わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
高畠那生さんの場合・前編


『いぬの ムーバウ いいね いいね』
『いぬの ムーバウ いいね いいね』
高畠那生
1978年、岐阜県生まれ。東京造形大学絵画科卒業。第4回Pinpoint Picture Books Competition入選。『むかった さきは…』で、第25回講談社新人賞佳作受賞。(受賞作は、『いぬのムーバウ いいね いいね』と改題されて刊行。)主な作品に、『ぼく・わたし』『チーター大セール』(絵本館)、『おまかせツアー』(理論社)、『こんやもカーニバル』(斉藤洋・作/講談社)などがある。

高畠那生さん
——高畠さんは、2003年に第25回講談社新人賞で佳作を受賞されていますが、まず、もともと絵本作家になろうと思ったきっかけを教えていただけますか?

 美術大学に行っていたんですが、卒業するとだいたいの人が就職しますよね、三年生で内定もらってとか。で、気付いた時には完全に出遅れていたんです。というか、僕は就職が全然考えになかったみたいです。


——卒業して会社で働いてるイメージがなかった?

 うん……なかったです。でも、さてどうしようってなるじゃないですか。フリーでいくか、学校に残ってもうちょっと勉強しようかっていう、このふたつくらいしかないかなって思ってたんですけど。


——最初から絵を仕事にしようとは思ってました?

 それは当たり前だと思ってたんですね。まったく関係ないところに行くのはもったいないかなって。(アート作品としての)絵画は、向いていないと思っていたので、卒業してから2年くらい、イラストや絵本の勉強をしていました。それで先に世に出たのが絵本だったという感じですね。



——勉強したっていうのは、絵本塾のようなところに行っていたということですか?

 そうですね。いろんな編集者の方や、作家さんの話を聞いたり、時々絵を描いたり。荒井良二さんの講義で、条件を最初に決めて絵本をつくるという課題がありました。絵本を構成していく中で、まず描きたい絵を先にポンと決めて、それを縛りにしてつくっていったほうがある程度つくりやすいとわかったのもこの時ぐらいからですね。


——今の描き方にも生かされているんですね。ところで高畠さんにとって、2003年というのは意識的に動こうという年だったんですか? 新人賞入選も2003年ですし、ピンポイントギャラリーのコンペ(Pinpoint Picture Books Competition)入選も、絵本作家デビュー作の『ぼく・わたし』の刊行も2003年なので。

 いや、そんなことないですよ。その前の年にも新人賞応募して、1次で落ちてますから。

講談社フェーマススクールズ

——そうなんですか! 新人賞には、なぜ応募しようと思ったんですか?

 コンペがあるらしいってことだけは知ってたので、出してみようと。なにもしないよりは、なにかしらアクションおこしてみなきゃな、と思って応募したんです。それまで売り込みにも行ってないし、コンペにも出したことがなかったので、自分の作品が他人にどのように評価されるのかを知りたかったんです。でも新人賞応募1回目はすぐ返ってきました。やっぱり甘くないねって思いながらも、絵本の出来には満足していたので、なーんで返ってきたのかなー? おかしいなぁと思って(笑)。


——(笑)。

 そして、次の年、2003年ですよね。ある雑誌に、絵本コンペがありまして、審査員に長新太さんの名前があったんです。おぉこれはもしかしたら直接見てもらえるかもと思って応募しました。そのころ、アルバイトでブックフェアの手伝いをやってるときに、会場で絵本館の社長さんに会う機会がありました。今勉強してるんですって名刺を渡したら、その名刺に描いてあったダチョウのイラストを気に入ってくださって、じゃあちょっと見せにおいでよって。それで、日をあらためて、自分が描いてきた今までの作品のコピーを全部もって、はじめての売り込みにいったんです。そしたら、その応募して結果待ちの作品を、その場でウチから絵本で出版しようという話になりました。だから、理由を説明してコンペ応募作品を返してもらいましたが、絵本にするにはページが足りないので描き足して出来たのが『ぼく・わたし』。その『ぼく・わたし』を出版後、長新太さんが見てくれたのがわかったときはジーンとしましたね。



——ピンポイントのコンペは…

 ギャラリーに行ったら、こんなのあるからってコンペの応募用紙をくれて。だからけっこうその頃は、素人ながらもつぎつぎと作品をつくってましたね。

——その間にうちの新人賞もありましたしね。雑誌にしても、ピンポイントにしても講談社にしても、そういうのがあるところに出してみようという年だったんですかね。

 そうですね。勉強をして2年目でまだなんにもやってないじゃまずいでしょ。

——それで、新人賞の佳作に入って、出しましょうってことになりました。タイトルが変更になっていますが、内容もけっこう手は入ったんですか? 応募したときと比べて。

 たぶん半分くらい…

——そんなに?

 そんなに。1/3か半分くらい。

——それは高畠さんのほうから、出すんだったらこうしたいって?

 っていうわけではなくて、(選考会で)エンディングについて意見を言われたので、そこを克服していきましょうっていうことで。

——授賞式のときに、受賞者の方は選考委員の先生から意見を言われたり感想を言われたりってことがあると思うんですけど、高畠さんもなにか言われたりしました?

 その最後の、エンディングのところを言われたのと、あと、見開きのページがもうちょっとほしいっていうことは言われましたね。半分に割ってる展開が多いんで、そうじゃなくて、どんと大きく見せるところがもうちょっとあってもいいんじゃないかっていうことは言われましたね。

——じゃあけっこうかわってるんですね。選考委員の先生に言われたことは生きてますか?

 全部生きてるかどうかはわからないですけど、いちおう、ド素人のド新人でしたからね。とりあえず、言われたことは自分の中でもう一度考えて、トライしていったことを覚えています。

 (来月に続く。インタビュー場所:講談社 聞き手:ス)
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