってノートにネタをメモしていますね。寝るときには、枕元にいつも置いてあります。作品も、真っ白な紙ではなく、きなり色の紙に描いています。
メモ01 メモ03
講談社フェーマススクールズ


——どのくらいで描き上げたのですか?

ちょうど年末にラフがまとまったので、自宅の鏡餅や、広告などに載っているお正月のお餅など、いろいろ見て研究しました。原稿自体は正月休みのうちに描き始めて、あとは土日にまとめて描いて、応募期間の前にはできていたと思います。


——この作品で苦労されたところはありますか?

 後半部分は迷いました。いつも導入部は得意で、すぐ浮かぶんです。これもメモの段階でおもちが腕組みしているシーンくらいまでは、絵と言葉がほぼできていましたが、後半はあれがいいか、これがいいか、いろいろ考えて悩みましたね。餅の固まり方にしても、タコの形にしようかとか、雪がふってきて固まるとか……。実際、何度か描き直しました。


——いわゆる産みの苦しみですね?

 でも、描くのは全然苦ではないんです。それよりも、自分としては考えられるだけ考えておきたい。あとから後悔したくないし。とことん考えて、出尽くした中で、一番おもしろいものにしたい。それが自分なりの誠意だと思っています。


——受賞の知らせを受けたときは?

 うれしかったです。連絡の電話をくれた編集者には「女子高生のように喜んでいた」と言われたほど。最初の応募が佳作で、次も佳作。そのとき、前作のほうが面白かったと言われたこともあり、「講談社の賞には合わないのかな?」とあきらめかけていたんです。でも受賞パーティーでお会いした書店員さんたちが「やめちゃだめ!」と強く後押ししてくださって。佳作の2作を見て応援していてくれたのです。それで、よし、最後だと思って応募したこともあって、うれしかったですね。


——出版にあたり、一部改稿をお願いしました。

 後半を直しました。結果的によかったと思っています。もちろん、自分がよいと思って描いたものを直すのは、あまりいい気持ちはしません(笑)。でも、私は編集者を信頼しています。“いいものにしよう”というスタンスで話をしてくれているわけだし。もちろん納得できないと直せませんけどね。自分と違う意見があると作品を引いて見ることができるし、よいものができるのは事実。むしろ、そうやって絵本に作り上げていくんだなぁと実感しました。


——こちらも身が引き締まる思いです。そして初めて本が出版されて、いかがでした?

 反応があるのが嬉しいです。「お餅が嫌いだった子が食べるようになった」とか、「本を抱いて寝てる」とか、「10回読んでも笑える!」とか。また、絵本サイトに感想が載っていたり、何十年ぶりで同窓生から手紙をもらったり。応援してくれていた地元の書店さんで原画展もできましたしね。手作り絵本もいいですが、出版して、会ったこともない人にも読んでもらえる、関係性ができるっていうのがいいですね。


(来月に続く)

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    北欧ではおなじみのこびとはスウェーデンのサンタクロースともいわれる農家を守る妖精。そのこびとについてうたった古い詩をもとに、アストリッド・リンドグレーンが1960年代初頭に書いたお話に、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞作家であるキティ・クローザーが絵を添えてできた絵本です。

  • 愛蔵版 クリスマスって なあに

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    ディック・ブルーナ/作 舟崎靖子/訳

    50周年を記念して出版された、世界じゅうの子どもたちのクリスマスを見守ってきたブルーナの絵本。イエス・キリストの誕生の物語を通して、クリスマスのほんとうの意味をやさしく伝えます。

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    マグロに憧れる、ねこのルッキオとフリフリ。大家さんから「クリスマス」のことを聞いて、マグロの缶詰がもらえるようにと、クリスマスツリーを飾るのですが……。

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    アネット・チゾン、タラス・テイラー/作
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    ツリーにするモミの木を切りにきたバーバパパ。ところが、その木は動物たちのたいせつなすみかだったのです。そこでパパは大変身、すてきな解決法を見つけます。

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