——あと、台風の造形にも苦心したとおっしゃっていましたね。
そうですね。でも実のところ台風って、ふつうは見えないないものじゃないですか。もちろん人工衛星からの写真はありますけど、通常は、形としてとらえることのできないものを描くわけですよね。それが、なんとか自分でなっとくできる形にできたときには、この作品で行こうと思いました。
——文では、どんな工夫をされましたか?
娘たちや妻に読み聞かせをして意見をきいてましたね。
いや、けっこう編集者の人より、厳しい意見をいうんです。それから自分で、声に出して何度も読みました。絵本の文は、リズムが大事ですよね。繰り返し読んでいると、まわりくどい表現や無駄なことばに気づくので、どんどん、いらないところを切りました。
——それでも、本にするときには、文をかなり削りましたよね。
はい、それから文字の入るスペースも自分では、ずいぶん余裕をとったつもりだったんですけど。ぜんぜん足りなかったので、これは相当気をつけないといかんなあと。
——実際に刊行するときは、漢字をひらがなに変えたり、わかち書きにしたりしますので、余裕をみておくのにこしたことはないですね。さて、技術的なことをお聞きしましたが、心構えというか精神的なことではどうでしょう。
物語を作っていたり、ラフを描いているときなど、行き詰まることは、必ずあるんですよ。そういうときは、いったん寝かしておくとようにして、別の作品にとりかかります。いったん、離れてしまうと、見方が変わるんです。いつもいくつかアイデアを温めておくようにしているのが大事ですね。
——なるほど。すごく実践的ですね。ところで「てるてる王子」は、今後どうなるんでしょうか?
「てるてる王子」が、みなさんに気に入ってもらえたのなら、続編を書きたいですね。
季節を変えて、オチはまったく別の形にして。もう腹案はあるんですよ。
それから、まったく別のタイプの作品で、女の子が手にとっていじらしいと思ってもらえるようなものも作りたいですね。自分の娘に楽しんでもらいたい気持ちも強いんです。レトロSFみたいなのもいいなあ。お父さんが大声出して、読めるようなのです。
——そのアイデアを見せて頂くのが楽しみです。さて、最後にこれから講談社絵本新人賞に応募される方へメッセージをお願いいたします。
講談社絵本新人賞について言うと、私の作品のような荒唐無稽なものでも賞をいただけたということでもわかるように、寛大というか、間口が広い。きちんと審査してくれます。
こういうテーマの方がよいとか、画風がどうとかなんてことにとらわれずに、自分の描きたいものを、好きなように描かれたらいいと思いますよ。絵本塾に通っている時、ぼく自身が言われたことですけど、心に残っている言葉があります。それは、「絵本作家になると決めたときから、あなたは絵本作家です。」ということ。だから、あなたも自信とプライドをもって描いていってください。
——どうもありがとうございました。(聞き手/ほろほろ鳥)
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