わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
かがくいひろしさんの場合・後編

『おもちのきもち』
『おもちのきもち』
——では、受賞作以前のことについてお伺いしていきます。創作活動のスタートは?

 大学では美術学科で、彫刻をやっていましたが、自分一人で作品を極めるというよりは、誰か相手に作って喜んでもらえるほうが性に合っているようで、教員になってから人形劇や、紙の造形をやっていました。ちりとりとかほうきとかホースとか、身の周りの物を使って動きのおもしろさを見せる人形ボードビルや、再生紙や段ボールで立体を作って何かに見立てるものなどです。


——造形とか演劇的なものですね。それがどう絵本につながって、応募に至ったのですか?

 絵本は自分の子供に読み聞かせをしていたときから、おもしろいものだと思っていたので、もともと興味はありました。それまでやっていた人形劇では、動きと音との兼ね合いが好きだったんです、オノマトペとか。子供も大好きでしょ。その動きと言葉を考えているうちに、自分のなかで音と絵がつながったのかな。絵を何枚もつらねて動きをみせていくと絵本になる……。それで、思いついた話をラフで描いてみたら、自分でも「これ、おもしろい!」と。そうなると、自分がおもしろいと思っている話を、ひとはどう思うのかな?っていうのが知りたくなって。そんなタイミングで、以前友人に聞いていた講談社絵本新人賞のことを思いだして、初めて原稿を描いたのが『はっきよい畑場所』。


——応募する際、なにか対策はとられましたか?

 描く前に、一応ハウツー本を見てみたんですが、ラフコンテって実は人形劇を考えるときにいつも描いていた。そのころからノートには絵コンテで場面などをメモしていたんで。これならできるなと思いました。あと、一応過去の受賞作は読みました。


——そしてその最初の応募作で、佳作を受賞されましたね。

『はっきよい畑場所』は音と動きを意識したもので、自分がおもしろいなと思ったもので佳作をいただけて自信になりました。ただ、裁ち切り線ぎりぎりまでしか絵を描いていなかったり、ネームを原稿に直接描いたりと、技術的なつたなさがありましたが(笑)。


——そして、翌年も佳作を受賞。

『梅じいのたんじょうび』では、審査員の先生に“梅”の特性をもっともっと生かして展開してもいいのにと言われたのが、目から鱗でした。展開していくということが少しわかった気がしました。そしてそのことが、『おもちのきもち』に反映したと思います。


——応募作品の候補がほかにもあったとか……。

『梅じいのたんじょうび』の応募のときに実はもう一つ描いてました。ただ、その当時出版された絵本に同じモチーフを使ったものがあったので、やめたんです。『おもちのきもち』の応募ときは、前年の夏頃すでに一つ作っていたのですが、あとから“おもち”の話を思いついて、こっちのほうが断然おもしろい!と思って、ボツにしました。


——つまり、出品していないものを合わせると、かなりの数を描いているんですね。

 描くのが楽しいので……。


——そんなかがくいさんが、ふだんから絵本を描くうえで、大事にしていることは?

 自分を見失わないようにしたいですね。私は、身体感覚とか、生理的なこと、例えば食べることとか、生きている人の誰にでも共通する感覚を大事にしていきたい。自分はそこがおもしろいと思っているところだから。そして、描いていて気づいたら笑ってるときはOKだな、と思っています。

講談社フェーマススクールズ

——これからの目標は?

“自由な線”がひけるようになりたいです。ノートにラフで描いているときによかったものが、本番の用紙に描こうとすると描けなかったりするんですよね。あの無意識の線がひけるといいなと。具体的な目標は、う〜ん、描きたいものがいっぱいあるので最低10冊は作りたい! それと、描くものをあまり限定せずに枠を広げておきたいですね。


——こういう質問は失礼かもしれませんが、好きな絵本作家は?

 10人くらいはすぐ挙がりますが……。長新太さんは、別格。この人の絵本を見て、描くのをやめようかと思ったくらい。初めに見たのは『おしゃべりなたまごやき』かな? あのマティスのような色づかい! 一時は長さんの絵本は見ないようにしていました。『なにをたべたかわかる?』『そよそよとかぜがふいている』『かさもっておむかえ』……みんな好きです。それから加古里子さん。子供のことをわかっているなぁと。どの本も、子供に“ものの真理”を伝えていてすごい。特に好きなのは『からすのパンやさん』とか『どうぐ』。それから木葉井悦子さん。『みずまき』で出会って、『ぼんさいじいさま』『やまのかぜ』……こんな絵本が描けるのかと。自分にないものがある作家には飛びついてしまいますね。


——では、かがくいさんの近況を。5月に2作めが出版される予定ですが、ひとこと。

 今になって、新人賞を受賞したときのスピーチで、荒井良二さんが「2作目が大事」とおっしゃっていたのを思い出しました(笑)。その2作目ですが、楽しい絵本になったと思います。こどもが窒息してしまうかもしれません!


——最後に、これから新人賞に応募しようとしている方々へのメッセージをお願いします。

 絵本はおもしろいです。そして、この賞は出版をめざす賞で、出版すれば読者からのリアクションがあります。自分を見失わないように、自分が描く必然性を忘れないように、自分が絵本を通してやりたいことや思いを大事に描いてください。結果は結果で、あとは描き続けたいかどうかだと思います。あきらめないで、やってみてください。


——今日はありがとうございました。
『もくもくやかん』
かがくいさんの新作『もくもくやかん』は5月中旬発売予定です。
今回もまたユニー クな登場人物(?)にご期待ください!

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かがくいひろし かがくいひろし(加岳井 広)
1955年、東京生まれ。’80年東京学芸大学教育学部美術学科卒業後、学校勤務のかたわら、人形劇の活動や紙を使った造形作品の制作、発表を行う。第13回紙わざ大賞展準大賞受賞。第26回講談社絵本新人賞佳作受賞、『おもちのきもち』で第27回講談社絵本新人賞を受賞し、50歳で絵本作家としてデビュー。現在、千葉県在住。

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