——かがくいくさんは、本当に人気がありますね。他に、おはなし会の現場では、どんな絵本が人気がありますか?
わかりやすくて、シンプルな絵本が人気があります。そして、読後感がいいものが求められます。
——例えば?
『おしり』(三浦太郎 作/講談社)は、年齢を問わず、どこで読んでも必ず笑いがおこる絵本です。「あひるさんの ふわふわ」「おしり」「ぶたさんの まあるい」「おしり」とあたりまえのことを表現して、くりかえしているだけなんだけど、子どもたちは、声をあげてケタケタ笑ってくれます。
『あしたうちにねこがくるの』(石津ちひろ 文、ささめやゆき 絵/講談社)も、とても人気があります。身近なテーマでありながら、夢があふれている絵本です。お話の流れが、思った通りに進んでいく楽しさと、いい意味で裏切られる楽しさとがあるんですね。でも、最後には、「ホッ」とする安心感もあります。文と絵のバランスが最高です。
——どちらの本も納得です。お話を聞いて、子どもたちがどの場面で笑うのか、なんとなく想像できます。どちらの本も絵本の技法でよくもちいられる「くりかえし」が使われているお話ですが、おはなし会には、やはりくりかえしの絵本が向いているのでしょうか。 ストーリー的にはどのような作品が好まれますか?
いいお話というのは、「行きて帰りし物語」とよく言われますが、読みきかせに向いているのもそういったお話だと思います。読み終わったあとに、ストンと落ちつくお話ですね。お話の結末が、すっきりしないと、消化不良に終わってしまいます。そして、入り口はせまくても、広がりがあるお話。小さい子でも楽しめるものでもいいですね。
——絵的にはどういう絵が好まれますか?
おはなし会では、絵の上手い下手というのはそれほど関係がないと思います。
ただ、アニメチックな絵はあまり好かれませんし、繊細な絵もおはなし会には向きません。お話と同様に、シンプルな色づかい、輪かくのはっきりしたもの、そして力強い絵が多いように思います。
『ショコラちゃんのおでかけドライブ』は、おはなし隊では、オリジナルの大型紙芝居で使用していますが、読みきかせにも向いています。「動物」「食べ物」「車(乗り物)」といった子どもが好きな3つのものの要素が入っていて、小さい子に向けられた作品だと思います。絵も、色づかいがすばらしく、子どもに伝わりやすいです。
——お話の長さはどうですか?
幼稚園、保育園では、3〜4分の本。小学校では、5〜6分ぐらいで読める本を大体選んでいます。テキスト量の多いものは、選ばれにくいです。ページでいうと、24ページくらいまでのもの(11場面)だと、読みきかせには、ぴったりです。
——そうなんですね。昨年も、編集部内の座談会で、出来上がった作品を読みきかせしてみるといいという話が出ましたが、やはり、作品が出来上がったら、一度声に出して読んでみるといいですね。
——では、最後に、新人賞を目指して作品作りをされている方に、一言お願いします。
おはなし隊では、小さい子でも楽しめる絵本を求めています。よけいなものをそぎ落として、シンプルであり、強く訴えかけるものを目指してほしいと思います。それは、より作るのがむずかしいと思いますけど、これができると読みきかせの頻度と広がりはぜんぜん違います。絵本新人賞の事務局にも、アート的な絵本だけでなくぜひ、子どもの目線に立ってお話を作ってほしいと思います。新たなる作品を楽しみにしています。
——ありがとうございました。“読みきかせ”という立場からお話を聞きましたが、私たちにとっても、とても参考になります。新人賞に応募される方も。ぜひ作品づくりに生かしてみてください。(ほろほろ鳥&Kan)
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