わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
にしもとやすこさんの場合・後編

にしもとやすこ
1978年兵庫県生まれ。「ニッサン童話と絵本のグランプリ」において、2005年、2006年と続けて佳作受賞。また、2007年に「第3回逗子児童文学賞手づくり絵本コンクール」で最優秀賞を受賞。カフェで絵本原画やイラストの展示を定期的に行っている。2007年、第29回講談社絵本新人賞を受賞。受賞作である本作が、絵本作家デビュー作となる。

——『たこやきかぞく』ができあがったとき、これまでに描いてきた作品と比べて今までの中で一番いいぞとか、そういう感覚はありました?

 前に描いてきた作品と比べると明るいというか、おもしろいコミカルな絵本になったので、自分ではすごく好きでしたね。自信とまではいえないですけど、これでダメでもいいやっていうくらいの満足感はありました。

——ご自身の満足いく作品ができあがって新人賞に応募して、選考を経ていよいよ受賞となったわけですけども、選ばれましたって連絡をもらったときはどう思いました?

 すごくうれしかったです。私、引越しをしたばっかりだったので、まず最初の連絡は 実家の母にいったんですね。そうしたら母からメールと着信があって、「新人賞に決まったって」って。びっくりしたんですけど、自分が直接聞いていないので、母の聞き間違いだったら困るしと思って意外に冷静でした。そのあと直接連絡いただいて、そのときはすごくうれしかったです。「本当ですか?」くらいしか言えなかったと思いますけど……。

——受賞されて、絵本作家としてのデビューが決まり、何か変わったことはありますか?

 世に出るということがかなり励みになって、これからがんばらないとなっていう意欲がわきましたね。

——次回作がどんどんうかんできたり?

 最近すごく、うかんできました(笑)。マイペースなので、間があいてたんですけど、やっと落ち着いて、『たこやきかぞく』ももうひと段落しようとしているし、またすごく絵本を描くのが楽しくなってきてる。まだアイディアだけの状態のものですが、いっぱいあります。


講談社フェーマススクールズ

——話を考えるときに、気をつけている、もしくは、自分で意識的にやっていることはありますか?

 絵本って読み手によっていいとか悪いとかの受け取り方も違うと思うので、その、いいか悪いかは、最後は自分の感覚を信じるのが大事だと思ってるんです。だから、あんまり読み手の人にこう感じてほしいって狙いすぎたりしないように、わりと直感とか感覚とかを意識して信じるようにしてますね。感じてほしいがためにちょっと狙いすぎたりしないように、もう素直に描くっていう。(狙いすぎたものは)読んでみて、なんかちょっといやだなと思うので。もう、「素直な心で」!!(笑)

——(笑)。もともと絵本が好きだったとおっしゃってましたが、どんな作家さんや作品がお好きなんでしょう。

 ジョン・バーニンガムの『おじいちゃん』とか、トミー・ウンゲラーの『ぼうし』、 あとアーノルド・ローベルのシリーズは全部好きです。あと日本では「だるまちゃん」シリーズははずせないですかね。あれは小さいときからなじみがあるので、そのときの感覚のまま。

——ロングセラーになると、自分が小さい頃に読んでいたものがまだ残ってたりして、それもまた絵本っていいなと思う要因のひとつですよね。

 そうですね。自分の絵本も、後世にまでとか、大それたことは言わないですけど、やっぱりいろんな人に長く読んでもらえたらなぁと思います。

——広く受け入れられるように狙うわけではないけど、結果的にそうなるといいなぁっていうのはありますよね。話はかわりますが、授賞式のときに、選考委員の先生方や書店さんや過去の受賞者の方たちとお話しして印象に残っていることはありますか?

