わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
やぎたみこさんの場合・後編


『くうたん』
『くうたん』
やぎたみこ(八木民子)
兵庫県生まれ。武蔵野美術短期大学卒。イラストレーターのかたわら絵本を学び、2005年に第27回講談社絵本新人賞佳作を受賞する。「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけている。千葉県松戸市在住。

やぎたみこさん
——さっと読んですぐに、これは出版したいと思いました。不思議な生きもの、くうたんもかわいいし、こうたくん(人間の男の子)の家族のようすがとてもあたたかく描かれているのに感動したからです。
 ストーリーのほうは、その後相談して少し変えてもらいましたね。


 はい。最初は、家を出ていったくうたんが、また戻ってきて、こうたくんの家のペットになるという結末でした。


——そうでした。私としては、「くうたんがいったん出ていって、また帰ってくる」というのが、ちょっと必然性に欠けると思ったんです。

 それで、くうたんが家族を作って連れて帰ってくるという終わり方に変えました。


——編集の意見によってストーリーを変えることに抵抗はなかったですか?

 もっと変えなければいけないものかと思っていたので、そんなに抵抗はなかったです。むしろ、話がふくらんでいくようで、うれしく感じました。



——絵のほうも苦労されたと思います。あらためて下書きなどを見せていただくと、その苦労がよくわかりますね。

 私の場合、絵本に出てくるものを、まず実際に立体で作ってみるんです。それから、その立体物をそのままスケッチしたり、写真に撮ってトレースしたりして絵にしていきます。

下書きの写真

講談社フェーマススクールズ


——すごい、気の遠くなるような作業ですね……。

 実は、私はそこまで大変なこととは思っていないんです。娘にも「絵本描くのに、そんなことしなきゃならないの?」と言われるけど(笑)。
 まず、私は何も見ないで絵を描くのが苦手なんです。それに、絵本では、同じ物をいろいろな方向から何枚も描かなければならないので、この角度だとどうなるとか、頭で考えるとけっこう難しい。ああでもない、こうでもないと悩んで、ものすごく時間がかかってしまったりするので、結局私にとっては「実際に作ってみる」というのが一番の早道なんです。例えばこんなふうに……。


くうたんぬいぐるみ レゴの家写真入る


——わあ、くうたんのぬいぐるみ、かわいい! 絵本にもくうたんのぬいぐるみが出てきますが、実際に作っていたんですね。それから、絵本に出てくる家を、まずレゴで組み立てているというのもすごいです。
 そのような過程があって、とうとう本ができたときは……?


 立派になったなあと、やはり感激しました。


——思い返せば、落選してもあきらめずに、新人賞に応募したことが、デビューにつながったのでしょうか。

 私は最初から絵本を描きたかったわけではなくて、イラストレーターとして実用書で小さなカットを描く仕事をしたりしていました。あるとき、何だかわからないけどがんばってみようという気になって、一年間、応募できるコンクールには全部出してみることにしました。
 コンクールによっては、応募した作品が結局どうなったのかわからないようなものもあったのですが、講談社絵本新人賞は作品が講評つきで戻ってきた。だから、選外だったけど翌年も出してみる気になったんです。



——そうですか。今のところ、一次選考を通過した作品に対しては、短いコメントをつけてお返ししています。それが励みになっているとしたら、こちらもうれしいですね。

 これから応募する方も、いきなり賞をとるのは難しいかもしれないけど、少しずつステップアップしていくつもりでがんばってほしいです。1年に1回の新人賞なので、応募することを通して毎年成長していけたらいいですよね。私は新人賞をとったわけではないので、なんだかえらそうですけど(笑)。

 (講談社にて。聞き手:若)

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