わたしはこうして獲りました!
絵本新人賞インタビュー
藤本ともひこさんの場合・後編

第13回講談社絵本新人賞受賞者 藤本ともひこさんの場合(後編)
こうへいみませんでしたか藤本ともひこ
1961年東京中野生まれ。1991年講談社絵本新人賞受賞を経て絵本作家デビュー。2000年から保育園に保育あそびの講師として出向くようになり、絵本制作の傍ら、保育遊びの講演などを行っている。

——29歳で本格的に絵本作家をめざし、1991年にデ ビューをした藤本さんの次の転機は、2000年に訪れます。

39歳のときに、今度は40代を考えまして……。いつも9のつく歳になると自分の将来を考えちゃうんです(笑)。そのとき、知り合いの保育園の関係者に、保育園で遊びや造形製作を教えるアドバイザーとして臨時講師で来ないか、と声をかけてもらって、勤めをやめたんです。

——保育園に通うようになって、どうでしたか?

自分の子どもはいたんですが、初めて「子ども」に出会った! という感じでした。保育園に行く日は、朝からフルタイム。午前中子どもたちと造形をして、お昼寝中は先生たちとお話しし、午後はまたこどもたちと遊ぶ。という感じです。たぬきのおじさんタイムというのがあって、歌を歌ったり、手遊びをしたり、絵本のよみきかせをしたり……。そこで、よみきかせをして、子どもの喜ぶ絵本というのがわかってきました。逆に子どもと距離がある絵本というのも……。

藤本さん画像

——子どもとますます近くなって、絵本作りも変わっていった……?

『ばけばけ はっぱ』子どもが、きゃはきゃは言って喜ぶ絵本が作りたいなあと思うようになりました。たとえば、この『ばけばけ はっぱ』。(葉っぱで隠れた動物がページをめくると全身で登場する、くりかえしが楽しい写真絵本。チャイルド本社月刊絵本)これ、本文の「ふーって はっぱを ふいてみて」っていう文章、最初はなかったんです。でも、子どもたちや大人たちによみきかせしていて、「なんか足りないなあ」って。それで、これを入れたんです。

——これ、すごく楽しいですね。どこの国の子でも、ぜったい本に向かって「ふーっ」ってやりますね。

ユニバーサルデザイン!(笑)『いただきバス』(すずき出版)なんかも遊びながら読むと、とっても喜ぶ。こちょこちょするシーンは、みんないっしょにこちょこちょ遊びをしたり。それで、子どもが喜べば、お父さんもお母さんも、保育者も皆うれしいんですよ。絵本の楽しみって、いろいろあるでしょ? 色が楽しい、文章が楽しい、遊んでおもしろい……。


講談社フェーマススクールズ

——たとえば新人賞をめざす方の中には、子どもの喜ぶ絵本を作りたい、でも子どもと接点がない、子どもの喜ぶものがわからない、と悩んでいる人もいるかもしれません。そんな方にアドバイスはありますか?

う〜ん、もがくことしかないですね、その人なりに。自分でもがいて、先人たちの絵本をふまえたうえで、これからの絵本ってどういうものなんだろうと考える。そのために自分が出来ることは何かを見つけるには、もがくしかない。新人賞をめざす人は、あんまり「子どもにうける本はなにか?」とか、リサーチしなくていいんじゃないですか? リサーチして、そつのない及第点の絵本を作るより、「え? なに、これ?」って思うような、その人しか持っていないものを出してほしいです。挑戦する絵本、ごつごつした絵本の方がおもしろいし、そういうものの中にキラリと光る原石がきっとある。リサーチして絵本を作ることや技術的なことは、デビューしてからも編集の人たちといくらでも磨くチャンスはあります。とことん自分との勝負だと思います。

——なるほど。ほかに新人賞をめざす方にアドバイスはありますか?

『いもほりバス』プロの方皆さんやっていらっしゃると思いますが、アイディアノートは作るといいですよ。ぼくも、大学時代からずっと作っていて、いま30冊を越えました。これが、『いもほりバス』(すずき出版)の絵コンテ。こんな風にアイディアだけでなく、絵コンテも描いていきます。ネタ帳ですね。(と、実際のアイディアブックを見せてくださる)

見開き見開き

——これがあったからこそ、賞に応募するぞって決意して、すぐ送れたわけですね。
今日は、楽しいお話や実践的なアドバイスなど、いろいろお話しいただき、ありがとうございました。藤本ともひこさんについて、もっと知りたい方は下記HPまでどうぞ。
http://web.me.com/tanukiss/tanukiss/Welcome.html


番外編・こんな絵本が読みたい! 編集部座談会(前編)
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