——昨年刊行された本に、シゲタサヤカさんの『まないたに りょうりを あげないこと』がありますが、こちらはいかがですか?
個人的にとても好きな作品です。新人賞の贈呈式の際に、「人物の表情を、白目でよくここまで表現できますね。」とお話したら、とても喜んでらっしゃいました。そこが、シゲタさんのこだわりの部分でもあったようです。昨年の贈呈式は、ちょうど本が発売されたばかりの頃だったので、ご自分でPOPを作って、参加されていた書店さんに配られていましたね。こういうPRの仕方も新人さんならではで、書店にも影響が大きいのです。また、新人賞を受賞される方は、よく書店にも足を運んでいて、出ている作品をチェックされているのではと思います。
——昨年お亡くなりになりましたが、2005年に新人賞を受賞された、かがくいひろしさんはいかがですか?
贈呈式で作品を見たベテラン書店員さんに、「ぜひこの本を売りたい!」と言わせるような、人の心をわしづかみにする力を持った作家さんでした。個人的には、3作目の『ふしぎなでまえ』で、どんぶりの中で料理が出来上がるシーンなんか、「ほんとにすごい!」と思います。 すごい迫力とインパクトのある絵を描く方でしたね。
また、かがくいさんは販売的な人気もともなっていて、書店でも定位置のある方です。“ナンセンス絵本”とは違う、“ユーモア絵本”というジャンルを確立した作家さんのおひとりではないでしょうか。
——かがくいさんは、ほんとうに卓越した方でしたね。講談社絵本新人賞からこのような方が出られて、とても嬉しく思っています。
では、こういう絵の人がいいなあとか、こういう作品を求めるというのはありますか?
とても個人的な意見になりますが、人気が出る作品というのは、何か説得力がある、読んだ後にストンと腑に落ちる作品なのではと思います。自分が子育てをしているときに、何度も読んだ絵本というのもそういう作品が多かったと思います。
——具体的に、こんな作品というのはありますか?
『100万回生きたねこ』(講談社)や『わすれられないおくりもの』(評論社)なんかは、その筆頭にくるものですね。お話の骨格がきちんとしていて厚みがあるので、小学生になっても読める。読者層に広がりがあって、結果的にロングセラーになっていくということだと思います。
——そうですね。絵本は圧倒的にロングセラーの作品が多いですから、そこに食い込んでいく作品を作り出すことは、なかなか大変なことですね。
そうですね。でも、さきほどもお話したように、新人の作品だから手にとらないということはなくて、あくまで、読者は自分の感性で選んでいると思うので、そこに響く作品を作ってほしいと思います。
それに、最近は読者が絵本を買う買い方も変わってきていると思うんです。今はいろいろなサイトもあるし、絵本を様々に探せるツールもありますからね。
——最後に、新人賞を目指す方々にメッセージをお願いします。
未来の読者に向けて、今の時代ならではの、オリジナルでユニークな、ご自分の納得のいく作品を作っていってほしいと思います。そういう作品には必ず「この本を売りたい」と思わせる力があります。これからどんな作品が生まれてくるのか、楽しみにしています。
——販売的な立場から、書店の情報などを織り交ぜて率直に話してもらいました。参考になりましたでしょうか? 新たなる作品と出合えることを、楽しみにしています! みなさん、がんばってください。(Kan)
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