わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
たかしまなおこさんの場合・後編


『つぎはぎ おばあさん きょうも おおいそがし』
『つぎはぎ おばあさん きょうも おおいそがし』
たかしま なおこ
昭和39年生まれ。東京都在住。文化女子大学短期大学部生活造形学科卒業。ベビー用品メーカー、文具メーカー勤務の後、フリーのイラストレーターに。現在は小学生の造形指導、雑誌の挿絵等の分野でも活動中。

——受賞してからこの1年、出版のために「作品を少し直しましょう」ということになったわけですが、大変だったのはなんですか?

 もっと具体的に指示があると思った。この落としどころを考えてください、と言われたときには途方に暮れました。


——言ったかも(笑)。おはなしを一部直してもらったときがつらそうでしたね。

 でも、できあがってみたら、もうこれしかないって感じ(笑)、あつかましいんですけど。


——それなら、よかった(笑)。おはなしは、どのようなプロセスで考えるのですか?

 おはなしは、場面割りをしながら考えていきます。まず、最初と最後を決め、それからまんなか部分を決める、というやりかたをしています。私の場合、最初は絵を描かず、文だけを書いて場面に割っていきます。


——それに絵をつけていくわけですね。

 そうです。じっくり考えて書いた文のつもりでも、ラフが出来上がって、通して読むと、説明的になりすぎていたり、足りなかったり。絵がつくと、また変わりますね。


——身近な人に見てもらったりしましたか?

 夫には応募前日に見せていました。そして、毎回ぼろくそに言われて落ち込む、でも締め切りだから、そのまま出しちゃうんですけど(笑)。


——前回のインタビューで「おはなし(文)」は苦手」というお話がありました。

 (応募者は)みんな悩んでますか? 私だけじゃなく?
講談社フェーマススクールズ


——悩んでます。最終選考に残った方々に「おはなしの着地をもう少し工夫しましょう」とか、「もうひとひねり」とかは、よく書くコメントです。それだけ、おはなしの終わらせ方は、難しいんですね。

 友人などに話すと、「そんなに直すの? おはなしも変わっちゃうの?」って驚かれましたが、自分の中ではおはなしは変わっていないんですよ、もちろん。


——ディテールが変わった、というところでしょうか。ところで、これ以前の作品は、すべて熊ちゃんでしたね。

 熊のモチーフは大好きで、ずっと描いてきました。それと、人はちょっと敬遠していたこともあります。人間の生々しさを扱い兼ねる、というか。ところが、「dandan」で叔母(保育者で、育児書や絵本の著書もある柴田愛子さん)がはなしを書いて私が絵をつけたことがあり、このときの絵は子どもだったんです、人間の。描いてみたら、子どもはいいかなと。


——で、おばあさんもイケるかも、と?

 はい(笑)。実は、接客マニュアルのイラストの仕事で、おばさんを描いたことがありました。これが面白かった。クレームをいうおばさんとか、お客さんにおうへいな態度をとるおばさんの店員とか、キャラクターをどんどん書き分けることができたから。あー、私ってこういうの好きなんだ、と。


——つぎはぎおばあさんは、誰かに似ていたりするんでしょうか?

 大好きだった祖母が、おととし96歳で亡くなりました。結婚するまでいっしょに住んでいたので、とても悲しかった。家族は「おばあちゃんに似てるね」っていうんですよ。


——さて、この作品の技法「版画」について教えてください。

 はい。私のやっているのはリトグラフといいます。本来は石版画ですが、今はアルミの板に油性の描画材で絵を描いて、製版し、描いたところだけインクがのるような処理をします。多色刷りの場合は、色の数だけ版を作ることになり、それをピタリと合わせるのに神経を使います。描いたままに刷り上がるのが理想ですが、描画、製版、刷り、とすべてが完璧というわけにいかないので苦労してます。そのへんが、まだ思い通りにいっていない点かな?


——緻密な作業ですね。

 そうですね。


——版画は気になってましたか?

 いいなあと思った作品が、版画だったことがよくあったんですね。

——応募作は1、2回目は黒の色鉛筆、3回目、4回目は色鉛筆、5回目から版画ですね。

 20代でいちどトライして、仕事のために断念、その後、再挑戦しました。それが、鉛筆で応募していた時期だったので、だったらこれで出してみようかな、と。

——デビュー作は、おばあさんの家の壁紙が微妙な色で、印刷はいろいろ試してもらいました。

 印刷で出にくい色があるんですね。印刷所の方にはいろいろ工夫していただいたようです。原画と少し色が違うところは、お願いするとちゃんと直ってきて、そういったプロセスのひとつひとつも、いちいち嬉しかったです。少しずつ本に近づいているんだ、と感じられて。

——選考委員の黒井健さんからは、いろいろアドバイスをいただいたそうですね。

 はい。黒井先生からは、温かい励ましをいただきました。「(デビュー作は)心をこめて一生懸命つくりなさい」、「あなたの絵には清潔感がある。出そうと思って出せるものじゃないから大切にしなさい」と言ってくださって、ほんとうに心に残ることばでした。そのことばを糧に頑張れました。


——心がこもった絵本ができましたね。

 私の作品が本屋さんに並ぶなんて、今からドキドキしています。すごく嬉しいけど、すごく緊張もしています。みなさんのおかげで、ここまでこられました。ずっと応援してくれた家族、そして受賞を心から喜んでくれた版画の仲間たちにも、感謝の気持ちでいっぱいです。


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