わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
シゲタサヤカさんの場合・後編

第30回講談社絵本新人賞佳作受賞・シゲタサヤカさんの場合(後編)
シゲタサヤカ
1979年生まれ。短大卒業後、印刷会社での勤務を経て、「パレットクラブスクール」などで絵本制作を学ぶ。第28〜30回講談社絵本新人賞で、佳作を3年連続受賞する。第30回の佳作を受賞した本作が、初めての絵本作品である。

——さて、受賞作となった『まないたに りょうりを あげないこと』についてですが、この作品を描こうと思ったきっかけはなんですか?

特に深い理由はないのですが、コックさんが好きなのでレストランを舞台にしようと……。それから、おいしそうな料理もたくさん描きたかったんです。おいしい料理を食べたい私の願望が、出ちゃったのかもしれません(笑)。

——そういわれると、おいしそうに料理を食べる「まないた」がシゲタさんに見えてきます。
それまでにも2回佳作を受賞されていますが、本として刊行された作品はこれが初めてです。出版が決まった後、どのような苦労がありましたか?

一番大変だったのは、何回も作品のラフを書き直したことです。受賞作品を一度手元に戻していただいたんですが、「ストーリーの一部を直せば、もっと面白くなる」とアドバイスをいただき、大まかな全体の流れはそのままで、最初からまた細かいところを考え直してみたんです。

——そうだったんですか! そういえば、受賞された時に拝見した作品とは、ところどころで違いが見られます。

担当の(若)さんが、「このシーンとこのシーンはいりません」とズバッと言ってくださって(笑)。自分で応募した時は「これで完璧!」と思って描いていたので、ちょっと複雑でした。でも、そのあと家に持って帰ってじっくり考えてみると、「ああ、確かにこの流れでこのシーンは無駄かも!」と気付いて全く別のシーンに変えたり、修正したり。編集者の方とここまでじっくりやり取りしながら、1つの話を作っていくのは初めてだったので新鮮でした。

——その後も、やっぱり何度も直された?

直しては持って行き、直しては持って行き(笑)。大変でしたが、やりとりを重ねる度に内容が良くなっていくのが分かったので、楽しかったです。


講談社フェーマススクールズ

——直すのはちょっと……と思うことはなかったんですか?

パレットクラブスクール(絵本塾)に入りたてのときは、「この部分は変えた方がいい」と言われると、そのたびに「え〜、でも私はこっちの方が好きなのに」と思っていました。でも色々な人に作品を見てもらううちに、自分以外の人の意見を聞くことの大切さを実感できていたので、その分(若)さんとのやり取りは、けっこうすんなりと受け入れられました。

——絵本塾に通われていたことが、実際の本作りの過程でも役に立ったんですね。

アドバイスをいただいたおかげで、一人では思いつかないようなアイデアがたくさん生まれたと思います。アドバイスといっても(若)さんから具体的な指示をいただくのではなく、「ここはもっと違う表現でも良いと思います」など、あくまでも“考えるきっかけ”を作っていただく感じでした。そこから一緒に「だったら、こっちの方が面白そう!」というように楽しくアイデアを出していって。だから初期のものと読み比べてみると、やっぱり断然面白くなっています。

——応募時の作品と変わった場面で、もっとも印象的なところはどこですか?

この絵本の1番の見せどころになる、初めてまないたに料理をあげるシーンです。初期のものでは、肝心の“コックと、料理をたべるまないた”がものすごく小さくて、まないたが食べる料理のほうばかり目立ってしまっていて(笑)。何しろ「料理をたくさん描きたい」という思いの方が強くて……。結局料理の絵は全てカットして、コックとまないたを大きく描き直しました。そのかわり、そんなに料理を描きたいのなら……と、見返しにいっぱい描かせてもらいました。それと「この場面はいらない」と言われてカットしたシーンの代わりに、まないたがどんどん太っていくシーンを追加しました。

佳作受賞時の作品の一場面。まないたに料理をあげる主人公がポイントなのに、両端にちょこっといるだけ。たくさんの料理に目を奪われ、思わずどういうお話だったか忘れます。   修正された同じ場面。忙しく働くコックが臨場感たっぷりに描かれ、まないたに料理をあげる主人公の「こっそり」感を引き立てています。
佳作受賞時の作品の一場面。まないたが料理長に謝罪し、追い出さないで! とお願いする場面ですが、肝心の料理長が影も形も見えません。   修正された同じ場面。まないたと主人公、料理長の関係性がはっきりしてわかりやすくなりました。あまり反省をしていなさそうなまないたの表情が印象的です。

——このだんだん太っていく繰り返しのシーンはとても面白いですね!

ここの場面も、カットされたエピソードに代わる良いアイデアが打ち合わせの時にはすぐに思いつかなくて。持ち帰ってじっくり考えたときにひらめきました。直したラフを見せたときに(若)さんに「この流れはいいですね!」とおっしゃっていただいて、とても嬉しかったです。

——そうなると、原画も全部描き直されたんですか?

もちろん、全部描き直しました。削った描写や、追加した描写がたくさんありましたし、そもそも初期の作品では主人公と他の区別が全然ついていなかったので(笑)。全体的に、主人公がもう少し目立つように描き直しました。

——佳作の作品を本にしたというよりは、もう一度最初から作った、という感じですね。

はい! もちろん、良かれと思って描き直したところを「前のほうがよかった」と言われることもありましたけど……。完成してみて、つくづく(若)さんと二人三脚で作ったんだな〜と実感しました。感謝の気持ちでいっぱいです。

——何度もやりとりして生まれた作品ですが、読者に一番読んでほしいところはどこですか?

やっぱり、初期にはなかった描き直しの部分ですね。まないたがだんだん太っていくところをぜひ見ていただきたいです。この部分、もともとは文章だけで全部表現していたので、この場面を絵で表現できたのは、とても良かったなと思います。それと、登場人物の「白目」も見ていただきたいです。絵本を描き始めた頃から何度も黒目を入れなさいと言われていたんですが、自分ではどうしても白目のほうが表情をうまく表現できる気がして。(若)さんにも目について、アドバイスを色々いただいていたんですが、最終的には「このままでいきましょう」とおっしゃって下さいました。

——発売後すぐに重版が決まり、好評の『まないたに りょうりを あげないこと』ですが、今後どのような作品を作っていきたいですか? 

コックの絵本を10冊出したいです(笑)。あのレストランには、料理長以外の従業員が10人いるので、残りの9人であと9冊を……(笑)。「まないたにりょうりをあげないこと」のような、人を楽しますことができる笑える絵本を作っていきたいです。

——10冊……。一緒に頑張りましょう! では、最後に、受賞を目指す応募者の方々に一言メッセージをお願いします。

絵本を描く時は常に、読んでくれる人の事を意識して描いています。「自分も楽しめるけど、同時にちゃんと読者も楽しめる内容になっているか」に気を配って描くと、たちまちそれはステキな絵本になると思います。頑張ってください!

お忙しい中、本当にありがとうございました! ちなみに、シゲタさんは既に次回作の構想も着々と進んでいます。今後のご活躍にご期待ください! (聞き手/弓引き童子)


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