 具体的なことでいうと、高畠先生から、物の本質を見て描いたほうがいい、例えば猫のかたちでも本物を見てから描いたほうがいいとアドバイスいただいたのが印象に残っています。たしかに、自分の持ってるイメージのまま描いてたなって。(美術系大学出身者に比べて)デッサンをやってないからだめなんだというふうには思わないんですけど、正しい形で自分のイメージを絵にすることが大事なんだなと思いました。資料を見るとか。猫の資料なんて、普段いっぱい実物見てるしわざわざ確かめなくても大丈夫って思うんですけど、それもやっぱりちゃんと調べたり。

——普段見てるものって意外に調べたりしないですもんね。描けそうな気がしちゃうというか。

 調べたそのままをリアルに描くわけじゃないんですけど、やっぱり一度調べるっていうのは大事なんだなって思いました。それを自分はどう描くかっていうのはあると思いますけど。あとはやっぱりこの、『たこやきかぞく』を、デビュー作だから悔いのないように仕上げてねって言われました。

——今、どうですか? できあがらんとしていますけど(笑)。(※インタビュー時は刊行前でした。)

 あ、はい、悔いはないです(笑)。ないです、全然。けっこうゆっくり、ゆっくりというかひとつずつ(選考委員の先生方から)アドバイスもらったことも掘り下げてクリアにしていったし。

——実際に本を作る段階に入ったところで、1冊本を作るってこういうことかって思ったことは何かあります?

 こんなにひとつずつ工程を踏んで、いろいろやることがあるんだって思いました。もう賞をいただいているからといってそのまま出版するのではなくて、文章と絵のバランスを話し合ったり、ひとつずつやるんだなって。これまではひとりでやっていたところに、いろんな人の力が加わる、たとえばデザイナーさんとか印刷所の方とか、ひとつの工程にいろんな方が関わってくれていて、それはすごく新鮮で、みんなの力なんだなと思いました。

——やっぱり一度人の手を通すと、新鮮ですか?

 自分でやってたら、たぶんこの帯とかできなかったと思うので、人の手に渡ると、やっぱり新鮮ですね。帯はやっぱり、衝撃でした(笑)。他の人が自分の作品に手を加えてくれるっていうことが、自分ひとりじゃできないことなので、うれしいですよね。

にしもとさんも衝撃を受けた帯を巻いて、『たこやきかぞく』堂々完成!
にしもとさんも衝撃を受けた帯を巻いて、『たこやきかぞく』堂々完成!

——もうじき本ができますが、今のお気持ちは。(※5月28日に無事刊行されました。)

 すごいわくわくしてます。やっぱり自分だけの力じゃなくて、周りの応援してくれた人たちのおかげでその日を迎えられると思うので。

——どんな本になってほしいですか?

 主人公はたこやきですけどテーマは家族なので、いろんな人に読んでほしいし、読んだあとで、みんなでたこやきを焼いてほしいですね。

——これから、どんな作品を作っていきたいですか?

 いろーんな作品を作っていきたいです。特に、読んだあとにあったかい気持ちになれるような絵本。自分がやっぱりそういうのが好きなんですね。作ったものを人に読んでもらいたいからがんばって描けるっていう面もありますし、これからは、まだ会ったことのない人が、本屋さんで見たりして自分の絵本を読んでくれることもあり得るわけだし、それはすごくうれしいことだなと思います。

——本当に、思えばすごいことですよね。では最後に、新人賞に応募しようと思っている方たちにアドバイスをいただけますか。

 やりかた、描き方はそれぞれだと思うので本当にえらそうなことはいえないんですけど、あきらめずに努力していれば、私のようにチャンスはまわってくると思うんです。もしだめでも、仕上げることで上達すると思うし、また次の年、ってあきらめずに描き続けることが大事なんじゃないかなって、自分もまだ現在進行形でそう思ってます。新人賞はいただいたけれども、これから次があるかどうかは自分次第だと思いますし。2作目が難しいってよく言いますよね。ああ〜どうしよう……。めげずに……だめならだめでというと言い方は悪いですけど、自分にとっていい作品を作ることを目標にがんばってください。

——今日は、ありがとうございました。2作目、楽しみにしています。


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