わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
シゲタサヤカさんの場合・前編

第30回講談社絵本新人賞佳作受賞・シゲタサヤカさんの場合(前編)
シゲタサヤカ
1979年生まれ。短大卒業後、印刷会社での勤務を経て、「パレットクラブスクール」などで絵本制作を学ぶ。第28〜30回講談社絵本新人賞で、佳作を3年連続受賞する。第30回の佳作を受賞した本作が、初めての絵本作品である。

——まずは、シゲタさんが絵本を描こうと思うようになったきっかけからお聞きしたいと思います。どうして絵本作家を目指そうと思われたのですか?

もともと絵を描く事も、絵本を読む事も好きだったのですが、それを仕事にしたいと考えていたわけではないんです。美術学校みたいなところに通って勉強したことはないですし。短大では家政科に通っていて、食べ物の勉強をしていました。

——あ、そうなんですか! それって本当は食に関わる職業に就きたかったということですか?

いや、全然そういうわけではないんです……。ただ食べることが大好きだったので、何となく、という感じで。卒業してからはたまたま入った印刷会社で3年間働いていました。

——食べることが大好き……。それで、受賞作のようなレストランを舞台にしたコックさんのお話が生まれるわけですね! 印刷会社ではどのようなお仕事をなさっていたんですか?

DTP(コンピュータを使って行う版下作業)のオペレーターをしていました。でも、もちろん学校で専門的な勉強をしたわけではないので、会社に入ってから一から勉強しました。時間と余裕があれば、担当する印刷物の余ったスペースにイラストを描き込む、という仕事もしていました。もちろん、イラストを描き込むのがメインの会社ではなかったんですけど。

——でも、それが絵のお仕事を始めるきっかけというか、スタートですよね。どんなイラストを描かれていたんですか?

学校関連の印刷物を作る仕事をしていたので、卒業文集とか、PTA広報など……硬い内容のものが多かったんですけど、私のタッチはああいう感じなので(笑)。けっこう勝手に入れちゃったりしたんですが。


講談社フェーマススクールズ
イラスト1 イラスト2
シゲタさんが仕事で(勝手に)描いてしまった卒業文集のイラスト1。作文のタイトルは『キャンドルファイヤー』。とても楽しそうな、よく分からない生き物が印象的です。 卒業文集イラストその2。作文のタイトルは『ファーブルを読んで』。虫をこよなく愛する少年の姿が目に浮かぶようです。

——なるほど(笑)。で、その後印刷会社をお辞めになり、パレットクラブスクール(絵本塾)に通われるようになった?

そうなんです。ただ、絵本を描きたくて通い始めたというよりは、講師の先生方が子供の頃から大好きな絵本作家さんばかりだったので、1度お会いしてみたいな〜っていう感覚でした。でも、講師の方々のお話や、絵本を出したいと熱い情熱を持って頑張る周りの仲間たちの姿を見ていて、改めて絵本の世界って素敵だな、と思って。それから、本気で絵本作家を目指そうと強く思うようになりました。

——大体どれくらい通われたんですか?

週1回で、約1年間通っていました。
毎週の授業も、それから終わった後にみんなで飲みに行くのも、とにかく楽しくて充実した日々でした。その後も別のワークショップに通ったり、作家さんの絵本教室に通ったり。

その頃、インターネットで読めるBGMとナレーション付の“WEB絵本”というのも描いていました。
そこでお世話になったプロデューサーの方に「4コマ漫画を描く」というお話作りのトレーニング方法を教えていただいたんですが、構図とか、構成を考えるとても良い勉強になりました。これが何よりも今のお話作りに1番役立っています。

シゲタさんがおはなし作りの練習のために描いた4コママンガ。やっぱり食べちゃうんですね……。すでに『まないたにりょうりをあげないこと』の原型が見られます。

そんなこんなで、絵本の勉強をしながらアルバイトをしつつ、出版を目指してコンペに出しては落ち、出しては落ち・・・。
でも相変わらず楽しかったし、まわりに仲間もいたのであきらめようとは思わなかったです。

——その流れで絵本新人賞に応募された?

そうなんです。絵本を描きはじめて4年目だったと思います。その時(第28回)が初めての応募だったんですが、佳作をいただきました。それまで違うコンペではなかなか上手く行かなかったので、お電話いただいたときは「ええーっ!」とびっくりしてしまって。その時はただただ嬉しい気持ちでいっぱいでした。

——苦労が実った!ってかんじですよねえ。
それで、その次の年(第29回)も佳作を受賞されました。

もちろん嬉しかったんですが、大賞を獲りたい!と思って頑張って描いたので、ちょっとだけ残念でした。年々獲りたい気持ちは強くなっていったので、3回目(第30回)の時は、「ああ〜また佳作か」と正直がっかりした気持ちもありました。でも、出版に向けて進めましょう、とおっしゃっていただいて、ようやく先が見えてきたかな、と。

——ちなみに、審査員の先生方とお話して、印象に残った言葉はありますか?

色々教えていただいたんですが、私の作品は、主人公と他の登場人物が、みんな顔と髪型が同じで、顔色だけで見分けるようになっていたので、そこは「致命的」(笑)と……。やっぱり主人公は際立たせないと、とご指摘いただきました。それと、計3回の佳作受賞のたびに「何かが足りない」と言われました。その「何か」がわからなくて、けっこう悩んだりもしたんですが……。

——「何か」を見つけるのが一番大変ですよね……。

でも、出版に向けて色々手直していくうちにちょっとずつ分かってきた気がします。言葉で言うのは難しいですけど。担当してくださった(若)さんには、そういう意味で、本当に色々なことを教えていただきました。

— 3回の佳作受賞を経て、ついに絵本作家デビューを果たすことになるシゲタさん。8月に刊行された『まないたにりょうりをあげないこと』は、売れ行き堅調! 発売2ヶ月で重版がかかるほど好評ですが、出版が決まってから、刊行するまでどのような道のりをたどり、どんな苦労や楽しさがあったのか? 次号もお楽しみに!


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