——29歳で本格的に絵本作家をめざし、1991年にデ ビューをした藤本さんの次の転機は、2000年に訪れます。
39歳のときに、今度は40代を考えまして……。いつも9のつく歳になると自分の将来を考えちゃうんです(笑)。そのとき、知り合いの保育園の関係者に、保育園で遊びや造形製作を教えるアドバイザーとして臨時講師で来ないか、と声をかけてもらって、勤めをやめたんです。
——保育園に通うようになって、どうでしたか?
自分の子どもはいたんですが、初めて「子ども」に出会った! という感じでした。保育園に行く日は、朝からフルタイム。午前中子どもたちと造形をして、お昼寝中は先生たちとお話しし、午後はまたこどもたちと遊ぶ。という感じです。たぬきのおじさんタイムというのがあって、歌を歌ったり、手遊びをしたり、絵本のよみきかせをしたり……。そこで、よみきかせをして、子どもの喜ぶ絵本というのがわかってきました。逆に子どもと距離がある絵本というのも……。
——子どもとますます近くなって、絵本作りも変わっていった……?
子どもが、きゃはきゃは言って喜ぶ絵本が作りたいなあと思うようになりました。たとえば、この『ばけばけ はっぱ』。(葉っぱで隠れた動物がページをめくると全身で登場する、くりかえしが楽しい写真絵本。チャイルド本社月刊絵本)これ、本文の「ふーって はっぱを ふいてみて」っていう文章、最初はなかったんです。でも、子どもたちや大人たちによみきかせしていて、「なんか足りないなあ」って。それで、これを入れたんです。
——これ、すごく楽しいですね。どこの国の子でも、ぜったい本に向かって「ふーっ」ってやりますね。
ユニバーサルデザイン!(笑)『いただきバス』(すずき出版)なんかも遊びながら読むと、とっても喜ぶ。こちょこちょするシーンは、みんないっしょにこちょこちょ遊びをしたり。それで、子どもが喜べば、お父さんもお母さんも、保育者も皆うれしいんですよ。絵本の楽しみって、いろいろあるでしょ? 色が楽しい、文章が楽しい、遊んでおもしろい……。
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