わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
なかややすひこさんの場合・前編

なかややすひこさんの場合(前編)
『ミーちゃんですヨ!』
『ミーちゃんですヨ!』
なかややすひこ(中谷靖彦)
1968年、富山県に生まれる。大学卒業後、富山地方鉄道株式会社に入社。2年後に退社し、桑沢デザイン研究所に入学。1995年に卒業。オランダ・ユトレヒトなどで絵の勉強をし、帰国後フリーのイラストレーターとなる。『へんてこおさんぽ』で、第25回講談社絵本新人賞を満票で受賞。2004年に『ミーちゃんですヨ!』と改題して刊行される。その他の絵本作品に『カーネーションの絵本』(農文協)、紙芝居に『あまーいにおいのアメンボくん』(教育画劇)などがある。

なかややすひこさん
190cmを超える長身のなかやさん。担当の(若)と並ぶと身長差が歴然です
——なかやさんは、第25回(2003年)の絵本新人賞を受賞して、『ミーちゃんですヨ!』で絵本作家としてデビューされました。その後、ご活躍が続いていますね。

 ありがとうございます。『ミーちゃんですヨ!』の後も、いくつか他社から絵本や紙芝居を出させていただきました。他に、昨年は「こどもの本」という児童書の広報誌で1年間表紙のイラストを担当して、さらにその流れで、図書カードのポスターも描かせてもらえることになりました。今年は、ミュージカル「ピーター・パン」のポスターでもイラストを使ってもらうことになって、ぼくの絵を載せたラッピングバスがもうすぐ東京で走るそうです。楽しみですね。


——講談社フェーマススクールズでも、絵本コースの講師になる準備をされていると聞いていますよ。そんなふうにご活躍されるようになったのは、やはり新人賞を受賞したことが大きかったんでしょうか?

 それはもちろんそうです。仕事の依頼がたくさん来るようになって、講談社絵本新人賞は注目度が高い、いろんな人が見てくれているんだなあと実感しました。


——そうですか。受賞作の『ミーちゃんですヨ!』、応募したときのタイトルは『へんてこおさんぽ』でしたが、ズバリ受賞する自信はありましたか?

 そうですね。自信があったというか、「新人賞を獲るつもりで」描きました。その前の年に、『へんてこおるすばん』という作品で佳作をいただいて、すごくうれしかったんですけど、一方で、佳作で喜んでいてはダメだとも思ったんです。やはり、出版するためには新人賞を受賞することが原則ですから。
 だから、(若)くんから電話で「入賞しました」と言われたとき、うれしく思う反面、実はちょっと落ち込んだ。また佳作か、と思ったんです。でも話を聞いていて、「入賞」というのが「新人賞」という意味だとわかったとき、体の血が逆流するような感じになったのをよく覚えています。



——「新人賞を獲るつもりで」描いても、それを実現するのはなかなか難しいものだと思います。新人賞を獲るために、『へんてこおさんぽ』ではどんな点に力を注いだんでしょうか?

 うーん、特別何か新しい描き方をしたとか、そういうことはなかったですね。しいて言えば、「自分の原点で勝負する」のがいちばん強い、ということに気づいたからかもしれません。



講談社フェーマススクールズ
——なかやさんの「原点」というと、ふるさとの富山県黒部市のことでしょうか? 

 ええ、富山には好きなところも嫌いなところもありますけど、その風景とか空気のようなものは、いやおうなしに体にしみこんでいると思います。『ミーちゃんですヨ!』で言うと、1匹の猫が100匹になるというアイディアは、もともとは部屋の中で起こるできごとのつもりでした。でも、実際に描きはじめる前、ちょうど実家に帰って、田んぼや山々が広がる風景の中を散歩していたとき、ここでミーちゃんのお話が展開したら、開放感があるな、とふと思ったんです。何よりも、自分がいちばん気持ちよく描けると。


なかやさんは、富山テレビ放送のマスコットキャラクター「ビーちゃん」の絵本も手がけています。キャラクターグッズも発売される人気で、富山では「ビーちゃん」を知らない人はいない、らしい
(来月に続く。聞き手:若)

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