わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
たかしまなおこさんの場合・前編




たかしま なおこ
昭和39年生まれ。東京都在住。文化女子大学短期大学部生活造形学科卒業。ベビー用品メーカー、文具メーカー勤務の後、フリーのイラストレーターに。現在は小学生の造形指導、雑誌の挿絵等の分野でも活動中。

——まず、絵本新人賞に応募される方々には興味深い点だと思いますが、どのような経歴を経て、絵本を描くようになったのですか? まず、いちばん最近のお仕事について聞かせてください。

 スタンプメーカーに勤めて9年が経ったとき、あるカードのコンクールで入賞したのがきっかけで会社をやめました。32〜33歳のときです。でも、絵でやっていけるから、やめたんじゃないんですよ。やめるきっかけになっただけです。その後毎年、講談社絵本新人賞に応募するようになりました。


——すでにイラストのお仕事をされていたんですね。

 会社をやめてから、紹介してくださる方があったり、そのスタンプ会社からスタンプのデザインの依頼があったりして、少しずつですが仕事はありました。


——イラストレーターとして描き続けるより、絵本の世界を選んだのはなぜですか?

 イラストレーターとして、そっちの方面ではないな、と感じていたからでしょうね。要求はわかるし、いただいた仕事はひとつひとつ一生懸命やったけど、時代の空気感を出せない自分を感じてもいました。絵本はずっと好きだったので、依頼に合わせて描くというより、自分で主体的に描きたいテーマで描きたい、と。そのほうが、自分を出せると思ったんです。


——スタンプメーカー以前も、よくよく考えると絵本に縁の深い経歴ですね。

 大学は文化女子短大生活造形科です。卒業制作で絵本を作りました。さらに、高校でも授業で絵本を創っていたんです。カウントブックと言って、1から順に数字に絵柄をあてはめた絵本なんですが、今でも母校の教室にも見本として飾られています。
 あんまり意識してなかったけど、私ってずっと絵本が描きたかったんだな、と思いました、今(笑)。


——講談社絵本新人賞は1回目の応募からいきなり佳作でした。

 1回目、2回目、5回目で佳作をいただきました。はじめての贈呈式のとき、選考委員の先生方や、編集部のみなさんがとても温かかったので、「やられたー」って。これは来年も出さなきゃいけないって、思っちゃって(笑)。
講談社フェーマススクールズ


——次回作は毎回いつごろ構想を考えましたか?

 佳作をいただいたときでも「大賞じゃなかった、どこがいけなかったんだろう」と落ち込む期間が長かったですね。次のことを考えるのはだいたい年が明けてからです。今回の受賞作は4月なかばになっていました。毎回、「おはなしが、いまひとつ」と言われ続けてきたので、それはいつも頭にひっかかっていました。私は絵柄よりも、まずはおはなしをさきに考えます。


——主人公をおばあさんに決めたのもその頃?

 「おばあさん」というのは、イラストの仕事でたびたび描くことがあって、キャラとしてはなんか気になっていました。しかし、『もったいないばあさん』の存在も、もちろん知っていたし、「ばばばあちゃん」もいるし、おばあさんが主人公だとオリジナリティの点でだめかなーという心配はあった。でも7年もやってきて、自分の好きなことをやらなくてどうする! という気になっていたんですよね。


——それが強さになったかもしれないですね。
さて、その“苦手な”おはなしは、どんなふうに発想したんですか?


 ちょっと恥ずかしいんですけど、私がもし絵本を出せたら、の続きを考えていたんです。その絵本が有名人の目にとまって、テレビで紹介されちゃったりして、どこかのパーティーにおよばれしちゃったらどうしよう、そのときは何を着ていこうなんて、途方もない妄想を思い描いていたんですよ(笑)。だったら、その妄想そのもののおはなしにしちゃおうか、と。乱暴ですよねえ(笑)。


——受賞作は版画作品でした。技法はずっと変わっていませんか?

 1、2回目は黒の色鉛筆、3、4回目は色鉛筆、5回目から版画です。


——版画そのものについては、また次回詳しくうかがうことにして、自宅ではなく工房で作業するということが大きな力になったとか。

 そうなんです。カルチャースクールの版画教室なのですが、仲間がいる環境にとても助けられました。毎年応募していたので、みんな締め切りおぼえちゃったりして(笑)。なによりの励ましだった。


仲間のみなさんからの「講談社絵本新人賞記念賞」 ——仲間のみなさんは受賞を喜んでくれましたか?

 それはもう。「講談社絵本新人賞記念賞」っていう賞をもらったんですよ、賞状も手作りで! 「あなたのがんばる姿にみんな元気づけられた」って。
 作業中にインクが足りなくなって、先生が急いで買いに走ってくれた事もありました。
 そこの友人に、「担当の編集者に会った」と言ったときは、「よかったねー、よかったねー、『担当の編集者』なんて言葉を、あなたの口から聞けるなんて」と言って感激されました(笑)。


——受賞の連絡を差し上げたときは、おうちにいらっしゃいましたね。

 ずーっと応募してきていたから、この辺が最終選考だろうっていう勘がはたらくんです(笑)。去年の審査の日は、家で、ロンドンのロイヤルアルバートホールでの「プロムナードコンサート」のCDを聴いていたんです。以前実際に行ったことがある、思い出のライブでした。あー、電話がないなー、だめだったんだ、なんて感傷的な気分で。ところが最後の曲「God saves the Queen(ゴッド・セイブズ・ザ・クイーン)」の最後の音が終わった瞬間に、電話がかかってきたんです!

——はからずも、なんて劇的な演出効果!「大賞、ほんとですか? ほんとですか?」って叫んでました、たかしまさん。こんなに喜んでいただけて本当によかったと思ったのをおぼえています。受賞を最初に知らせたのは?

 最初に夫に電話しました。でも私ったら、「おばあさんがさ、おばあさんがさ」しか言えなかったんですよ。そうしたら夫が「おばあさんがどうした?」って(笑)。私の祖母の事だと勘違いして。実家と弟の家族、叔母(保育書、絵本の著述でご活躍の柴田愛子さん)に電話したら、みんな絶叫してくれました。

——今日はお誕生日だそうですね。改めておめでとうございます。

 ありがとうございます。昨日、誕生日のお祝いをしてもらって、明日こういうインタビューがあるのって言ったら、「次の構想は考えてるの? 考えていなくてもなにか言わなきゃだめよ(笑)」って母と叔母からせかされてきたんです。

——そうです、もうプロです。次のことも考えなくちゃ!


さあ、いよいよ出版に向けての、作業が始まります。以降は次号に。乞うご期待!

(来月に続く)

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