——話を考えるときに、気をつけている、もしくは、自分で意識的にやっていることはありますか?
絵本って読み手によっていいとか悪いとかの受け取り方も違うと思うので、その、いいか悪いかは、最後は自分の感覚を信じるのが大事だと思ってるんです。だから、あんまり読み手の人にこう感じてほしいって狙いすぎたりしないように、わりと直感とか感覚とかを意識して信じるようにしてますね。感じてほしいがためにちょっと狙いすぎたりしないように、もう素直に描くっていう。(狙いすぎたものは)読んでみて、なんかちょっといやだなと思うので。もう、「素直な心で」!!(笑)
——(笑)。もともと絵本が好きだったとおっしゃってましたが、どんな作家さんや作品がお好きなんでしょう。
ジョン・バーニンガムの『おじいちゃん』とか、トミー・ウンゲラーの『ぼうし』、 あとアーノルド・ローベルのシリーズは全部好きです。あと日本では「だるまちゃん」シリーズははずせないですかね。あれは小さいときからなじみがあるので、そのときの感覚のまま。
——ロングセラーになると、自分が小さい頃に読んでいたものがまだ残ってたりして、それもまた絵本っていいなと思う要因のひとつですよね。
そうですね。自分の絵本も、後世にまでとか、大それたことは言わないですけど、やっぱりいろんな人に長く読んでもらえたらなぁと思います。
——広く受け入れられるように狙うわけではないけど、結果的にそうなるといいなぁっていうのはありますよね。話はかわりますが、授賞式のときに、選考委員の先生方や書店さんや過去の受賞者の方たちとお話しして印象に残っていることはありますか?
具体的なことでいうと、高畠先生から、物の本質を見て描いたほうがいい、例えば猫のかたちでも本物を見てから描いたほうがいいとアドバイスいただいたのが印象に残っています。たしかに、自分の持ってるイメージのまま描いてたなって。(美術系大学出身者に比べて)デッサンをやってないからだめなんだというふうには思わないんですけど、正しい形で自分のイメージを絵にすることが大事なんだなと思いました。資料を見るとか。猫の資料なんて、普段いっぱい実物見てるしわざわざ確かめなくても大丈夫って思うんですけど、それもやっぱりちゃんと調べたり。
——普段見てるものって意外に調べたりしないですもんね。描けそうな気がしちゃうというか。
調べたそのままをリアルに描くわけじゃないんですけど、やっぱり一度調べるっていうのは大事なんだなって思いました。それを自分はどう描くかっていうのはあると思いますけど。あとはやっぱりこの、『たこやきかぞく』を、デビュー作だから悔いのないように仕上げてねって言われました。
——今、どうですか? できあがらんとしていますけど(笑)。(※インタビュー時は刊行前でした。)
あ、はい、悔いはないです(笑)。ないです、全然。けっこうゆっくり、ゆっくりというかひとつずつ(選考委員の先生方から)アドバイスもらったことも掘り下げてクリアにしていったし。
——実際に本を作る段階に入ったところで、1冊本を作るってこういうことかって思ったことは何かあります?
こんなにひとつずつ工程を踏んで、いろいろやることがあるんだって思いました。もう賞をいただいているからといってそのまま出版するのではなくて、文章と絵のバランスを話し合ったり、ひとつずつやるんだなって。これまではひとりでやっていたところに、いろんな人の力が加わる、たとえばデザイナーさんとか印刷所の方とか、ひとつの工程にいろんな方が関わってくれていて、それはすごく新鮮で、みんなの力なんだなと思いました。
——やっぱり一度人の手を通すと、新鮮ですか?
自分でやってたら、たぶんこの帯とかできなかったと思うので、人の手に渡ると、やっぱり新鮮ですね。帯はやっぱり、衝撃でした(笑)。他の人が自分の作品に手を加えてくれるっていうことが、自分ひとりじゃできないことなので、うれしいですよね。
にしもとさんも衝撃を受けた帯を巻いて、『たこやきかぞく』堂々完成!
——もうじき本ができますが、今のお気持ちは。(※5月28日に無事刊行されました。)
すごいわくわくしてます。やっぱり自分だけの力じゃなくて、周りの応援してくれた人たちのおかげでその日を迎えられると思うので。
——どんな本になってほしいですか?
主人公はたこやきですけどテーマは家族なので、いろんな人に読んでほしいし、読んだあとで、みんなでたこやきを焼いてほしいですね。
——これから、どんな作品を作っていきたいですか?
いろーんな作品を作っていきたいです。特に、読んだあとにあったかい気持ちになれるような絵本。自分がやっぱりそういうのが好きなんですね。作ったものを人に読んでもらいたいからがんばって描けるっていう面もありますし、これからは、まだ会ったことのない人が、本屋さんで見たりして自分の絵本を読んでくれることもあり得るわけだし、それはすごくうれしいことだなと思います。
——本当に、思えばすごいことですよね。では最後に、新人賞に応募しようと思っている方たちにアドバイスをいただけますか。
やりかた、描き方はそれぞれだと思うので本当にえらそうなことはいえないんですけど、あきらめずに努力していれば、私のようにチャンスはまわってくると思うんです。もしだめでも、仕上げることで上達すると思うし、また次の年、ってあきらめずに描き続けることが大事なんじゃないかなって、自分もまだ現在進行形でそう思ってます。新人賞はいただいたけれども、これから次があるかどうかは自分次第だと思いますし。2作目が難しいってよく言いますよね。ああ〜どうしよう……。めげずに……だめならだめでというと言い方は悪いですけど、自分にとっていい作品を作ることを目標にがんばってください。
——今日は、ありがとうございました。2作目、楽しみにしています。
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