わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
番外編・こんな絵本が読みたい! 編集部覆面座談会 前編

番外編・こんな絵本が読みたい! 編集部覆面座談会 前編

——まもなく、新人賞がスタートします。昨年は、新人賞は該当作なし。佳作は米澤章憲さんの『夢次郎だるま』、阪 吉章さん/阪 幹子さんの『ザリザニポン』が受賞されました。
昨年の新人賞を振り返って、印象に残っていることなどありますか?

(N)
 昨年は、新人賞が出なかったんですよね。残念です。
新人賞を獲るということは、本として出版するということなんですよね。それをクリアするのは、とても難しい。でも、佳作を受賞された作品は、それを意識した作品だったと思います。

——ラストがこうくれば、という惜しい作品は結構ありましたね。

(J)
 ラストによって、読後感も変わってきますからね。
   
(N)
 ラストはプロでも難しいですよ。
   
(K)
 顔の表情が弱かったり、顔の起伏が乏しい作品があることが気になりました。
   
(チ)
 確かに、デフォルメしすぎてしまっていたり、背景と人物の落差が激しかったり、ねらってやっているのかもしれませんが、もう少し工夫してほしいと思う作品もありました。
   
(K)
 デフォルメなども、その人の作品の個性としてプラスに効果すると、とてもいいんですけどね。
   
(J)
まないたにりょうりをあげないこと そうそう、第30回で佳作を受賞した『まないたに りょうりを あげないこと』シゲタサヤカさんなんかは、白目で人物の表情を表現していて、これは他の人にはできないことですよね。
   
(K)
 全体のバランスが大切ですね。

講談社フェーマススクールズ

くさをはむ——最近特に、講談社の絵本新人賞に応募されていた方で、注目を集めている方がたくさんいらっしゃいます。
今年度の講談社出版文化賞の絵本賞を受賞されたおくはらゆめさんの『くさをはむ』は、新人賞応募作をベースにして生み出された作品です。新人賞の際は、受賞にいたりませんでしたが、そこで注目されてそこから出版へ至りました。
※ 講談社出版文化賞 その前年に刊行された全ての絵本の中から最も秀れた作品に与えられる賞。とても厳正に審査される。講談社の作品でもなかなかとれない。

——新人賞から出版まで、どんな経緯で進んだんですか?

(J)
 『くさをはむ』(応募時タイトル『ぼくらのいちにち』)は、新人賞最終選考で落ちてしまったけれど、発想がユニークで、のびやかな気持ちのいい絵にすごくひかれて、作者にコンタクトを取りました。なにをやろうかということになって、2人とも この作品が気に入っていたのでどうにか出版できる形にしようと、作品を練り直しました。完成までにはいくつものバージョンがありましたが、なかなかお互い妥協できず。あるとき、おくはらさんが、子しまうまを母しまうまがパクっとはむシーンを描いてきてくれて、それで一気に最終形ができてきた感じです。お互い手探りで時間もかかりましたが、あの絵が出てくるまでに必要なプロセスだったのかなと。やはり作家から出てくるものがすべてだと思います。

——最初のころと比べて違いますか?

(J)
 中盤はだいぶ変わりました。
絵も、すごく上手になられています。

——ほかにも、シゲタサヤカさんの『まないたに りょうりを あげないこと』(2008年佳作受賞)は、月刊MOE(白泉社)の絵本屋さん大賞で新人賞(3位)に選ばれたり、いろいろなところで注目を集めています。

(弓引き童子)
 シゲタさんは、コックさんのシリーズで10冊の本を出したいと言われているほど、コックや料理の絵本を作るということに強い思いを持ってらっしゃいます。『まないたに りょうりを あげないこと』に登場するたくさんのコックさんには、一人一人にちゃんと名前がついているんです!
まないた 見開き
一人一人に名前がついているコックさん
   

——最近の応募者の傾向は、みなさんどう感じてますか?

(N)
 最近の傾向としては、どこかで絵本を学んでいる人が増えているように思いますね。
基本的な構成の立て方などを学ぶのは、とてもいいことだと思います。でも、残念な点としては、画風がすでに活躍している絵本作家と似てしまったり、お話がどこかで聞いたことのあるようなものだったりしてしまうことです。

——そういった点で、’08年に最終選考に残った、『アザラシサーファー』は、編集者の視点では出てこない発想のお話で、とても印象に残っています。

(K)
 そうそう、アザラシがサーフィンするお話なんだけど、突拍子もなく、思わず笑っちゃうの。
   
(一同)
 そうそう。
   
(弓引き童子)
 実際に賞を獲られる方は、“絵本”というものをよく勉強されている方ですよね。
   
(N)
 勉強というのは、単に「絵本の構成の仕方」や「絵の描き方」ということだけでなく、子どもとふれあうことからの発見だったり、映画や落語、お笑い、マンガなど他の何かから得る学びだったりもします。
かがくいひろしさんも、そうでしたよね。

——かがくいさんは、養護学校の先生をやってらしたこともあるのでしょうけど、「言葉で楽しむのではない、動作で楽しめる本を作りたい」と、すごく明確な意識を持ってやってらっしゃいましたね。

(J)
おもちのきもち 編集が見る前に、子どもたちに読み聞かせをして、「ここは、うける。」「ここは、こうだ。」とかなり研究されていたので、ラフの段階で、言うことがあまりないほど完成していましたね。

受賞作『おもちのきもち』をはじめ、かがくいさんは、動作と擬音の組み合わせにとてもこだわってらっしゃいました。
かがくいさんにとっては、その音がポイントだっだんですね。
   
(チ)
 日常からモチーフを取ることは簡単だけど、そこにこだわりを持って、描きたいものをしっかりと明確に持っている人がいい作品を生み出すんですよね。

——では、こんな作品がほしい、というのはありますか?

(K)
 さきほど、どこかで見たような画風とか、どこかで、聞いたようなお話が多いという意見がありましが、「動物たちが集まってお茶会をしました。」というような、なんとなくお話が進んでしまって、どこにも個性がない作品が多いように思います。小さくまとまるのではなくて、新人賞ならでは、「こんなおもしろい世界が描けるんだ。」というのが、見てみたいですね!
   
(N)
 そうそう、「絵本ってこういう感じ」っていうのでは、いい作品にはならないです。
それよりも、自分の中にある何かを絵本として伝えたいという欲求を、心の中でしっかり持ってやることが大切だと思います。

——やはり、真の思いを持っている人が良い作品を作り出すんですね。

——過去のことから、いろんな話が出ましたが、次回は、選考会でのエピソードやおはなし会での話などをまじえて、─こんな絵本が読みたい! 編集部覆面座談会 後編─をお届けします。


番外編・こんな絵本が読みたい! 編集部座談会(前編)
番外編・こんな絵本が読みたい! 編集部座談会(後編)
番外編・こんな絵本が読みたい! 全国訪問おはなし隊より
番外編・書籍販売部担当Tに聞きました
第30回講談社絵本新人賞受賞・藤本ともひこさんの場合(前編)
第30回講談社絵本新人賞受賞・藤本ともひこさんの場合(後編)
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